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銀の月  作者: 鎖綾
出会いと別れ
4/10

悪夢とトル

 夢を見た。その夢は辛くて悲しくて、でも幸せで楽しくて。色々な感情が入り混じって切なくなって。


 わたしが目を覚ますとぼやけたトルさんの顔があった。目をこすると透明な液体が流れていた。


「目は覚めたか。だいぶうなされていたぞ。…それに泣いていた。」


 トルさんはそういってそして頭を下げて、


「すまないっ。お前が倒れたのは私のせいだろう。無理に記憶を戻そうとしたからだな…。記憶を失っているというのはそれ相応の理由があるはずなのに軽率な行為だった。」 


 少し泣きそうになっている。


「いいんです。わたしも、もし記憶が戻ればなあっていう気持ちもあったし、少しだけでも記憶が戻ったんですから。」


と言うと、トルさんは顔を輝かせ、「よかったなぁ」と我が事のようによろこんでくれた。


「聞いてもいいか?」済まなさそうにしつつ、目は好奇心でらんらんと輝いている。


 しょうがないなぁ…

 

 そして話し始めた私がわたしの頭の中で流れた声が言っていた『オリハルー』という単語を聞くとトルさんはひどくあわてた。


「オリハルー?オリハルーだと?」


「トルさん、知ってるんですか?王家、とか言ってましたけど。」


「ああ、オリハルー公国はこの国の15代前の王の弟が作った国でその子孫が治めていたんだが…10年前に滅びたんだ。謎の爆発で国が丸ごと吹き飛んでな。」


「!」


「私の父と母もその時オルハリーにいて…帰ってこなかったよ。」


「そうだったんですか…。すみません。」


「別にいいさ。…もう10年も前のことだし。」


 そういったトルさんの顔はの顔は本当に気にしていないように見えた。


「それで?他には?」


「それと髪と瞳の色を戻すなと。」


 …王族だと知られないためにかな?


「…そうか。じゃあそうした方がいいだろうな。…また何かあったら困るし。」


 トルさんはさっきの事を心配しているようだ。確かに頭はちょっと痛かったけど。


「他には?」


 他には…


「あ、名前を言われました。すごく長くてとぎれとぎれにしか聞こえなかったですけど。」


「名前か…自分の真名というのは魔術を使う上でとても大事なものなんだ。他人に知られてしまうと操られたりする可能性が出てくるし、魔術を使うとき自分の真名もいうと効果が跳ね上がる。だから真名は家族か本当に信用している人にしか言わない。…だからお前は他人には真名が全部わかっても言っちゃいけない。」


 名前ってそんなに大事なものなんだ…。じゃあそれと一緒に聞こえた『ルーナ』っていう名前は言わないほうがいいのかな。


「さて、もう一回等級を計りなおしたら王城に行くぞ。」


「王城!?何でですか?」


「決まってるじゃないかオリハルーの生き残りがいたなんて事実を国に黙ったままでいるわけないだろう。」


 なんか、すごいことになったかもしれない・・・。あれ、そういえば…


「そういえばトルさん。さっきから口調が違いませんか?…私の目が覚めたあたりから。」


「ああ。最初の奴はよそいきの口調でこれが素だ。」


 へぇ…そうなんだ…って!


「わ、わたしトルさんにベットまで運ばれたって事ですよね!?」


「何か問題でもあるか?」


「大ありです!だってトルさん男の人じゃないですか!」


 髪も短いし。女の人は髪の毛を伸ばす風習があるこの国ではありえない短さだ。だけど、何でわたし気づかなかったんだろう。ちょっと色んなことがありすぎて頭から抜けていたけれど。


「は?私は女だぞ。ちなみに年は22。…確かに口調は女らしくないが…ここまで勘違いされたままだったのは久しぶりだなぁ。髪は邪魔だから切った。」


 …って女の人!?しかも若いし。それに髪を切った?


「ええっ、うそーーー」


**********

 トルさんが女だったという衝撃が収まらないままわたしはさっきの部屋に連れてこられた。そして等級を計った物差しみたいな魔具に血を垂らす。


「うーん…等級6か…。王族にしては少ないな。…まだ封印は全部解けてないのかもしれないと考えた方がいいな」


 記憶を取り戻せば魔力の封印も解けるかもしれないともトルさんは言った。


「けどさっきのこともあるから今はやらないぞ。」


「分かりました。」


「よし、じゃあ今すぐ王城に行くぞ。」


「…はーい。」


 もうどうとでもなれ。


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