国王と陽炎
王城に着いたわたしとトルさんはすぐに応接間に通された。トルさんにいつ連絡したのか聞くと、師匠の家を出る直前に、魔具で連絡してあったそうだ。転移の魔術で来たはずなのに対応が早い事にびっくりした。細かい事までは説明していないらしいので、後で王様に説明しなければならないそうだ。
「国王様がいらっしゃいました。」
その声で扉の方に目を向けると、国王らしき人が応接間に入ってくるのが見えた。そして私とトルさんが座っている椅子の向かい側の椅子に座るとまず師匠の方を向いて言った。
「そなたがあの『陽炎』と称された、トル・セプテイーグ・ルベルか。」
「はい、国王陛下。お会いできて光栄です。」
『陽炎』って何かの称号みたいなものかな?後でトルさんに聞いてみよう。
「そしてそなたは…連絡にあった」
「はい、ステラです。等級は6で属性は銀なので、ステラ・セックアルゲ・オリハルーです。…オリハルーという名前には確証は持てませんけれど」
そして国王様は私を凝視した後、口元に笑みを浮かべて、
「いや、多分そうだろう。私はオリハルー皇国でそなたと似た人を見たことがある。…私の名前を知っているか?」
私と似た人って誰だろう?その前にまずい、分からない。どうしよう…
「あの、すみません。教えていただいてもよろしいですか?」
わたしが恐る恐る問いかけると、国王様は「いや、かまわないよ。」と言い、
「コンウェ・オクトアルゲ・アダマンタイテだ。よろしく、ステラ」
そう言いつつ、出してきた手をわたしは握り返した。
「ではルーナとトル、本題へ入ろう。」
「「はい」」
「ルーナの魔力等級が6しかないというのは本当か?」
これにはトルさんが答えた。
「はい。これは私と彼女で確認しました。私はまだ封印が残っていると推測しています。」
そう師匠が言葉を返すと、コンウェ国王は眉間にしわを寄せて、
「確かにそれが妥当だろう。それと髪の色は水色だが…どういうことだ?」
「これは魔力が封印されていた副作用だと考えています。」
その質問にはトルさんが答えた。わたしもおかしいとは思っていたけどそういう事だったのか…
「ふむ…。まあその件はおいおい考えるとして…。ステラ、学院には入るのだろう?」
「はい。」
「そのことに関してなのだが…王族の者は特別クラスに入らなければならないのだ。」
「特別クラス?」
「ああ、そなたの師匠のトルも在籍していたはずだ。…説明してくれるか?」
「はい。」
そしてトルさんがこっちを向き、
「特別クラスというのは、『アダマンタイテ王立魔術学院特別学習クラス』の略だ。各属性で一番魔力が多いものと王族が在籍することになる。私は火の魔力の持ち主で1番魔力が多かった時が何年かあったからな。このクラスは1年ごとに入れ替わるんだ。自分より魔力の多い者が入学して来たら通常クラスに戻される。通常と言っても、上位の方のクラスだがな。魔力が多い者というクラスの特性上貴族が属することが多いのが特徴だ。…まあ、こんなところだろう。」
と説明した。すごいクラスなんだな…。わたしはそんなクラスに入らなければならないのか…。少し前の私が聞いたら絶対に信じないだろ。
「特別クラスには、今2番目の息子が在籍している。ソールという名前で珍しい10等級だ。クラスメイトになったら仲良くしてやってくれ。…今日はいろいろあって疲れただろう。弟子入り早々大変だったな。そなたは王族なので明日から編入してもらうことになる。学園にはこちらから連絡しておくし、記憶がないことも言っておくから悪いようにはされないだろう。」
という言葉でお開きとなり、私と師匠は師匠の家へと帰った。
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「あ、トルさんさっき気になったんですけど、『陽炎』ってなんですか?」
家へ帰ってひと段落した後、私はさっき気にになった『陽炎』の事を聞いてみた。
「ああ、陽炎って言うのはなあ、火の魔術師で上位の者に与えられる称号だ。結構称号はいろいろあるし、時々増えたりするから正確には分からんが、結構上位の方だったと思う。私の年にしてみれば結構すごいんだぞ。」
「へぇー、トルさんって本当にすごい人だったんですね。」
「お前…何気なくけなしてるだろ。まあ、いい。明日は早いんだから早く寝ろ。…私も早いしな。」
「えっ…どうしてですか?」
「さっき王様から念話が来てな、明日から特別クラスの担当をしろって言われたんだ。お前が心細くないようにっていう配慮だろう。今度会った時にお礼を言っとけよ。」
国王様、気を使ってくれたんだ…。確かにいきなり知らない人ばっかりだと心細かったかもしれない。師匠も学校にいると思ったら心強いな。
「じゃあ寝るぞ。」
そして師匠は部屋を出て行った。わたしはこの部屋で寝るらしい。今日はいろいろあって疲れたな。
5秒もたたずにわたしは眠りに落ちた。