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喪失夢幻のアトラクタ  作者: 木原ゆう
第一章 真性異言のヘミシンク
8/17

08少女+《giRl》=序章


 あれから数日。


 俺は毎日1回は必ずあの『夢の世界』に入るように習慣付いてしまっていた。

 多分2回でも3回でもあの『夢の世界』に入る事は可能だろうが、入った後の頭痛が酷いので俺は1日1回だけにしようと決めていた。

 そして何度か入るうちに分った事がいくつかある。


 2回目の『ダイブ』(『夢の中に入る』、だから俺は昨日からこう呼んでる)で分ったのだが、前回ダイブした時に具現化したものは、全て『リセット』されているみたいだった。

 そして制限時間は同じく90分。

 目盛りも最大(数えてみたが全部で29目盛りだった。なんでこんなに中途半端なのかは分んねぇけど)まで回復していた。


 当然俺はダイブして速攻でレイナを7目盛り使い具現化。


 また前回みたいにいきなり体中に風穴を開けられるかも、と思い警戒していたが…。

 何故か『前回の記憶』を持ったまま具現化されたレイナ。

 という事は『具現化したもの』はリセットされるが、『具現化したもの(人?)が記憶した内容』は、次のダイブにも『持ち越される』という検証結果。

 当のレイナにも何処まで覚えているかと聞くと、やはり俺が上空を見ながらレイナに「お別れの時間だ」と言った所までで途絶えているらしかった。

 で、気付いたらまた夢の世界に具現化されていた、と。……俺がしたんだけど。



キーンコーンカーンコーン。


 授業の終わる合図と共に、俺はさっさと帰り支度を始める。


「おいおい、八神ぃ?今日も真っ直ぐにお帰りかよ?お前、ほんっとに最近付き合い悪くなったよなぁ」


 いつもの如く隣の席の飯島が俺を通せんぼする。

 相変わらず暇だな、こいつも。


「悪ぃな。最近忙しくってよう。面白いゲームを買っちまって嵌ってる所」


 嘘は吐いてはいない。

 俺はあの『ダイブ』をゲーム感覚でやっているからな。


「そんな事言って……どうせまた麗佳ちゃんとイチャイチャしてるんだろ?『お兄ちゃん///ちょっと///そこは……ぁん……ボタンじゃないよぅ///』とかやってんだろこらぁ!!」


スコンッ。


 良い音が教室に響く。

 俺がいつも通り飯島の頭を、丸めた教科書で叩く音。


「痛っつ……!冗談に決まってんだろう八神……。なんかお前、突っ込みのタイミングのキレが増してきたなぁ……。いてて……」


「誰のせいだよ、誰の……」


 静止する飯島をやり過ごし、笑いを堪えている成瀬に手を上げて別れの挨拶を済ませた俺は教室を出る。






◆◇◆◇






 帰り道の最中も、俺は常に『ダイブ』に関しての考察を怠らない。


 夢の中に入り、制限時間90分の中で自由に自分のイメージ出来る物を具現化出来る『夢の世界』。

 具現化出来ない物も多いが、それらは俺の『イメージ力』に起因している事も既に分っている。


 何百時間もやっていたハンティングゲームで使っていた武器も具現化出来るし。

 何百時間も繰り返しやっていたMMORPGの魔法も具現化出来る。

 そして何百時間も繰り返し使ってきた格闘ゲームキャラのレイナも具現化出来た。


 まさかこんな所で俺のオタク生活で培って来たものが活かされるなんて、人生ってホント、何が起こるか分ったもんじゃねぇな。

 今更ながらにそう思う。


 秋葉原駅手前の大通りの信号が赤になる。

 俺は立ち止まりながらも考察を続ける。


 しかしまだ解明出来ていない謎もかなりある。


 まずは『目的』だ。


 夢の世界で自由に出来るのは分かった。だが『目的』は何だ?

 ゲームだとしたら『クリア』が一つの目的だが、そもそも平原が広がっているだけで他は何も無い『夢の世界』。

 昨日なんかはレイナと一緒に90分丸まる使って平原を走り回ってはみたが、ただ走り回っただけでタイムアップ。90分が終了してしまった。

 もしかしたら、もんのすごく自由度の高いゲームなのか?

それとも『敵キャラ』みたいなのも自分で『イメージ』して『具現化』して倒さないとレベルが上がらないとか?

 というかそもそもレベルとかもなさそうだし、ステータスみたいなものもどこにも見当たらなかったし。

 それ以前に90分経って現実の世界に戻って来ちまったら『記憶』以外は全てリセットされちまうっぽいし。

『90分限定の自由度のめっちゃ高い生産型MMORPG』って事でいいんかな……。


 信号が青になる。

 一斉に駅方面に流れて行く人の集団。

 俺もそれに混ざり駅構内へと吸い込まれていく。


 と、誰かの視線を感じ振り向く。


(……?誰だ……?女子高生……?どこの制服だあれ……?)


どん。


「あ、すいません……」


 何か駅に向かっていく営業マンっぽい人とぶつかり謝る俺。


「………あ。……居なくなっちった……」


 視線を戻した時には既に女子高生の姿はそこには無かった。

 誰だろう……。明らかに俺を見てたよな……。知り合い?……いや、知らねえぞ、あんな子……。


 どこと無く憂いを含んだ目。

 何かを見透かしている様な……そんな印象の目。

 そして何よりも目立ったのは、女の子には不釣合いなほどに大きなあのヘッドフォン。

 あれって……。


「……まさか、ね……」


 確証は無い。

 だって一瞬ちらっと見えただけだし。



 俺は気にしないようにかぶりを振り、自宅のある昭和通りへと歩を進めた……。


















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