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喪失夢幻のアトラクタ  作者: 木原ゆう
第一章 真性異言のヘミシンク
6/17

06帰還+《reTurn》=歓喜


 その後討論する事、約20分。


「……でありますので、以上の理由から俺はレイナに裸エプロンを着て貰いたいという結論に至った訳であります」


 決まった……。流石にここまで俺の想いを心を込めて熱弁すれば、我が嫁も理解してくれるだろう。


「……貴方、さっきからずーーっと『裸エプロン』の話しかしてないわよね……。はあ……」


 なんか頭を抱えちゃったレイナ。

 そんな仕草もストライクっす///


「……とにかく、ここが『貴方の夢の世界』だって事は何となく分ったわ…。どうしてそんな場所に私が飛ばされて来たのかは謎なんだけど……」


「だから俺が『具現化』したんだって」


「それが意味分んないって言ってんのよ!全く……」


 怒るなよー。

 まあツンデレだから仕方ネェが……。


「……まあ、貴方の言う事は、ある程度は本当なんでしょうけど。…その、貴方の『不死身の身体?』…それの理由も説明出来るでしょうしね」


 ……まあ、夢の中だから死にゃにゃいよな……。


 俺はふと頭上を見上げる。





00:00:48

□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □





「あ。もう時間ネェじゃん」


 残り50秒弱。

 俺の予想では音楽CDの再生が止まれば現実の世界に戻れる計算。


「時間?」


 レイナが俺の視線を追う。

 でも何故かキョロキョロしている。


(……あー……多分あれ、見えてネェな……)


 という事は『時間』も『目盛り』も俺にしか見えないって事だろうか。

 でも一つ疑問が残る。

 俺が無事(?)現実の世界に戻れたとして。

 レイナは一体どうなるのだろう。

 この『夢の世界』は?このまま存在し続けるのか?


「……あ。ごめんレイナ。お別れの時間だ」


「?……貴方、何を言って……?」


 ……3、2、1……。





00:00:00

□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □





 俺の身体が光に包まれる。

 そしてそのまま俺は。


 意識を失った……。






◆◇◆◇






 俺は目を覚ます。


「……ん……んん……」


 何かスゲェ頭痛ぇ……。

 俺はこめかみを押さえながらも起き上がる。


「……あ……戻ってきた……のか?」


 膝の上に置いたままのウォークマンに視線を落とす。

 デジタル表記が『00:00:00』を差したまま点滅している。

 やっぱり……。

 俺の検証は正しかったみたいだ。


『制限時間90分』=『音楽CDの再生時間90分』


 理屈は分らねぇが、そういう事にしておこう。

 そして俺は、一応身体に異常が無いかを確認する。


「……うん。穴も空いてないし……お腹も傷とか付いていないし……」


 やっぱり夢の出来事は所詮は『夢』という事か。

 でもまあ、逆に現実でも現象が起こってしまう方が厄介だろうから俺的にはこっちの方が助けるけど。


「ああ……///それにしてもレイナちゅわん……///かわゆすだったなぁ……///」


 ヘッドフォンを外しながら夢見心地でいたら急に部屋のドアが開いた。


「……あ、お兄ちゃん、帰ってたんだ……なあに?その恍惚とした表情は……?」


「げ……。麗佳れいか……」


 妹の麗佳が帰って来ちまった。

 そして兄の変な表情を見られてしまった……。


「お兄ちゃん、玄関の鍵、また開けっ放しになってたよぅ?駄目でしょう?ちゃんと鍵閉めておかないと、どんな変態さんが乗り込んで来るか分んないんだから……」


 顔を膨らましながらも兄を叱る妹。

 飯島や成瀬がこの現状を見たらきっと羨ましがるんだろうが……。


「ああ、悪ぃ悪ぃ……。ちょっと軽く音楽聴いてたら、つい眠りこけちゃって……」


 俺は適当に誤魔化す。

 嘘は言っていないよな?俺。


「あ、それ、昔流行ったっていう『ウォークマン』じゃない?へぇ~……珍しいの持ってるね~お兄ちゃん……。買って来たの?」


 麗佳は目敏めざとく俺の膝に置かれたウォークマンに視線を移す。


「あー……まあ……ジャンク屋で激安だったからつい、ね……」


 うーん。

 俺は悩む。

 元々、麗佳に兄としての威厳を示すためにプレゼントしようと買って来たこのウォークマン。

 袋から出して再生してみたのは、壊れてないかチェックする為だけだったのだが…。

今になって妹に渡すのが惜しくなった俺。

 だって、すっげぇ面白い事になってんだもん。この機械。


「ふーん……。まあいいや……。あ、そうそう、冷蔵庫に貼ってあるお母さんのメモ、もう読んだ?」


 ほっ……。さして興味を示さないでくれたか……。

 俺は立ち上がり、ウォークマンを机の引き出しに仕舞う。


「ああ、今日帰りが遅いんだって?父さんも何時もの時間って書いてあったから、また二人っきりの夕食になっちまうよな」


「……う、うん……。そうだね……」


 ……ホラ来た。最近の麗佳の反応。

 少し俯きながら、顔を赤らめながら、こっちをチラ見して来る姿勢。

 手とか後ろにちょっと組んじゃったりとか。

 二次元ならば完全にフラグが立っている状態。

 ……正直に言おうか。


 気持ち悪いっす。


「夕飯作ってくれるんだろ?冷蔵庫に入ってるって書いてあったから麗佳頼むなー」


 そう言い俺は麗佳の脇をすり抜け下のリビングへと階段を降りる。

 最近は同じ部屋に長時間いるのが、正直キツイ。

 常に麗佳の視線を感じるし、あいつも勉強に集中していない感じもする。

 俺も気持ち悪いし、お互いに良く無いだろうそれじゃ……。


「あ!お兄ちゃ~ん!勉強見てもらいたい所があるんだよ~!」


「大丈夫!インターネットで調べれば、大抵のヒントは載ってっから!ガンバ、麗佳☆」


「もう~……!お兄ちゃんのバカぁ!」


 お決まりの台詞が背後から聞こえて来たが無視。


 麗佳よ。確かにお前は可愛い。中学でお前に告って来た男子学生が何人もいる事も知っている。


 だがな麗佳よ、お前の兄はな……。



 三次元にこれっぽっちも興味が無ェんだよ。



















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