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喪失夢幻のアトラクタ  作者: 木原ゆう
第一章 真性異言のヘミシンク
9/17

09猫娘+《Catgirl》=去秒


 今日は日曜日。


 父さんはいつも通りの日曜出勤。

 サービス残業、サービス祝日出勤当たり前。

 よくもまあ、これだけ会社にコキ使われておきながらも、一言も愚痴を零さずに仕事をしているよ。

 俺や麗佳の将来も真剣に考えてくれているし。

 節約して俺達の為に貯金してくれているのも知っている。

 そんな父さんが、俺も麗佳も好きだったり。


 母さんも先週は休みだったから今日は出勤みたいだ。

 父さんの収入が少ないからと、こちらも負けじと仕事三昧。

 たまに家事の手を抜いたりとかするが、結局働いているのは俺達の為。

 そんな母さんも、俺達は好きだったり。


 麗佳は友達と映画館に行くとかで、どの服を着ていけば良いかを俺に散々聞いてから出掛けて行った。

 その友達とやらが男友達で、是非とも麗佳の色気にやられて告白とかして。

 そして見事お付き合いでもして貰えれば、俺に対する『色目』らしきものとかも少しは収まってくれるのではないかと期待。

 そんな麗佳はちょっとだけ気持ち悪い。



「……さて、と……。見事に家族が誰もいねぇし……。絶好の『ダイブ』日和だよなぁ……」


 そんな独り言を呟きながらも、俺は机の引き出しからいつもの『ウォークマン』を取り出す。

 てか毎日潜ってんだけどね☆レイナちゅわんに遭いたいから☆


 俺はいつも通りベッドに横になりヘッドフォンを装着。

 ウォークマンの電源をONにし、再生ボタンを押す。

 数秒のタイムラグの後、流れてきた癒し系音楽。

 すぐさま深い眠りに付く俺。






◆◇◆◇






01:28:23

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 目覚めた俺は、一応頭上を確認する。


 いつも通りの『制限時間』と『目盛り』の表記。


「……うっし!じゃあ……いつもの俺の嫁、登場だあ~!」


 俺はイメージするようにポーズを取る。

 そして具現化される女剣士。




01:27:11

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ □ □ □ □ □ □ □






「レイナちゅわん///」


「・・・」


 ……あれ?今日はテンション低くね?


「……どったの?レイナ?お腹でも痛いの?」


「……もう、いい加減にしてくれないかしら、アオイ……」


 数日前くらいからとうとう俺の事を『アオイ』と呼んでくれる様になったレイナ。

 流石は俺の嫁1号。

 出来る嫁を貰って、俺、幸せ!


「何でそこで嬉しそうな顔をしてんのよ!気持ち悪い!もう私の事を『具現化』しないでって言ってるのよ!どうして分らないの!?」


「いきなりのツンデレご馳走様っす///」


「……ああ……もう……相変わらず何を言っても動じないこの態度……!貴方、頭おかしいんじゃないの!?」


「うん。オタクですから」


「ああ、もうっ!この変態っ!!馬鹿っ!!死んじゃえ!!」


 なんか手をグルグル回しながらも叫び続けるレイナちゅわん。

 相変わらず可愛いなー……。

 この、戦ってる時とお喋りパートとのギャップがまた……///

 しかも攻略完了したら一気にデレモードに突入するし……///


「あ、そうだレイナ。今日はさあ、俺の嫁第2号に挑戦してみようと思ってさあ」


「……はあ?……第2号って……」


 俺は困惑顔のレイナをよそにイメージを高めて行く。


 これまた俺が何百時間と嵌ったパズルゲーム。

 延々と繰り返される単調さの中にも戦略性際立つお手軽ゲーム。

 しかし俺の目的はそのパズルゲームそのものでは無い。

 そこに登場する敵キャラモンスター。

 フサフサの可愛い耳。フサフサの可愛い尻尾。

 ちょっと八重歯とかも生えちゃっててキュート過ぎて何度も萌え死んだあの獣人族の女の子。

 テレビに映ったその姿を見た瞬間から、俺の二次元嫁の一人に加えようと心に誓ったあの日が懐かしい。


「……きたきたきたあああ!イメージ沸いて来たあああああ!!」


 俺は指を天高く上げ、こう叫んだ。


でよっ!猫耳がキュートなララ・ネルフェリングちゅわんよっ!!!///」


 パチンッという音と共に空間から人影が出現。


 キュートなお尻と尻尾。

 緑色のショートカットに猫耳。

 獣の皮で作られた、胸元が大きくあいた水着のような衣装。

 俺の興奮、最高潮。



「………ニャ?……あれれ?ここはどこニャ……?」


「ら、、、、ららら、、、、」


 俺は両手を大きく広げる。

 鼻息は平原の草をなびかせる程に強く。

 鼻の穴はブラックホールよりも大きく。

 そして俺の心は、君のもの。


「ララちゅわああああああああああああああああああん!!!!/////」


「ニャっ!?敵襲かニャっ!!??」


 抱き締めようとララちゅわんに飛び掛った俺は、空中でクルッと一回転したララちゅわんのパンツが見えて喜んだのも束の間。


「いっくニャ~!!《3連鎖猫キーーーーック》!!!」


バババンッ!


 見事に全部顔面にヒットしました。

 そのまま後方にすっ飛ぶ俺。

 でもパンツ見えたから幸せです。


「………アオイ………。あんた、前に私に同じ事をされたばかりでしょうに……」


 吹っ飛んでいる最中、レイナのそんな感じの言葉が聞こえた気がするが、猫足で顔面蹴られたせいで俺の顔はメコッてなっちゃってて前が良く見えないからゴメンね。


 20メートルくらいすっ飛んだ所で漸く止まった俺の身体。

 顔の半分以上が潰されても生きている俺は、やっぱただのゾンビキャラなのかな……。

 むくっと上半身を起こしながらもそう考えてしまう俺。


「ニャニャッ!!?完璧に入ったのにどうして起き上がれるのニャ!?化物ニャ!あいつ化物ニャああああ!!!」


 猫耳を抱えながらも怯えている……んだと思うララちゃん。

 顔つぶれてて全く見えませんけど。

 取り合えず自慢のイケメンを元に戻しておこう。


「癒しの力よ!僕の顔戻して!《ガンメン・ヒーール》!!!」


 とか適当に唱えてみる。

 ていうか本当は詠唱とかいらねぇんだけどね。

 そこはやっぱ雰囲気だよ、雰囲気。


 パチンッという音と共に俺の顔は元通り修正。

 猫足キック、恐るべし。


 さあ、今日は新たな俺の嫁と、心ゆくまでイチャイチャしよーーっと///







01:15:54

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


















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