04氷剣+《iceSword》=謙病
俺はイメージする。
この広大な平原。見るからにファンタジーチックな夢の世界。
そして俺には『具現化』の能力。え?俺、能力者として転生したん?
でも多分、半分正解で半分間違いとも思ってみる。
『転生』したんじゃない……。ここは単なる『夢の世界』。
きっとあの音楽CDのせいなんだろうな。
でも今はそんなんどうでもいい。
俺が『具現化』してみたいもの。
ずっと憧れていたものが二つある。
今、俺はそのうちの一つをイメージする。
「・・・」
……本当に『具現化』出来るのだろうか……。
検証の結果、具現化するには『イメージ力』が深く関わっていそうな感じ…ってのが俺の結論。
てか何で俺は、こうも集中力が続かない?何でいつも余計な事とか考えちゃうんだよ!集中しろよ、俺!
「・・・」
なんか、手の部分がちょっとずつ冷えて行く感覚。
あれ?いけそう?いっちゃいそう?
次の瞬間、お決まりのパチンッという音と共に俺は自身の具現化したものに目を奪われる。
「き、、、ききき、、、、、」
パキンッ、パキンッという音と共に現れた巨大なそれ。
「キタああああああああああああああああああ!!!!氷の大剣キタあああああああああああ!!!!」
ずっとハンティングネットワークゲームの中で、ゲームキャラに使わせて来た武器。
俺の大好きな、愛して止まない、夢とロマンと希望がいっぺんに詰まっている武器。
『氷剣フヴェルゲルミル』。
「ちょっ!!マジッ!!出てキタよっ!!スゲェ!!何この再現性っ!?テンション上がるやろっ!!!」
興奮する俺。
鼻息とかヤヴァい。
てか通算500時間は使っていたであろうこの大剣。
俺のイメージ力が半端ネェのは俺が一番良く分っている。
「うわ……!何この感動……!あ、あれ……なんか涙出てきちゃった……。俺きめぇ……」
涙を手の甲でふき取りながらも素振りしてみる俺。
特に重さは感じないが、振り抜く時のスピードがやたらと鈍く感じる。
こんな所まで再現性が高いのな。
「いやマジでこんなん具現化出来るんなら、俺どんどん武器とか作っちゃうよ?神様?」
とか調子付きながらも上空の目盛りに視線をやる俺。
00:53:36
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「………………あれ?」
俺は目をこすりながら二度見する。
「………………なんで?」
ひい、ふう、みい……九つ。
「……九つ目盛りが減ってる?」
あれ?確かさっきまでは『具現化』一個に付き『目盛り』が一個減るんじゃなかったっけ?
いきなり俺の渾身の説が覆されちまった……。
俺は氷の大剣を地面に刺し、また地べたで胡坐をかき思案する。
うーん……。
てことは、具現化する『種類』によって消費する目盛りが変わって来るって事か…。
今んところ、なんて事無い、現実にも存在するものだったら消費目盛りは一つ。
俺がイメージし切れない複雑なものなんかはそもそも具現化出来ない……。
「……でもって、俺がイメージ出来る『現実には存在しないもの』は、具現化は出来るが、消費目盛りが激増する、ってか……」
これぞファンタジーだなおい。
もはや『目盛り』と呼ばずにSPとか呼んじゃった方がいいんじゃね?
てかそのうち『勇者』とか『魔王』とかも出てくんじゃね?この勢いなら。
まあ、魔王出てきたら、俺、ソッコで逃げるけどね☆
「……氷の剣が9目盛りで具現化出来るんなら……氷魔法とかも具現化出来んのかな……」
俺は立ち上がり、いつもネットでやっているMMORPGの魔法使いの様にポーズをとり念じてみる。
……てかこれで本当に魔法使えたら、俺一生ここで暮らして行きたいんですけど。
俺は氷魔法をイメージする。
……あー、何か詠唱とか唱えちゃった方がそれっぽい?
いつも飯島とか成瀬達と詠唱ごっこしてるから、いくらでも台詞とか思い付くんだけど。
やってみる?
「悠久の時を越えし氷の女神よ今ここに!!《アイス・ブリザード》!!」
パチンッという音と共に俺の周囲に猛吹雪が発生。
「キタあああああああああああああ!!!氷魔法出たああああああああああああああ!!!」
数秒で吹雪は止み、後に残されたのはカチンコチンに凍った周囲の平原。
これマジやべぇ…。俺のテンションメーター振り切りっぱなし。
「……おっと。目盛りは……」
俺は頭上を確認する。
00:42:51
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「……ええと……確か残りが目盛り10個だったから……3つか。」
意外に少ない感じはしたが、それは多分一回具現化したら効果が消失するからなのかな……。
この氷の大剣みたいに『残るもの』じゃなければ『現実には存在しないもの』でもそこまで目盛りを消費しないで済む、とか?
「……どちらにせよ俺のテンションアゲアゲなのには変わんネェなこりゃ……」
氷属性マニアな俺にはこの夢のような(夢だけど)光景に目がキラキラし過ぎて目からビームとか出そうな勢いっす。
「いやあ、でも夢が叶っちゃったなぁ……。『氷の剣』と『氷魔法』…。これだけは俺のゲーム人生の中でも外せない要素だったからなー……」
ちょっと疲れた俺は平原に大の字で横たわる。
透き通るような青空。
雲ひとつ無い青空。
さっき唱えた氷魔法で周囲が凍ってるからちょっと寒いけど気分はアゲアゲ。
「あーあ……。あとは美少女ゲームに登場するキャラクターとかも具現化出来れば良いのになぁ……」
でも流石に無理だろそれは。
生き物系は具現化出来ないのはすでに検証済みだし。
俺の一番のお気に入りは今やっている美少女格闘ゲームに登場する白銀の鎧に身を包んだ女剣士の子。
綺麗な長い金髪を振り乱しながら細いかっけー剣を振り回すその姿は正直ヨダレもの。
性格はツンデレ気味で騎士道を唱えながらも、相手に負けたらいきなりデレたりして(でへへ)。
あの鎧の下とかもアドベンチャーパートで何度拝ましてもらった事か(でへへへ)。
やっぱ二次元最高だよな……。三次元はウルサイし面倒臭いし金掛かりそうだし……。
パチンッ!
「………………今、パチンッつった?」
俺は起き上がる。
今、音鳴ったよね?
俺は辺りを見回す。
と、ふと背後に気配を感じた。
振り向く俺。
そして絶句。
何故ならそこで―――。
―――俺の理想の女性が『ニコッ』と笑い掛けて来たから。
00:31:22
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