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戦火を追って

マルティン=ニーメラーとエドワード=エドワーズはロンドンのパブで一杯やっていた。

人を待っているのだ。

待たれ人はイギリスの戦場カメラマン、フレデリック=ジョン=ウォーカー。

今回はこのメンバーでアフリカへ向かう。

すでに機材は用意した。

まずはモロッコまで飛び、そこから最前線にほど近い南スーダン、ジュバへ向かう。

そこでイギリス陸軍と行動を共にする予定だ。

「おお、久しぶり」

「ああ」

フレデリックは待ち合わせ時刻からきっかり五分遅れて現れた。

「いい加減五分後集合の癖を直せ」

「ああ」

レイバンのブリッジをくいっと人差し指で持ち上げながら、ぶっきらぼうにフレデリックは答える。

「よろしくフレデリック。僕はマルティン=ニーメラー。好きに呼んでくれ」

「フレデリック=ジョン=ウォーカーだ。フレディでいい、マーク」

硬く握手をかわした後、三人は空港へと向かった。


〈旗艦いせ、比叡上級一佐より第二機動護衛艦隊各艦へ。本艦隊はこれよりパラオへ移動し南下の指示を待つ〉

第二機動護衛艦隊。

上級一佐が指揮する、より実戦的な新編成艦隊である。

みょうこう、ちょうかいの二隻のイージス艦が先行し、ついで旗艦いせ。

あきづき型護衛艦のはつつき、あさづき、わかつきが逆三角形に続き、輪陣形を組んでいる。

いせに搭載されたヘリは陸自から借りてきたAH-2戦闘ヘリ"ナルカミ"。

錆止め加工が入念に施されている。

AH-2は重武装ガンシップで、二十ミリ機関砲一基、三十ミリ機関砲一基、ハイドラ70ロケットランチャー、スティンガー空対空ミサイルを計六基詰めるという重武装。

ただし機銃の装弾数はそれぞれ百五十。

ちなみにF-15戦闘機は九百四十発。

パイロットは機首の下から乗り込み、龍の顎のようにコクピットへ格納される。

大型のいせでさえ搭載できたのは二機のみ。SH60K対潜ヘリも積まなければならない都合もあるのだが。

「しっかし完成度たけーなおい」

「'ぼくがかんがえたさいきょうの攻撃ヘリ'を具現化したものだしな」

「しかし整備性と生産性が劣悪。デュフフ」

「でもスティンガーじゃなくてAAM-4を積むことだって出来るんでしょ?それじゃ戦闘機だってイチコロじゃん」

「噂だが、AAM-4が艦に持ち込まれているらしいぞ」

「まじかよ、っべーわ」

見慣れない新型に若い整備兵も興奮している。

「今日はスパナを片手に追い回さなくてよろしいのですか?」

「いえ、流石に新型に傷をつけるのはマズイかと思いまして」

「はっはっは」

格納庫のエレベーター管制室、頭に白いものが交じり出した整備長が禿頭の甲板長と話している。

整備長四十八歳、甲板長五十五歳だ。

「若いもんはいつも元気だの。こっちまで若返りおる」

「しかしやんちゃばかりですよ」

「実戦になれば間違いなく空気は荒む。そこで彼らのような若いもんが清涼剤になればいいんじゃがのう」

定年間際、今回の航海が最後のお勤めとなる甲板長。

海の男の勘では、今回ばかりは専守防衛とばかり言っていられないかもしれない。

「戦後七十年。とうとう日本は戦争の最前線に立つよ、親父。若い連中の人死も避けられんかな…」


一月二十七日。

NATO軍が東アフリカのケニア、モンバサに上陸。

補給を済ませ、ルート確認が済み次第主核をなすドイツ陸軍派遣軍第一戦車大隊の地上の覇者たちは一路西進を開始。

ロタール=フォン=ペリエール中尉は自分のレオパルド2A6の車内でチャイコフスキーを聞いていた。

「中尉、中尉!」

「〜」

ロタールは装着した密閉型ヘッドホン故にドライバーの声を聞いてない。

目で合図して装填手にヘッドホンを外させる。

「なんだどうした?」

「中尉、大隊司令部より連絡であります」

「よこせ..こちら黒01。感度よし」

〈こちらHQ。そちらに向かう敵勢の戦車が八両ある。足止めに徹して救援を待て〉

「黒01、了解」

ロタール指揮下にある兵力で八両相手は少しきついだろう。

レオパルド2A6が四両とフクス装甲兵員輸送車が六両だ。

フクスは戦闘車両とは言い難い。

ゆえに戦車は実質二対一で足止めをしなければならない。

ロタールはハッチから身を乗り出し、車体の上に仁王立ちする。

「歩兵隊は反転撤退……敵戦車発見。距離千七百、方位2-6-4。全車停止、左砲戦用意。装弾筒付翼安定徹甲弾装填」

砲塔が動き、地平線のと砂の山の向こうにチラと見えたナニカにむけて鎌首を持ち上げる。

「撃て」

四門の五十五口径百二十ミリ滑腔砲が同時に火を吹く。

装弾筒付翼安定徹甲弾とは戦車の装甲を貫くための砲弾だ。

まず安定はしないが貫通力の高い硬いタングステンの芯の周りに、貫通力がない覆いをつけて安定させる。

発射後、速度がノッてきたところで覆いはパージされ高い貫通力を維持したまま装甲を貫くのだ。

一発三十六万円のライメンタル製の砲弾が飛んでいく。

ほぼ同拍に敵戦車も発砲。

「回避行動いそげ」

速度をあげて、相手から距離を取るように右へ針路を定める。

敵戦車の放った砲弾は全てロタール隊の後方(もといた場所)に土柱をあげる。

一方の敵戦車は煙を吹いているのが二両ある。

「黒01よりHQ、二両撃破。遅滞戦に入る」

〈…〉

「HQ?」

〈…〉

おかしなことに、一向に返事はなかった。

アンテナも無事、部隊内交信も可能。

数分後、思いも寄らないところから解答はもたらされた。


「こちらE-3Dセントリー、空中管制機ライジングウルフ。オペレーターのチャールズ=エリオットだ。ドイツ陸軍派遣軍第一戦車大隊黒小隊聞こえるか?」

〈…ロタール=フォン=ペリエール中尉だ。バッチリ聞こえている〉

キリマンジャロの北東十七キロ地点、高度七千メートルにE-3Dセントリー空中管制機がいた。

イギリス空軍所属。

言わずもがな、機内にはティーセットが完備されている。

「派遣軍第一戦車大隊は壊滅した。敵の襲撃機の襲来直後の戦車隊..惚れ惚れするようなブリッツクリーク(電撃戦)だった。慰めにはならんがね」

〈…〉

「いくら呼びかけても構わんが、答えはないぞ?急ぎ歩兵隊を吸収し、キリマンジャロ東部のNATO基地に逃げこめ。パパラッチはこっちで騎兵隊を用意する」

〈…了解〉

釈然としない様子のドイツ兵を蒼空より見下ろし、付近にいる手すきの航空兵力を探す。

「C.E.、うち(イギリス空軍)のタイフーンが一個小隊パトロール中だ。俺がドイツ人の方へ誘導するぞ」

「頼みます」

同僚にパパラッチ掃討を任せ、チャールズ=エリオット少尉は他のドイツ隊の誘導に移った。

モンバサを襲ったような襲撃ほどではないが、散発的な襲撃は日常になっている。

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