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銀の月  作者: 鎖綾
真実と嘘
6/10

学院と部屋

「起きろ、朝だぞ。」


 トルさんの声で目覚めると、昨日のようにきちっとした格好をしたトルさんと目があった。


「ししょぅ、おはよ…ございます…。」


 いつもより、頭がぼうっとしている。やはり昨日は相当疲れていたようだ。


「早くしろよ。今日からお前は学生寮に入らなきゃならんからな。早めに出るぞ。」


「ふぁい。」


わたしはのろのろと立ち上がって毛布をたたんだ。そして、持ってきた荷物をを持つとトルさんが「時間がないから転移使うぞ。」と言いつつ私の手をつかんだ。


「よし、『転移、魔術学院!』」


一瞬の後、私とトルさんの姿その場から掻き消えた


**********


「ここが【アダマンタイテ王立魔法学院】だ。」


目の前にある建物は王城ほどの大きさがあった。わたしがびっくりして目を見開いていると、苦笑したトルさんが、


「生徒の寮もあるし、研究棟もあるからな。とても広いんだ」


と、少し誇らしそうに付け加えた。


「…時間がないからさっさと行くぞ。」


「はいっ。」


そしてわたしとトルさんは学院の中に入っていった。


 受付らしき場所に着くと、「今日から転入するものだが。まず荷物を置かせたいので学生寮の方にこの子を案内してやってほしい。もし忙しいのであれば、部屋さえ教えてくれれば案内は私がする」と受付の人に言った。受付の人は


「ああ、昨日連絡にあった方ですね?すぐに案内させていただきます。」


と、にこやかに応じた。


「ええっと、ステラ・セックアルゲ・オリハルーさんですよね?」


「はい、そうです」


「確認が済みましたので、すぐに案内をさせていただきます。」


受付の人が歩き始めたので、わたしは急いで荷物を持って後について行った。


**********


「ええっと、167、168、169…ここですね。」


 受付の人は169と書かれた部屋で足を止めた。どうやらここが私の部屋になるようだ。


 わたしが「案内してくれてありがとうございました」と言って部屋に入ると、目の前に黒いローブを着た人が立っていた。相部屋の人だろうと思い、私があいさつしようとするとその黒いローブを来た人が、


「自己紹介は不要だ。『ルーナ・セックアルゲ・オリハルー』」


と言った。


「!?」


 何故わたしの名前をこの人物は知っているのだろうか…?


 わたしがびっくりしていることに気づいてるのかいないのか、黒いローブを着た人はしゃべり続ける。


「私の名前は、エスクリヨール・ノウェオブス・コクヨウ、エスクと呼んでくれ。年齢は17。特別クラスの者だ。君のことは相部屋になる関係でソールから一足先に聞いている。…ほかに質問は?」


…聞きたい事がありすぎて、逆に聞きたい事が分からなくなってきた。…まずは、トルさんの二の舞を踏まないために…!


「ええっと、女の人…?」


「…」


 絶対呆れられてる…。相部屋なんだからありえないはずだけどっ。やっぱり声低いし、髪が短いしっ。でも、もし男の人だったら困るし…。その辺ははっきりさせとかないとっ。


「女だ。…その事で話がある。」


エスクは、少しためらいながら言った。


「…?はい、なんですか?」


「特別クラスにいる時は私を『男』として扱って欲しい。」


「…!」


「私は髪が短いし、話し方も男っぽい。だから、皆私を男だと思っている。そしてそういう風に接してきた。だから今までの関係を変えたく無い。幸運にもこの学院は同じ部屋でも個室は分かれているから男女が同じ部屋でもおかしくは無い。だから、頼む男として扱って欲しい。」


エスクが言う『頼み』少しおかしなものだった。しかし分からない事も無い。…誰だって今まで対等に接してきた友人に、接し方は変えて欲しくは無いはずだ。それが私がエスクに男として接することで防がれるのならわたしはそうしたい。


「うん。分かった。」


「…!有難う、恩に着る。」


その代わり…


「そのかわり、わたしと友達になって。」


ファルクさんたちに拾われてから、同年代の人と知り合う事もなかったしそれ以前の記憶もないから、ちょっと友達っていうものに憧れてたんだよね。


「それぐらい、どうという事は無い。本当に有難う。…本当は私も女の友人という物が欲しかった。私は平民なのだが特別クラスには私以外高位の貴族か王族しか居ない為に本当に対等な友人も居ない。その点、君は王族でも平民のように暮らしていたようだから対等に接せる。だから有難う。」


エスクも『女の友人』には憧れていたと分かってわたしも少しうれしくなった。


「じゃあよろしく、エスク。わたしのことはステラって呼んで。」


「ああ、分かった。宜しく、ステラ。…話しているうちに、朝食の時間になったようだ。クラスの皆は朝食を食べている間に紹介する。特別クラスは食べる場所が別になっているから案内する。」


 わたしはみんなと仲良くなれるかな?なれたらいいな。


「ありがとう。…みんなとは仲良くなれるかな?」


「ステラなら大丈夫だ。…では転移する。『転移・天使の間!』」


 わたしは仄かな期待と不安を胸に抱き部屋から転移した。

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