10検証+《verificaTioN》=小剣
「やべぇなー……。あっという間に半分以上も『目盛り』を消費しとる……」
俺は頭上の目盛りを確認する。
01:14:58
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「ひい、ふう、みい、……やっぱそっか……」
減っている目盛りの数は17目盛り。
レイナを具現化するのに必要な目盛りは7目盛りなのは何度も検証しているから確認済み。
残りは10目盛り。
という事はたぶん、ララで7目盛り消費、回復魔法で3目盛り消費という事だと思う。流れ的に。
(……ゲームキャラで7目盛り、魔法全般は3目盛りで統一なのかな……)
今までも色々な魔法を具現化してみたが、やはりどれも3目盛りだったし。
……取り敢えずもう一度、まとめてみっか……。
俺は『紙』と『ペン』をそれぞれ具現化する。
それぞれ1目盛りずつ消費され具現化される。
01:14:25
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と、俺のやっている事が気になるのか、向こうの方から二人が俺に寄って来る。
「貴方、こんなに可愛い女子二人を放っておいて何一人でシコシコやってんのよ」
シコシコはしてねぇと思われ……。
しかも一人は『獣人族の』が付くお。
「……ふニャぁ……。どうして私はこんな所に居るんだニャぁ…?ここは一体何処ニャ?」
ララがキョロキョロしながらもレイナの後にくっ付いて来る。
あとでたっぷり可愛がってあげるから、待っててね///
「レイナ。俺忙しいから説明したげて」
「えぇ?私が?……なんで私がそんな面倒くさい事を……ぶつぶつぶつ……」
なんかふて腐れてはいるが、俺は既にレイナの『全て』を知っている。
てか『知っている』から『具現化』出来たんだけどね。
文句を言いながらもララに丁寧に説明を始めるレイナ。
それでいい。それでこそレイナだ。
俺の知っている、俺の大好きな、二次元嫁一号。
さ、まとめ、まとめ。
俺は紙に今までの具現化に対する検証結果を書き出す。
【具現化出来たもの(NEW)/必要目盛り数】
・氷剣フヴェルゲルミル/9
・氷魔法:アイス・ブリザード/3
・火魔法:名前忘れた/3
・土魔法:名前忘れた/3
・風魔法:名前忘れた/3
・雷魔法:名前忘れた/3
・回復魔法:ガンメン・ヒール(笑)/3
・レイナ・ノーザンヴェルネス(女剣士)/7
・ララ・ネルフェリング(獣人族)/7
・その他現実の世界に存在するもの/1
【具現化出来なかったもの(NEW)】
・氷剣フヴェルゲルミル以外の武器全部(今の所試したやつ)
・巨大化の魔法
・女体化の魔法
・その他現実の世界に存在するが俺のイメージが及ばないもの
「……こんな感じかなぁ……」
俺はペンを地面に置き、頭を掻く。
一番意外だったのは『武器』の具現化だ。
なんせ氷属性最強の大剣である『氷剣フヴェルゲルミル』が初っ端から具現化出来たんだ。
なら他の武器だって具現化出来るものだと高を括っていた。
でもひとっつも具現化できねぇし。
俺は頭の後ろに手を回しながら、そのまま平原にごろんする。
「なんでだろうなぁ……。フヴェルちゃんが具現化出来て他が出来ない理由……」
強さ、じゃないよな。具現化に『強い』『弱い』は関係ねぇもんな、多分。
じゃあやっぱ『イメージ』か……。
俺はやり込んだハンティングネットワークゲームの事を思い出す。
最初は当然超弱い『初期装備』からのスタートだった。
で、モンスターを倒して素材集めて強化して。
強化した武器よりも強い武器を手に入れたらそっちに鞍替えして……。
……ん?鞍替え?
……あー、で、またその武器を強化して、もっと強いのを手に入れたらまた武器を変えて……。
「……イメージ力……武器の強化……鞍替え…………あ。」
……そうか。
俺は起き上がる。
確かにあのハンティングネットワークゲームは何百時間もやって嵌ったゲームには違いないけど。
何度も何度も素材で強化したり武器を変えたりしてたから、俺の『イメージ』が『具現化』まで結びついてないんだ、きっと。
確かに一回武器を強化して、その次に強化したり強い武器を手に入れるまでの『使用時間』って言うのかな……そういうのはほんの数時間程度だったような気がする。長くても10時間とかそのくらいだろう。
で、最終的に俺好みの『氷属性』が付加されていて、しかも『大剣』のカテゴリーで最大の攻撃力を持つフヴェルちゃんに出逢ってからはそれ一本に絞っちまったし。だって一番強いんだもん。他の武器には変えられないっしょ。
「……なるへそ。だから俺はフヴェルちゃん『だけ』具現化出来るんだー……。納得」
氷剣フヴェルゲルミルを手に入れるまでに俺が費やしたゲーム時間は確か100時間くらいだったと思う。
その間に何十回と武器を鞍替えしてきた俺。
で、フヴェルちゃんを使用してからもハンティングゲームを延々と続けて500時間以上は遊んだ筈だから……。
一個の武器を400時間は使い続けた事になるな。
しかもこの剣、あまりにもかっくいいから『プレヴュー機能』で何度も拡大してその全貌を拝ましてもらったりとか。
プラモデルで『氷剣フヴェルゲルミル』が出ようものならば涎垂らしながら玩具屋に買いに行ったりとか。
てか俺の部屋のプラモデルのショーケースん中に飾ってあるし。1/20モデルのやつが。
そら『イメージ』湧くわっつの。
「あー……じゃあ『巨大化の魔法』も『女体化の魔法』も同じ理屈かぁ……」
何百時間も嵌ったMMORPG。
格闘ゲームみたいに派手な操作とかは無いテンプレものの王道魔法RPGだったが。
そこに登場する魔法には『巨大化』も『女体化』も存在しなかった。
だから俺が『イメージ』出来なくても無理は無い、という事か。
「いやあ、納得。……じゃあやっぱ何でもかんでも『具現化』出来るっつー訳じゃあ無いんだな……。よく出来てるよなーこの『夢の世界』……」
人の『記憶』と深く結びついている、とでも言うのだろうか。
あの『バイ〇グラ』みたいな名前の音響技術とかと何か関係があるのかも知れないな……。
あのやたらとでかいヘッドフォンにも何か秘密とかあるんだろうし…。
「アオイ?終わったけど。こっちの説明」
寝転がる俺を上から見下ろしながらもそう答えるレイナ。
「レイナちゅわん、今度スカート穿かせて具現化してみようか」
「はあ?……どうしてよ?」
そんなん決まってんだろ。
「この位置からだとスカートを穿いてくれていた方がパンtぶぎゅっ!!」
「最っっ低!!!」
またもや顔面に、今度はレイナのおみ足がめり込みました。
「行こう!ララちゃん!こんな変態に構うとロクな事が無いわよ!」
「……に、ニャぁ……。でも、レイナ?…なんであいつは顔が潰れても生きていられるのニャ……?私には何が何だか分らないのニャぁ……」
俺を置いてどっかに行こうとするお二人さん。
てかさ、レイナよ。
そこ説明しないで、一体何を説明してたんすかマジで……。