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それぞれの気持ち

 遼達と別れた幸介は、一人帰路を歩んでいる。

 黙々と、たまに空を仰ぎ――

 思考を巡らせる。

 村石からの相談。

 自分は、何をすればいいのか。

 自分には、何が出来るのか……

 そもそも、なぜ村石は他の者達と仲違いしたのか……

 幸介は、その理由すらわかっていない事に気がついた。それを知らない事には、何の解決策も導き出せない。


(誰かに聞くのが早いんだろうけど……)


 そこでまた、考える。村石本人には、あまり聞ける雰囲気ではなかった。

 かと言って、仲違いの相手であるクラスメートに聞けるわけもない。


(どうすりゃいいんだよ……)


 結局、自分で考えるしかないのか。と、うなだれる幸介。

 が、一つの閃きが脳裏を過ぎった。


(綾瀬がいるじゃん)


 自分の彼女になら、相談を持ちかけられる。そう思ったのだが……


(待てよ……綾瀬、そういうのに疎そうだもんな)


 自分の事を棚に上げて、そんな事を思う幸介。

 と、そこでまた一つ閃く。


(霧島とか、そういうのに詳しそうだな。それに、直接ケンカした相手って事もないだろうし……)


 遼と一緒にいた優子の姿を思い出し、そう考える。

 一度浮かんだその考えは、とても良い案の様に思え、幸介は踵を返しかけた。


「と、もう戻ってもな……同じとこにいるわけないし……今日は帰るか」


 そう呟き、反転しかけた身を元に戻す。

 自分がどうすればいいのかは、まだわからない。

 それでも、出来る事を一つ一つやっていこう。

 そうすれば、きっと解決出来る。

 幸介は、自然とそう考えていた。

 乗り越えられない壁は、存在しない。

 幸介は、ずっとそう考えてきた。だから、今回だって……

 今幸介に出来る事は、〝知る〟事。だから、機を待つ事にする。

 今は、身を休める時だ。そう思い込み、幸介は何となく家路を急いだ……



○――――――――――――――――――――○



 友達との買い物。

 そして、幸介との偶然の出会い。

 全てが新鮮で、全てが楽しく思える一日だった。

 遼は、一人夕食をとりながら一日を振り返っていた。


(また、皆で遊びに行きたいな)


 そう思えた。

 今までとは、世界の全てが違う色彩に彩られて見える。

 幸介、優子、佳乃、聡美、陽子。

 そして、これから増えるかもしれない友人……

 ただ【独り】でいる事を望み、全てを拒絶してきた日々。

 今となっては、それすらも懐かしく思える。


「明日もがんばろう」


 自然と、そんな言葉が口に出た。

 これから先も、こんな楽しい日々が待っていると、そう思えたから……



○――――――――――――――――――――○



「どうして、あんな所で会うかなぁ」


 皆と別れて家に帰った佳乃は、自分の部屋に篭るなり、そんな呟きを漏らした。

 一晩で、整理をつけたと思っていた自分の〝想い〟。それなのに、たった一目見ただけで、その〝想い〟は湧き上がってきた。


「ダメだな、あたし……」


 思っていた以上に強い自分の〝想い〟。

 それに翻弄される自分。

 思い返す昼間の光景。

 遼に詰め寄る陽子と聡美の姿。そして、嬉し恥ずかしそうな遼の姿。その様子を楽しそうに眺める優子の姿。

 鮮明に思い出す。幸介と会ってから、どこか上の空だったはずなのに……

 むしろ、幸介に会った後の事を克明に記憶している。

 気持ちの整理がつかない。どうすればいいのか、わからない……

 諦めなければいけないと分かっているのに、諦められない……

 でも、諦めようとしている。矛盾する想い。

 頭の中を二つの想いが駆け巡る。

 いつの間にか、佳乃はそのまま眠ってしまっていた。気持ちに決着が着かないまま。

 何も、解決する事なく……

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