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喪失夢幻のアトラクタ  作者: 木原ゆう
第一章 真性異言のヘミシンク
11/17

11学祭+《scHoolfestival》=才楽


 俺は目を覚ます。


 枕元に置いてあるウォークマンのデジタル表記が『00:00:00』を示し点滅している。

 俺は伸びをしながらもヘッドフォンを頭から外す。


「んん………、と…。あー……、今日も嫁達とイチャイチャして楽しんだなぁ///」


 今日は二人目の二次元嫁のララちゅわんも具現化に成功したし。

 この調子だと、俺の5人の二次元嫁全員を具現化出来る日もそう遠くはないな!


 俺はこめかみを押さえながらも部屋を出、階段を降り、リビングへと向かう。

 何か喉渇いたし。確かコーラが冷蔵庫で冷えてるはず……。


「……にしてもこの頭痛……やっぱ脳とかに負担が掛かってんだろうな……」


 リビングまで降りてきた俺は冷蔵庫を開け、コーラの蓋をプシュッと開ける。

 今度『ダイブ』する時は前もって頭痛薬とか飲んでおこうか……。

 てかそこまでして嫁に遭いたいか、俺よ……。


「遭いてぇよ!焦がれてるよ!俺の心はお前らのもんだ!」


 腰に手を当てコーラの缶を上空にかざす俺。

 どう見ても逝っちゃってる高校生。

 いいもん。俺変人だから。


「………ゲフッ」


 コーラを飲み終えた俺は頭痛薬を探すため、救急箱を押入れから取り出す。

 てかコーラ飲んで鎮痛剤飲んだらいけないのかも知れないけど、俺は気にしないっす。


「……ん……、と。さあ、疲れたからちょっと休もうー……」


 リビングのソファにダイブしそのまま眠りに付いてしまった俺。

 てかさっきまで寝てたんだけどね。

 でも夢の中であれだけ動いてるんだから『寝てた』とは言わないんかな……。


 そしてそのまままどろみの中へ・・・。





◆◇◆◇





「……ぃちゃん……」


 ……ん、何だ……?


「お・に・い・ちゃ・ん!」


 目を開けると、目の前に麗佳の顔が。


「うおっ!?近ぇよ!あんだよっ!!」


 いつの間にか帰って来ていた麗佳を押しのけ、飛び起きる俺。

 ……こいつ絶対今、俺にキスしようとしてただろ……。アブネェ……。


「『何だよ!』じゃないでしょう?こんな所で寝て……。全くだらしないお兄ちゃんなんだから……」


 買い物袋をテーブルに置き、台所で手を洗い始めた麗佳。

 何だ……ちょうど今、帰って来たんか……。


「お兄ちゃん、何か食べたぁ?」


「あ?……あー、そっか……。もうこんな時間か……。うんにゃ、なんも食べてにゃい」


「あ、じゃあちょうど良かった♪ピザ買って来たから一緒に食べない?今日、お夕飯用意してないみたいだし、お母さん」


 買い物袋からお惣菜コーナーで買って来たと思われる大きめのピザを取り出し電子レンジに入れる麗佳。


「もち、喰うっしょ。サンキューな、麗佳」


 ソファから起き出した俺はそのままテーブルに付く。


「う、うん……。良かった……喜んで貰えて……///」


 何か赤くなっている麗佳を無視しテレビリモコンを操作する俺。

 気付かない振り、気付かない振り……。


「あ、そうだ、お兄ちゃん。明々後日の連休って予定空いてる?」


「へ?……あー、別に、空いてるけど……」


 ……何か嫌な予感すんな……。


「その日さぁ、北高の学祭があるんだって。一緒に見に行かない?」


「……お前と一緒に学祭に行きたい奴なんか腐るほどいるんだろ?何故兄を誘う……」


「えー?良いじゃんー。……最近お兄ちゃん、私を避けてない?前だったら二つ返事で麗佳のお願いOKしてくれてたのにぃ……」


 温めたピザをお皿に用意しながら、麗佳はジト目で俺を睨んでくる。

 俺は目を逸らしながら取り分けられたピザに手を伸ばし、頬張る。


「気のせいじゃね?(もぐもぐ……)」


「……そうかなぁ……。あ、じゃあ決定ね?朝の10時に始まるみたいだから、9時半までには起きて行こうね?私が起こしてあげるから、ね?」


「あー、ああ。わかった。わかったからそれ以上顔を近づけるな麗佳……」


 麗佳のおでこを空いている手で押さえつけ。


 俺はもう一枚のピザに手を伸ばしたのだった……。






◆◇◆◇





 学園祭当日。


 俺は9時半ちょうどに麗佳に無理矢理抱きつかれ起こされ(わざとらしく胸とか押し付けてんじゃねぇよ中学生……)、母さんの作った朝食を早食い選手権並みに平らげ、麗佳と共に北高へと向っている所。


「ホント久しぶりだよねぇ~!こうやってお兄ちゃんと二人っきりで出掛けるのって……」


 嬉しそうにスキップする麗佳。

 こういう所は中学生らしくて良いのかも知んないけど。

 朝の『あれ』は無いだろう、麗佳よ……。


「あー?お兄ちゃん、今えっちな事考えてたでしょう?」


「考えてません」


「うっそだあ!麗佳には分るもん!お兄ちゃんの考えてる事なんて」


 なら心理学部にでも入って臨床心理士とか目指したら良いんじゃね?

 そして実の兄に恋心を抱いている自分の心理とか研究したら良いんじゃね?


 俺はそんな事をひっそりと考えながらものんびりと北高への道のりを歩く。




 北高は俺が通う南高よりも実は自宅に近い高校だ。

 偏差値は南高よりもちょっとだけ下らしい。

 だから俺は自身の偏差値に合った南高を選んだのだが、今となっては別に北高でも良かったんじゃね?とか思ってみたり。

 まあ両校とも大して距離に差があるわけでは無いのだが、毎日の通学が少しでも近いに越した事は無いからな。


 そしてあっという間に着いちゃいました。


「あ、お兄ちゃん!ほら、もう軽音部の演奏が始まってる!体育館に急ごう?」


「へーい」


 腕を捕まれ強制連行される俺。

 噂ではここの軽音部に人気のビジュアル系を真似した学生バンドがあるんだとか。

 南高にも噂が届くくらいだから、それなりに有名ではあるんだろうな。

 俺も嫌いじゃないから別に良いんだけど……。


「ほら!お兄ちゃん!走って!」


「へーい」


 走るのは勘弁の方向で……。







◆◇◆◇






 その後も麗佳に腕を取られ。

 屋台の食べ歩きやら吹奏楽部の演奏やら演劇部の出し物やら中途半端なお化け屋敷やらに連れ回された俺。

 正直もうヘトヘト。いい加減開放してくらはい……。


「はい♪お兄ちゃーん♪」


 ベンチでぐったりしている俺に自販機で買ったアイスを手渡す麗佳。

 てかお前やっぱ彼氏作れや。

 きっと楽しいぞーデートとか。

 俺みたいに三次元に全く興味の無い駄目男とか連れ回さないでさぁ……。

 てか実の妹に二次元も三次元も無いんだけど……。


「……あれ?ねえ、お兄ちゃん…。あの人達、何をやってるんだろうね……」


「ああ?」


 俺はアイスを受け取りながらも麗佳の指差す方向に視線を向ける。

 そこには北高の学生服を着た男女のカップルが、周りを気にしながらも体育倉庫に忍び込もうとしている姿が。


「あ。入っちゃった…。…ねぇ、お兄ちゃん?……あれってもしかして……///?」


 なんか期待の目を俺に向ける麗佳。

 最近の中学生女子って皆こんなんなのかな……。


「ねえねえ?見に行ってみようよぅ?なんか凄い事になってるかもよ?……きゃあああ!///」


「おい」


「ほうら、アイスなんか良いから!行くよ、お兄ちゃん!」


「ちょ、おい!いいよ!ほっとけよ!何でわざわざそんなのを見に行かなきゃいけねぇんだよ!」


 ぐいぐいと引っ張る麗佳。

 あー、もう嫌だ……。何で俺が妹と覗きなんか……。


「(しーー…。お兄ちゃん)」


 しーじゃねえよ!もう帰ろうよ!俺やだよ!見たくねぇよ!


 無理矢理引っ張られながらもとうとう体育倉庫前に到着する俺達。

 当然鍵は掛かってはいるが、下の通気窓みたいな奴?そこが少し開いたままになっている。

 多分ここでなにやら怪しい事をやっているカップルも、この通気窓から体育倉庫に入ったんだろうな。


「(……どう?見える、お兄ちゃん?)」


 麗佳が俺の耳元で囁く。

 なんでちょっと艶っぽく囁くんだよ!いいよ!解説とかいらねぇから!


 俺は仕方なく目を凝らし学生カップルを探す。


「(……あ。いた)」


 体育倉庫の奥。

 ちょうどマット置き場の前。

 不自然にマットが乱れているが、多分下に敷くためにずらしたのだろう。


「(ねえ!どうなってる!?どんな感じ!?どんな体位!?)」


 表現には気を付けようね☆中学生。


 俺は更に目を凝らす。


 そこには一糸乱れぬ姿で重なり合う男女の姿………ではなく………。


「(………………え?)」


「(ねえ!どうなってるの!?教えてお兄ちゃん!?詳しく教えてっ!!)」




 そこには二人の高校生が。


 あの大きな『ヘッドフォン』を頭に付けながら。


 あの昔懐かしい『ウォークマン』をマットの上に置きながら。


 横たわっているように、俺には見えましたが?













「(ねえ!お兄ちゃん!?どんな体位っ!?)」


















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