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平凡な主人公が異世界で転生してチート勇者な人生を送るかと思ったら  作者: けろよん
新生編

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11/27

懐かしい時間

 公太郎は夢を見ていた。

 その光景はまだ彼が現実世界に住んでいた頃のこと。

 何の面白味もない町、面白味のない生活、面白味のない自分の姿が見える。

 ただ流されていくだけだった平凡な日常。

 そんな灰色の景色でしかなかったはずのことが、なぜか今では妙に懐かしく暖かく感じてしまう。

 そんな景色を自分は破壊した。ただ感情のおもむくままに。つまらない玩具をただ壊すだけの勢いで。

 そして、その世界は妖精に吸収されて、自分は幸せな眠りについたはずだった。

「なんでだろうな・・・・・・」

 公太郎は自分でも知らないうちに呟いていた。

「なんで今更あんなことを懐かしいなんて思っちまうんだ・・・・・・」

 公太郎の瞳から一筋の涙がこぼれた。その涙をそっと拭ってくれた優しい手があった。公太郎は目を開く。

「おはよう、公太郎ちゃん」

 公太郎はしばらくの間、自分を優しく見つめている少女が何者なのか分からなかった。赤いランプの光に照らされた薄暗い静かな部屋で、その少女は再び声を掛けてくる。

「もう少しゆっくり寝ててもよかったのに。まだ夜よ」

 微笑んで見下ろしてくるその顔と声を思い出して、公太郎はすぐに跳び起きた。

「フィ、フィオレ! いや、姫様か!? いったいここで何してやがる!」

「フィオレでいいわよ。ここはこの村の宿屋よ。村長さんの好意でただで泊めてくれたの。わたしは公太郎ちゃんを介抱してたのよ。わたしが痛めつけたそのお詫びにね」

「お、お詫びって。だ、だからって膝枕なんて」

 公太郎はすぐに状況を理解していた。フィオレは座ったままの体勢で微笑んで見上げてきた。

「したくなったのよ。公太郎ちゃんの寝顔があまりにも可愛かったからね」

「うっせえ! 女に可愛いと言われたってこれっぽっちも嬉しくねえんだよ!」

「そうね。女の子としてはやっぱり男の子に言って欲しいわよね」

「男にだって言われたくねえよ!」

「フフフ」

 フィオレはゆっくり立ち上がる。その怪しい笑みに公太郎は慌てて壁際まで後退した。何をされるのかと警戒したが、フィオレは真顔に戻って話題を変えただけだった。

「明日の朝の話なんだけど」

「明日の朝の話?」

「うん、今日はもう遅いからここに泊まって、明日の朝にフリーザーを倒しに行こうと思うんだけど、その討伐にあなたに付いてきて欲しいのよ」

「なんで俺に? あの二人に付いてきてもらえばいいだろ?」

 公太郎は彼女が連れていたファイタンとマホルスの姿を思い浮かべた。彼らはここにはいないようだ。その事情をフィオレはすぐに説明した。

「彼らはあなたに痛めつけられてしばらく動けない体になってしまいました」

「あの程度でか? 軟弱な奴らだな」

 公太郎としては軽く小突いただけのつもりだった。だが、思いのほかダメージが行ってしまっていたようだ。フィオレは仲間がやられたことをあまり気にしてはいないようだった。

「ええ、彼らでは元々この戦いは無理だったのよ。わたしも置いていこうか迷っていたんだけど、彼らのひたむきに頑張っている姿を見たらどうしても言い出せなくてね。あなたに痛めつけられたのはわたし達にとっては却って良い機会だったわ。そこであなたに」

「断る! なんで俺がお前なんかに付き合わなきゃいけねえんだよ!」

「膝枕してあげたのに」

「うっせえ! お前が勝手にしたんだろうが! 俺の知ったことか!」

 公太郎の剣幕にフィオレはしょんぼりとした態度を見せた。

「仕方ない。分かったわ。明日の朝にあなたが寝ている間に言っていたことやあったことをみんなに話して、わたしは一人でフリーザーを倒しに行くわ」

「ちょっと待て! 俺が寝ている間にいったい何があった!?」

 公太郎が身を乗り出したのを見て、フィオレは元の態度を取り戻して微笑んだ。

「それはまあいろいろと。みんなに話したくなるぐらいのことはいろいろとね」

「・・・・・・分かったよ。一緒に行けばいいんだろ!」

「ありがとう、公太郎ちゃん。じゃあ、明日の朝ね。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

 笑顔で手を振って部屋を出ていくフィオレを見送って、公太郎はすぐにふてくされてベッドに飛び込んだ。

「ちっくしょう! 何がおやすみだ、ふざけやがって!」

 そこにちっこい少女の姿をした神様が現れた。

「なんだかデートの約束みたいでしたね。これはチャンスです。頑張るのですよ、公太郎」

「うっせえ! デートやピクニックなんざ興味はねえんだ! 俺はあいつの言うことを聞くためにここへ来たわけじゃねえんだよ!」

 公太郎は枕を抱き寄せて考えていた。なんとかフィオレを出し抜く方法はないかと。そして、思いついた。

「そうだ。この手で行こう」

 公太郎はにんまりと微笑み、すぐに旅の支度を整えた。

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