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喪失夢幻のアトラクタ  作者: 木原ゆう
第一章 真性異言のヘミシンク
7/17

07誘惑+《luRe》=和弓


『♪~♪~♪』


 二人っきりの夕食を終え、俺は我が家に一台しかないリビングに置いてあるテレビで格闘ゲーム中。

 勿論、使用キャラはレイナちゅわん。

 そしてさっきからリビング横の風呂場から麗佳の鼻歌が聞こえて来るが、俺は画面のレイナちゅわんの勇姿に夢中で、何の歌なのかとか考えている暇もありません。てか興味ありません。


『お兄ちゃ~ん?』


 何か俺を呼んでいる気がするが無視。

 今、画面の中で俺の嫁が連続コンボの記録更新中なんだから声掛けるんじゃない、麗佳!


『ね~え~?お兄ちゃ~ん?』


「あんだよ!」


『一緒にお風呂入ろうよぅ~?』


「入んねぇよ!アホか!」


 あからさまな誘いを無視し、レイナちゅわんに没頭する俺。

 最近の麗佳はマジで頭おかしい気がする……。

 思春期真っ只中で男に目覚めたか……?

 なら真っ当に、血の繋がっていないお前の事が好きな男子学生と付き合ったりイチャイチャしたりをしなさい。

 お兄ちゃんを巻き込まないで。お願い。


『ね~え~?お兄ぃちゃ~ん?』


「だからなんだよ!今忙しいんだっつの!」


『麗佳の胸~、なんかぁ、シコリみたいなのがあるんだけど~、見てくれないかなぁ~?』


「・・・」


 もう、無視しよう。

 どこに中3妹の胸のシコリを触診する高2の兄がいるんだよ……。

 そういうのは二次元だけで十分だっつの……。


『YOU WIN!!』


「おっしゃああああ!!20連コンボ決めたったぜええ!!!レイナちゅわん最高っ!!!」


 俺はテレビゲームの電源を切り、こっそりと二階の自室へ隠れるように引き上げた……。





◆◇◆◇





 取り合えずベッドへダイブする俺。


(……あの『夢の中』での出来事……あれって夢じゃあないよな……)


 なんだかナゾナゾみたいな事になってはいるが、これ以外に表現しようが無い。

 俺は思考する。


 制限時間90分。

 具現化の力。

 そして具現化する事により、減っていく『目盛り』。

 具現化出来るものと出来ないもの。


 まるで、誰かが意図的に仕組んだゲームのルールの様。


(……まさか『未来』のゲームソフト……て事は無いよなぁ……あの音楽CD……)


 テレビアニメやネットゲームでよく見るMMORPGってやつ?

 何かそんな感じの印象がめっちゃ強いんだけど……。


(……でも『ゲーム』にしちゃあ、目的もはっきりしねぇし、何でもありな感じがえげつなさ過ぎる気がするし……)


 しかもあれだけレイナちゅわんにズタズタにされても死なねぇなんて、そもそもゲームとして成り立たねぇだろ……。

 てかそんな凄ぇゲームが秘密裏に発売されてて、あんなアキバのジャンク屋に放り投げられて破格の値段で売っているってのもおかしな話だし……。


(……やっぱ、現実的に考えて……ただの『夢』なんかなぁ……)


 もしくはあの音楽と、このやたらとデカイヘッドフォンとで催眠電波みたいなのが飛んでて、直接俺の脳に働き掛けてるとか?

 ……だとしたらなんか怖ぇな…。俺の脳がイカレちまうかも知れないし……。


(……もう使うの止めとこうかなぁ……。でもレイナちゅわんには逢いたいしなぁ……///)


 と、またドアが開き麗佳が頭を拭きながら部屋に入って来る。

 ……てか同じ部屋なんだから当たり前なんだけど。


「もう~…お兄ちゃん?部屋に戻るんだったら戻るって言ってってよぅ~…。私お風呂場で一人で喋ってたよぅ~……。ぶーぶー」


 頬を膨らませながら麗佳は自分の机に座りドライヤーで髪を乾かし始める。


「部屋に戻りますた」


「……今言ったって仕様が無いじゃんよぅ~……。もう……お兄ちゃんの馬鹿……」


 ちらっと俺の方を見ながら小さく『馬鹿』って言った麗佳。

 仕草がいちいちアレで色々と面倒臭いっす……。


「あ、そうだ、麗佳ぁ?今度何枚かビジュアル系のCD貸してくれよ。お前、いっぱい持ってるだろう?」


 あのウォークマンで普通の音楽とか聴いたらどうなるんだろう……。

 もしかしたら聞く音楽毎に違う夢の世界に行っちまうとか?

 ……てか俺、やっぱり色々検証したい欲望に負けて、あの機械で遊んじゃうんだろうな……。


「えー?……良いけど……。じゃあ、一つだけお願い聞いてくれる?」


「なんか嫌な予感するから嫌だ」


「麗佳にちゅぅ……今、嫌だって言った?お兄ちゃん……」


 先制攻撃、成功。

 俺はクルッとうつ伏せの状態になり枕に顔を埋める。


「もう……お兄ちゃん?どうして最近、麗佳の話をまともに聞いてくれないの?」


 髪を乾かし終えた麗佳が近付いて来る足音がする。

 てかお前の話をまともに聞いてたら、お兄ちゃん、お前にお召し上がりになられちゃいそうで何か怖いんだもん。


『ちゃんと聞いてもす』


 枕に顔を埋めたまま答える俺。

 顔を合わせたら……やられる!


「本当?……あ、お兄ちゃん、ちょうど良い格好してるね…?マッサージでもしてあげようか?麗佳こう見えて、上手なんだよぅ~?」


「やめてください!」


 ガバッと起き上がる俺。

 お前の口から『マッサージ』っていう言葉を聞くと、何かすっげぇ怖ぇんだよっ!

 公職選挙法的なやつに抵触しちゃいそうで! ※公職選挙法は関係ありません


「ちぇ~……。つまんないの……」


 くるっと踵を返した麗佳はなにやらお肌のお手入れを始めた模様。

 セーフ。俺の貞操、妹なんかに渡してやるもんかっての!


 そんな地獄のような毎日が。



 我が家では続いているので御座います……。



















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