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the ancient sord

自衛隊の一般曹候補試験合格。

しかし艦内にタブレットの持ち込みはngらしく、艦これと執筆が続けられないっぽい?

執筆ならスマホに外付けキーボードで行けるかしら?


「状況をまとめます」

イギリス、ロンドン。

ヴァレリー=メディロスはデスクの前にたった。

「CIAのエージェント、ウィリアム=コーンウォリスが死亡したとの報告がある。しかし調べるとこいつはウィルじゃない」

ウィリアムの顔写真と死体の写真が並べて表示される。

丁寧に相違点まで示された。

「背後から針のようなもので延髄をやられたみたいね。血もまったく流れていない。プロの技よ」

「そして彼はアメリカ一のエージェント。暗殺術にも長けている」

イグザクトリィ。

推測される暗器のスペックが提示される。

「見ての通り、アイスピックのようなものを使ってきれいに刺している。どこが急所か分かるのかしらね?傷口から判断すると、ウィルはアイスピックを丁寧に手入れしているみたい。微塵の刃こぼれもなかったらしいわ」

「金属探知機に引っ掛からなかったのか?」

「記録には残ってない。現在捜査中だ」

筋肉モリモリまっちょマンな職員がそれに答える。

「見るからにこれは金属よね」

「技術部に任せましょう」


ロシア、モスクワ。

「長居しちまったな」

鬼怒は公安に怪しまれないように歩く。

次はロンドンで能代と合流する手はずだ。

(これは...これは良いものだ)

道端で買ったゴシップ誌のセミヌードモデルに称賛を送りつつ、尾行するエージェントをさりげなく撒く。

裏路地でかつらをかぶり、眼鏡をかける。

服も上着を変えた。

(ちょろいな)

いとも容易く撒けてしまうとは。

(イワンども、ウヲッカの飲みすぎで頭が緩くなったのか?)


連邦護衛庁、アレスキー=アレハンゲリスキーは焦っていた。

護衛対象を見失ったからだ。

(もとはSPの仕事だよな俺たち。なんで他国のエージェントを守らなきゃならん..)

内心では盛大にぼやきつつも、懐のシプカ短機関銃のグリップにコートの上から触れることで平常心を保つ。

(撒かれたか)

諦めて帰投しようとしかけたそのとき、一陣の風が吹いた。

(ウホ、いい男)


その風は鬼怒のかつらを吹き飛ばした。

(やべぇ、税金で買われた備品が..)

もう少し安い、失っても心が痛まないものにすればよかった。

まぁいい、あのかつらはどこかのハゲを救うだろう。

そこで鬼怒は目の前にロシア人がいることに気がついた。

(敵?..チィ)


「全員、追え!」


裏路地を縦横無尽に駆け回る鬼怒。

ビルの中に駆け込み、レストランの従業員に謝りつつ追っ手をかわそうとする。

テーブルを乗り越え、客が手にしていたターキーを奪い、厨房に入り、玉ねぎを拝借し、裏口を抜け、階段をかけ上がる。

踊り場は壁を蹴って方向転換し、二段飛ばしでかけ上がる。

ようやっとついた最上階、エレベーターの前にソファを置き、観葉植物を階段の前に置いておく。

薄いドアを蹴破り、手すりに手をかけ、そして柵を乗り越えた。

どなり声と共にロシア人が流れ込んできた。

彼らは柵のしたを覗きこみ、

「逃がしたか」

隣のビルまでは三メートルほどの隙間と、五メートルほどの落差がある。

地上までは三十メートルくらいだ。

人影がパルクールめいて走る姿は一瞬彼らの目に写り、声をあげる間もなく霞と消えた。

(そういや彼は保護対象だったな。なんで追いかけたんだ?失態じゃないか..好みの男だったからつい我を忘れたか..)


(ロシアも敵だったか..)

短い逃走劇から三時間後、鬼怒は日本大使館にいた。

事情を告げて協力を依頼する。

そして日が沈む頃、大使館職員の運転で駅に向かった。

「では、お気をつけて」

「ありがとう」

空路でいくはずが、ロシア当局の妨害(誤解)で陸路となってしまった。

まずはワルシャワに行き、それから空路でロンドンだ。

車内では特に妨害があるわけでもなく、静かな旅路であった。

空港の金属探知機にmy箸(檜)が引っ掛かったものの、それ以外はなんの問題もなくロンドンにたどり着いたのだった。


空港で待っていた日本大使館職員の運転で能代がいるパブへ向かう。

「久しく」

「遅かったじゃないか」

「ロシアで妨害を受けちまった」

鬼怒は能代に件のロシア人エージェントの特徴を話す。

「熊のような連邦護衛庁のエージェント..おそらくアレスキー=アレハンゲリスキーだろう。阿賀野が以前、この戦争の始まりを探ろうとして捜査線上に現れた男だ。彼が率いた班はCIAの精鋭部隊を一つ潰している」

「なんだってんでそんな男に追われたのやら。護衛庁はシークレットサービスみたいなものだろう?なぜ俺を狙ったんだ」

「東京にいる阿賀野に聞かされたが、イギリスの陰謀に乗っかったロシア政府がお前を護衛しようとしたんじゃないか?」

しかしそれでは負われた理由は?

「気の毒だが..アレスキー氏はガチホモだ」


鬼怒はロンドン市内のホテルに入った。

落ち着いたインテリアに感心しつつ、一人用ソファに腰かけてラップトップを開く。

秘匿回線を繋ぎ、日本にいる阿賀野とチャットを行う。

雑談の後、阿賀野はとある座標を送信してきた。

ーーここに向かえ。

(...ここって)

地図に照らして確かめる。

信じられずに五回確かめ、信じられずに阿賀野にメールを送る。

いわく、座標がおかしい。

返答は、間違いなくそこであっている。

気合いで行け、と言わんばかりだ。

(ロンドン塔の地下じゃないか..)


七月二十八日。

ロンドン塔。

鬼怒は能代と合流し、厳重なチェックのかかったゲートを抜ける。

網膜認証も指紋認証も、自衛隊が誇るマッドサイエンティストの手によって解析され、コンタクトレンズと特殊フィルムにより通過が可能になった。

オリジナルデータの持ち主は河岸に浮かぶ冷蔵庫の中に詰め込まれている。

死んではいない。

マッドサイエンティスト特製睡眠薬で、三十時間の快眠が約束されている。

起きたら五十時間は睡眠要らずだ。

真っ白な廊下を、二人は歩く。

マッド謹製フェイクマスクでオリジナルデータの持ち主の顔と声を再現。

歩幅まで計算されたその動きに、誰も怪しみを持つことはない。

(ちょろい)

阿賀野に指示された階層へ。

かれこれ十七回のチェックを通過した。

厳しいものも、簡単なものも。

奥へ歩を進める毎に、見知っているのであろう職員から声をかけられてしまい、いつ身元が割れるか戦々恐々だ。

だがついに、その扉の前にたどり着いた。

純白の無機質な扉は彼ら偽造IDカードを読み取り、戸をあける。

三人の男女が作戦指示を執っていた。

「ええ。ベルリンに三名追加、ウクライナから二人とマケドニアから一人引き抜きね。イタリアは放置でいいわ。アメリカを最優先で。チュニスはどう?まだ誰も死んでないみたいだけど」

「そうだ!ただ急いでサインを書けばいい!君たちの会社の経営は我々で支える!..ああ、そうだよ!」

「ええ、テヘランで一人ね。ちゃんと濡れ衣をきせるのよ」

室内を見回せば、他に二人がいた。

「アメリカ人の犯行に見せかけてムスリムを一人殺す。反米感情はいっそうの高まりを見せるぞ」

「それが王国にまで広がればどうする!確証がとれない作戦は実行すべきでない」

「まて。無用な混乱は望むところではない。オーソドックスにツイッターをハックしてアンチムスリムな内容を書き込もう」

「インパクトに欠けないか?」

イギリスの陰謀の中枢である。

(いた)

「何をしているの?」

ヴァレリーだ。

「遅かったじゃない。はやく報告を」

(やるか)

(ああ)

怪訝な目をすべての職員が向けた。

能代は役者めいた仕草でマスクを剥ぐ。

鬼怒も続いて脱ぐ。

「..諸君、ご無礼を承知でまいりました。私は日本国内務省、能代と申すもの」

「同じく鬼怒」

「この度はご用あって来た次第。蛇足だがこの顔の持ち主は生きているゆえ安心されたし」

拳銃を向けた職員をヴァレリーが制す。

「わざわざ可愛いうちの部下の皮を剥いで何を伝えたいと?凌遅刑にでもされたいのかしら?」


「そちらの世界戦略に一枚噛ませていただこうと、ね」


八月一日。

パラオ。

ようやく休戦交渉がまとまった。

関わった官僚たちはみな一様に安堵の息を漏らす。

晴天の下、先の会談に参加した国々が勢揃い。

今回はフランスと中国も買収されていない正規の外交官を参加させている。

交渉の結果はこうだ。

まずオーストラリアは非主権、非武装地帯。

異世界側はアフリカを放棄。

人類側はアルゼンチン以南南米を放棄。

国境線を中心に五キロ地域は非武装地帯とされた。

通商に関しては規定されず、個別の交渉が認められた。

「以上に異存がなければ、これにサインを」

それぞれの世界の大国として、小国の意見を代弁するとされている。

代表者がそれぞれの署名を書き込んでいく。

同じ文章が出席国すべて、十七回の署名を終えたあと、それぞれは適当な相手を探して貿易交渉を始めた。

彼らは大国の利益代表として、小国の権益に気兼ねすることはない。

以前よりさらに小さくなった翻訳機を首にかけ、随行員や官僚たちは企業や団体に密かに依頼されていた交渉を始める。

日本の官僚の一人もナッソーの官僚と話している。

これまで休戦交渉と平行して行われていた交渉の、最後の確認をするためだ。

「我が国の精密機械をそちらに輸出して...」

「規格もそこまで変わらないので...」

「こことここの保険会社が名乗りをあげております...」

「レアメタルの埋蔵量に関する正式な書類が...」

「油田の掘削技術...」

「我が国の炭素繊維が...」


矢矧は酒匂と別れ、交渉が行われていた客船のデッキに出ていた。

海上は軍艦が数隻待機しており、マスコミのボートはシャットアウトされている。

「ここにおられたのですか」

狐の耳がぴんと主張する、ナッソーの代表だ。

「私は利益団体の依頼を受けていませんので。それに人混みは好きじゃない」

しばし沈黙。

「...お話があります。これはうちの政府が日本国を相手に希望するものです」

「ききましょう」

すでに捕虜の移送の話は済んでいる。

ならば商業関係の話ではないだろう。

おそらく、軍事や政治に直接絡む話だ。

「ゲートを、置かせていただきたいのです」


「高雄政権は民主制を唱っている。しかし実態は賢人政治と言うべきだろう。言論の自由は保証されるが政府の権限は強く、外務と財務の売国官僚は多くが更迭された」

「私達のところは普通の立憲君主制だよ。崇めるのは人じゃないけどな」

酒匂はラウンジでナッソーのもう一人の代表と話していた。

「実際は神官以外は...神官でも数名以外は誰も見たことがないそうだ。だが、言い伝えでは剣であると言われている。ナッソーの始まりから伝わる古い剣だそうだ」

「日本は二千と六百七十五年ほど続く、神話の系譜に連なる方だな。...後継者問題はどうしようもないが」

「皇太子どのはご病気なのか?」

「陛下も殿下は健康でいらっしゃる。が、数えるほどしか継承権を持つ方がいらっしゃらないのだ」

「人の命は短いからな...」

「たった八十年ばかりで交代せざるをえない。人でないほうがその点ではいいのだろう」

「だが他の王国と比べた場合、レプリカを疑われてしまい格を落としてしまう。人クローンの技術は未発達だから、皮さえ被ってれば疑われないのだがな」

二人して悩みこむ。

酒匂はひとまず話題を変えることにした。

ナッソーの内政はどうなんだ、と。

「うむ。政治家官僚は腐敗してるけど政治は腐敗してはいない。ボーグ連邦と比べると天国だ」

そんなにひどいのか?

「民主制最悪の形態だ。上は私益のために動き、下は甘い汁をすすろうとする。善良な九割の意見は無視され、一割の傲慢が国を動かす。選挙にいってもどこも変わらない。立候補しても圧力がかかる。当選しても冷飯ぐらい。投票率は三割だ」

「...」

「だから神官の人気は高い。これまでは札束で掃除をする税金泥棒と言われていたが、今の神官長は政教分離に反しない程度にロビー活動などをなさっている」

「神官か...神権政治をやるつもりなのか?残念だがカルト国家の手はとれない」

違う違う、と尻尾を揺らして彼女は言った。

「少なくとも神官長は政治に関わらないって明言している。取り巻きも同意見。あとでそこら辺の資料を送ろう」

すまん、助かる。

良いって良いって。

「そちらの政財経有力者の資料で対等としたい」

「ええ。いいでしょう。ところでその神話についてお聞かせ願えませんか?」


とある一族は栄華を誇り、やがて衰えていった。

天より降れる敵、扇を射る敵。

数多もの戦いの末、果ての海峡に閉ざされた一門。

これが最期と主は剣を抱きて藻屑とならんとした。

しかし冷たい世界に暖かな光。

手を伸ばした主は声を聞く。

“大地を救え”、と。

光を纏い、焔斬る剣を携えた主はその地に救う邪悪を滅したかに見えた。

されど主は相次ぐ戦いで斃れる。

最後の戦、主は川辺で崩れる。

主は最期まで側にいた彼に告げる。

“救え”と。

彼は主から剣を受け取り、凶悪なる敵を討ち滅ぼした。


「私はあまり語りが得意じゃないからな。おおよそこんな話だ。“彼”が建国の父とされている。そして“主”の正体は不明」

「そんな言いぶりは不敬罪に当てはまらないのか?」

「大丈夫よ。表現の自由ってやつね」

酒匂は紅茶を一口。

(なにか引っかかる...)

「そのあとは国土の拡張と発展に勤めたらしいね。千年ほど前の建国だ。そして六百年ほど前に獣人が出現した」


それは切れ目だった。

森に切れ目ができた。

そこから獣が現れた。

次第に彼らは増えた。

彼らは人とは違った。

結果人と分けられた。

しかし一人は違った。

彼は獣に手を貸した。


「獣人差別最盛期にあって、ただひとつナッソーだけが獣人に市民権を与えたの。最初は反発もあったけど、かれこれ六百年。混血は進んでも“主”と獣人がどっから来たのかは不明だけど、だいたい平等な国家よ」

そして彼女は付け加える。

「その剣の名は...」



“叢雲剣”



「ムラクモノツルギ...」

「知っているの?」

酒匂はお茶請けのモンブランを落としかけた。

「失われた三種の神器の一つ..壇之浦の戦いで海中に没したはず...!」

「どういうこと!?」

おそらくは。

「“主”と剣は...おそらく古の日本国にルーツを遡れるはずだ..」


八月三日。

「しかし驚いたな。異世界に平家の残党が流れていたとは」

「しかも宝剣つきだ。両国融和の糸口になるな」

東京、薄暗い部屋。

「右翼がうるさいのでは?」

「捻るだけさ。血は隠すよ」

「暗いとカップがどこにあるかわからないんだが」

「イギリス、ドイツとの裏工作は済んでいる。案ずることはない」

皆、黒幕めいて円卓に座っている。

「アメリカが乗るかしら?」

「乗らなきゃ乗せるまでよぉ。あなたの妹も大活躍じゃない?」

「...ああ」

そして煎餅を咀嚼する音。

「ここで異世界、あるいはナッソーとの融和についてこれないやつはそこまでだ。新たな時代に乗れない、淘汰されるだけの旧人類さ」

「極めて危険で排他的。民主主義国家の首相の発言じゃないわよぉ?」

「誰だコーヒーなんかを飲むやつは?軍法会議ものだぞ」

「内務省としては首相の尋問..もとい拷問の許可を願うものです」

「法務省としては許可するものである」

「お、おい許可するなよ!」

沈黙。

(滑った?)

「首相の斬首は後にして、ナッソーとの融和について話しましょうか」

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