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一月、戦端が開かれた

タブレット復旧の目処がたったのと、期末考査終了祝いに予定を前倒しして投稿し〼

2015年、元日。

ベットの中でスヤスヤと眠る中年男がいた。

広いベットにふかふかの枕。

それに品の良い寝室の調度品。

きっとなかなかに高給なのだろう。

深夜、草木も眠る丑三つ時。

毎日休みなく働く中年男の唯一とも言える安息の時。

しかしそれは無粋なモーニングコールによって奪われた。

「総理!高雄総理!」

世間は正月休みなのにスーツをぴしりと着込んだ男が高雄の寝室のドアを蹴破った。

「昭和基地を含む全ての南極観測所との連絡途絶!」

「…はい?」

「状況はまだ分からないのか?」

「衛星からの映像…きます」

首相官邸地下、危機管理センター。

多くの職員がアメリカやオーストラリアと連絡を取り、南極の様子を探っている。

「閣僚はみな集まったか?」

「外遊中の日向内務大臣以外は」

「よろしい。では始めてくれ」

警察や治安維持に関する内務大臣は今、イギリスに飛んでいた。

「つい四時間ほど前、昭和基地からの定時連絡が来ていないと文部科学省から関係各省に連絡が渡りました。状況を調べていますと、つい一時間ほど前にアメリカ政府が非常事態宣言を発令しました。この時点で全ての閣僚に連絡、今に至ります。では南極の件です」

「車中でラジオが流していたアメリカの非常事態宣言っていうのはこれか?」

「はい」

防衛大臣の羽黒の質問。

すでに自衛隊は厳戒態勢に入っているという。

「アメリカの見たてでは所属不明の武装集団が南極にて蜂起、基地を占領したと見ていますが、オーストラリアのそれは珍妙奇天烈なことになっております」

珍妙奇天烈なこと、と言うほどの事態とはなんだろうか。

職員はディスプレイに映した衛星写真を示す。

「わが国の準天頂衛星が偶然吹雪の切れ間に映しました。戦車のように見えますが実態は不明です」

おお、と閣僚がどよめく。

「上から見た限りでは…イギリスのチャレンジャー戦車のようなボディだな」

「しかし南極条約であそこは中立地帯のはずでは?」

「ああ。それにイギリスも、チャレンジャーを運用する国も南極を制圧するメリットがない」

ちなみに羽黒はいわゆるミリオタである。

「オーストラリア政府の発表では、異星人の襲来、と」

「トチ狂ったかオージーども」

「アメリカ映画じゃないんだから…」

「そしたら大統領がホーネットで円盤でも攻撃するのかい?」

閣僚はみな鼻で笑う。

それはそうだ。

民間ではなく政府がエイリアンの侵攻を公言したのだから。

「よっぽどオージーにはジョークセンスがあると見える」

「しかし南極と連絡が取れないのも事実。アメリカにあわせて各所に警戒を促すべきだ」

かくして総理の新年初の記者会見は南極非常事態に関するものとなった。


「艦長より総員、本艦はこれより小笠原に進出、警戒態勢に移る」

「しかし艦長。なぜ新年急に?」

「上からの指示だ。なんせ俺たち以外は新年で艦から離れていてな。どうせ近場にいるやつは招集される。だったら始めっから現場にいて勲章でも貰おうじゃないか?どうだ利根砲術長」

「了解しました」

護衛艦、こんごうが横須賀の岸壁を離れ、漆黒の太平洋へ乗り出してゆく。


〈ゴーストアイよりブラッディナイフ、どうだ?〉

「ブラッディナイフよりゴーストアイ、マゼラン海峡を越えた。風が強い。偵察はしっぱいするやもしれん」

クリストファー=クラドック少佐は一人U2Sドラゴンレディ偵察機上空で身を震わせた。

突如として連絡が絶たれた白い大陸。

衛星も上手く接触できない現状、誰かが偵察機で乗り付けるしかない。

オーストラリアが主張する異星人の可能性を考慮して、高度二万七千メートルを飛べるU2Sに白羽の矢が立ったのだ。

〈ゴーストアイよりブラッディナイフ、南極に接近している原子力潜水艦より連絡があった。奴らはすでに海岸まで来ているらしい。地対空ミサイルに警戒しろ〉

「了解」

そんなことならモスボールされているSR71ブラックバード偵察機を引っ張り出してくるべきであったのかもしれない、とつれづれ考えながらU2Sが夕暮れの空をかける。

「下に熱源があるがブリザードでよく見えない。無人機での偵察を提案する」

〈すでに墜ちた。風が強くてな。ブラッディナイフ、絶対に高度を下げるなよ?〉

「わかってます。こいつの脆弱なボディではブリザードに潰される」

結局、U2Sは偵察任務を達成できなかった。

そして一月三日、異星人たちは南極からあふれるように海へ乗り出した。


一月四日、フォークランド沖に南西十キロ。

一隻の潜水艦が水中警戒していた。

「艦長、南極の様子はわからんのですか?」

「ダメだ。アメ公が有人無人の偵察機を飛ばしているがマゼラン海峡の先はよくわからん。すでにオーストラリアに上陸されたという話もある。ゆえに、我々は船団が到着するまで奴らを足止めするのが任務だ」

「アイ、キャプテン」

イギリス潜水艦、アンブッシュ。

原子の力を動力に進む深海の伏兵。

艦長のジョージ=アンソンは発令所に黙って立っている。

つい年明け早々に存在を確認された異星人たち。

まだ四日目なのにフォークランドまで渡れる船を持っているとは到底思えない。

というかマゼラン海峡を超えたという噂も怪しい。

どうせ嘘っぱちだろう、早く終わって母港のクライドに帰りたいものだ。

そんな風に考えていると、まぶたがだんだんと閉じてくる。

少し休もうか、ここ二十時間近く睡眠をとっていないことに気がついた彼が発令所を出ようとした時だった。

「ソナーに感。音紋照合…未確認!」

「アンノウンの予想進路……フォークランドです」

ソナー員が静かに叫ぶ。

発令所に詰める皆の視線は、艦長にすがるものであった。

「本国へ連絡。それと異星人への対策なんざないから今のうちにデータを取れるだけ取っておけ」

「アイ、サー」

航海長が衛星電話で指示を仰ぐ。

二人のソナー員が異星人艦隊の音紋を記録し始める。

「全魚雷発射管装填」

「魚雷装填」

〈…装填よし〉

号令からやや遅れて装填完了の報。

訓練どおりやれていることに満足する。

「発射管注水」

〈…注水よし〉

「外扉開け」

火器管制官がコンソールを操作し、船体に軽い衝撃が走る。

外扉が解放された衝撃だ。


「本国より伝達、“Kill Them All”。以上です」

「認識した。これより本艦は異星人艦隊へと雷撃戦をしかける。各員の努力に期待する。一番から四番まで発射始め」

まっすぐに伸びる航跡。

四本の銛は黒い未確認船の機関部に直撃。

三隻が沈む。

一隻は艦首を高々と持ち上げながら。

一隻は煙突下で二つにばっくりと割れながら。

一隻は横倒しになって沈んでいった。

「三隻が沈没。残り五隻」

「五番六番発射。一番から四番まで再装填」

さらに二つの航跡が残存艦隊に襲いかかる。

一隻は大きく傾げ、兵士の離艦が始まっている。

しかしもう一隻は魚雷に機関砲を撃ち込み機器を狂わすことで回避。

「敵艦、残り四隻」

「敵艦回頭、反転して南極に戻ります」

「一番から四番まで発射」

四本の銛が三度駆ける。

「全管ハープーン装填」

敵艦が魚雷を攻撃する。

必死の防衛により二発が破壊されたが二発が防衛網をすり抜けてしまう。

艦腹に突き刺さった一本は、しかし幸運にも不発となった。

が、最後の一本が一隻の艦尾に直撃、轟沈。

「敵艦、残存三」

「一番から四番までハープーン発射」

魚雷に代わり打ち出された対艦ミサイル。

海面を突き破り飛び出したハイテクの銛は、海面ギリギリの高度を飛翔する。

「五番六番発射」

ハープーンは目標直前で大きくホップアップしブリッジに直撃した。

紅蓮の花火が海面を彩り、その数は三つになった。

「敵の殲滅を確認」

「本国へ連絡しろ。異星人どもを原初の存在にかえてやったってな」

本作はフィクションです。

佐賀県出身設定の人物が優秀なのはフィクションでないことを願います。

特定個人や団体を中傷するものではありません。

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