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戦場となる

このあたりから、他の戦記作家さんとは一線を画して行きたいとおもっています。

二月六日

アレスキー=アレハンゲリスキーの仲間はモスクワ市内を歩くアメリカ人を監視していた。

一週間前から警戒し、三日前より五十人がチームで彼を追っている。

相手は五人とされている。

これで護衛対象を殺害されたならば、アメリカ人はすべてチャック=ノリスか何かだろう。



「イワンどもめ、邪魔をしよってからに」

〈落ち着けキューパー。対象はまだホテルから出ていない〉

「わかったよ」

オーガスタ=レオポルド=キューパーは昨日から誰かに狙われていると感じていた。

グロック19をいつでも取り出せるように心を構えながら、一件のアパートに入り込む。

ドアを開けてワイヤートラップに気を付けながら中に入る。


〈ターゲット、ポイントに到着〉

〈オブジェクト3、排除します〉

〈オブジェクト2、排除〉

機械のように感情を廃した兵士の声が、ヘッドセットから流れてくる。

「オブジェクト1は俺がやる」

アレスキーは真っ暗な空間で身動ぎひとつしない。


〈キューパー!ダレス、チムーと連絡が途絶えた!いそいでくれ!〉

「わかったよ」

対象がいるはずの部屋をノックするって

誰もない。

居留守だろうか?

電子キーをハッキングして解錠。

静かに中へ踏み込んだ。


〈オブジェクト5、殺害〉

〈オブジェクト4が見つかりません〉

すこし焦りの感情が滲みでている。

新米だろう。

だがアレスキーは答えない。


キューパーは書斎らしき部屋の前に立つ。

ここに合衆国の秘密を知ってしまったあわれな女がいるらしい。

できればもっと野蛮な連中がいないところで仕事をしたかった。

対象は顔はともかく豊満な身体をしており、殺す前にかなり楽しめただろう。

三十人はいるとされるロシア連邦護衛庁のエージェント。

本来は大統領につくシークレットサービスのはずだが、要人警護のプロとしてこの女を守っている。

半分は素人の研修なのだろうが、のこり半数が厄介だ。

教官かもしれない。

(せっかくのミッションだったのにな。後ろから殴って気絶させ、ベットに手足を縛り付けて猿轡を噛ますんだ。目が覚めたところでパーティースタート。まずはナイフで衣服を切り裂き、次いでショーツの上から愛撫する。ここで女は泣き叫ぶだろうから銃を突きつけて黙らせよう。無駄にデカイ乳を揉みし抱いて」

「Hey you. Stop stop stop. Back to the real.」


妄想に浸っていたオーガスタは、ロシア訛りの英語で意識を引き戻される。

はっとなって振り向くと拳。


アレスキーは女の寝室のクローゼットに入っていた。

女は寝室のベットの下に放り込んでいる。

寝室に入ってきたところでクローゼットから不意討ちを仕掛けるはずが、なかなか書斎前から動かない。

怪しく思ってクローゼットを出で、哀れなアメリカ人の背後を易々ととった。

拍子抜けするじゃないか。

アメリカ人はブツに足がはえた婬獣なのかもしれない。

とりあえず親切心から忠告をしてあげる。

「おいそこのバカ、妄想だだ漏れだぞ」


殴られて吹き飛ぶオーガスタ。

グロックを抜いてためらいなく撃つ。

バン、と銃声が響き周囲が騒がしくなる。

サイレンサーもなしに撃たれた弾丸はアレスキーの頬を掠めて背後にあった日本製炊飯器を破壊した。

焦るオーガスタ。

オーガスタはとりあえず後ろの扉をひねって駆け込んだ。


まさかここまで単純だとは。

隠密作戦であろうはずなのに平気で銃を撃つバカの思考は、ケンブリッジにいたアレスキーの理解の外側にあった。

「ちぃ」

アレスキーはシプカ短機関銃を抜いて後を追う。

代わりに表れたのは女職員。

掃除用具いれから現れた。

彼女はベットの下に放り込まれた女を回収する。

「粗っぽい人でごめんなさいね。彼はいつもそうなの」

「い、いえ」

女は胸元をまさぐられる感覚に身を強ばらせる。

「ごめんなさい、つい趣味で」

「..連邦護衛庁には変態しかいないんですか!?」

「ごめんなさい。それは最重要国家機密なの」

それってジョーク?

さて、どうかしら。


裏口から転げ落ちるオーガスタ。

タタタタタ、とアレスキーが掃射する。

「オブジェクト1を捉えた。逃げ足は早そうだから手伝ってくれ」

〈オブジェクト4発見〉

無線からタタンと銃声が聞こえ、これでアメリカ人のエージェントはロシアが把握する限り残り一人になった。


モスクワ市内を東へと駆ける。

すると後ろからアメリカ大使館ナンバーの車がよってきた。

「Cooome Ooooon!」

ドアを開けたサングラスの男が手を伸ばす。

必死で手を伸ばして答える。

力強く引きずり込まれたオーガスタ。

(これで生き残れる..)


アレスキーは国際法的にアウトなことをやっていた。

そう、偽造大使館ナンバーの使用だ。

焦っていればいちいち小さな差違まで気づくだろうか?

そんなわけで一部の連邦護衛庁の車はナンバーを走行中にすり替える機能がついている。

もののみごとに件のアメリカ人は乗り込んできた。

「よお兄ちゃん。ツイてないね」

銃声。


「おいおい阿賀野!手伝え!」

東京、内務省。

職員の阿賀野は同僚に呼ばれた。

「お前のクラッキングスキルが必要だ。悔しいが俺の進化した愛しいマイハニーでもこのセキュリティは破れねえ。すまん開けてくれ」

カタタタタ、と打ち込む。

「防壁..いや攻性防壁か。オージーのサーバーを踏み台にしてプサンとウラジオストクを経由する..よし、アタックスタート」

ものすごい勢いで打ち込まれるキー。

画面は下から上へと高速で文字列が流れていく。

まるでもともと白い背景だったかのように。

カタタタタ、と打ち込む。

「第二、第三の防壁か..ペンタゴンより固いや。天城さん、俺のブースからUSBとって!それじゃなくて棺桶ついたやつ」

「区別できません!」

見かねた上司が教えてやっている。

アブラギッシュににやけた顔を見ると、単に若い女性と話したかっただけかもしれない。

「投げます!」

後ろから飛んできたUSBを左手でキャッチ。

流れるようにキャップを外し、ポートに挿入。

〈不明なユニットが接続されました〉

さらに加速する文字列。

「セキュリティ開いた」

「おっしゃ」


アレスキーは専用焼却炉にアメリカ人の死体を放り込んだ帰り道、ふと思い立ってスーパーに立ち寄った。

そこにいたのは警察署帰りのさっきの女。

数時間前に殺されかけていたのにもう自由に出歩いている。

「先ほどはありがとうございました」

「なに、仕事だ」

ミネラルウォーターを買って帰ろうかとしたときに呼び止められた。

「今から、お時間いただけますか?」

「..ナンパか?」

「えっと..」

アレスキーはネクタイを緩めつつこう言った。

「すまない。女性には興味が持てないんだ」

がさりと袋が落ちる音。

こぼれ落ちる卵、強力粉、玉ねぎ。

アレスキーはクールに去っていく。

「..私がいるから、元気だして」

護衛につけられた女性職員が失恋した女を慰める。

ただし同性愛者だ。


阿賀野たちは緊急対策会議を開いていた。

「まず阿賀野一尉、報告を」

「はい」

上司の指示に従い内務省と防衛省の幹部を相手に報告を開始する。

「私の班では海外の政府関係に対する電子諜報を行っております。その時に見つけたのがこちらのファイルです。なぜかロシア政府から入手しました。ペンタゴンにあったデータとの照合も行っております」

「何を見つけた?」

内務大臣の日向が訪ねる。

手にはティーカップ。

「こちらです」

スクリーンに写し出された鷲のシンボルを描いた文書。

「今次大戦における重要資料です。かいつまみますと、アメリカが最初に“敵”と接触し、交渉の使者を問答無用で射殺した可能性があります」

もともと戦闘を書くのは得意じゃないので見苦しい所も多々多々多々あったと思います。申し訳なく思います。

だいたいこの話ごろをターニングポイントに、話はいっそう薄暗い方へ向かう予定です。

五十話くらいで一章の完成を目指しておりますのでよろしくお願いします。

申し訳ない限りですが、全四章の予定です

駄文ですがお付き合いただけると幸いです

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