序
ある年の春。毎年どこでも行われる入学式。それは、私立秀栄高校でも違わずに行われた。
私立だからと言って特別な所はなく、ごく普通の入学式が行われ、ごく普通の風景が続く。
真面目な生徒もいれば、入学式早々からだらけている生徒もいる。(名前の割りに)特に進学校というわけでもなく、かと言ってそれ程体たらくな学校というわけでもない。とにかく中堅的な位置の学校である。
そんな秀栄高校に今年から通う事になった少年・村野幸介は、どちらかと言えば真面目な生徒である。
勉強はあまり出来る方ではないが、その代わり運動能力が少々長けている。さしあたって、まあどこにでもいる様な少年と言えよう。
そんな幸介だが、彼は人一倍に【孤独】を嫌う。
幼い頃の体験がそうさせるのか、それとも元からの性分なのか……
彼は常に明るく元気に、そして社交的であろうとする。
それは入学式という新しい始まりの場でも違わず、式が終わった早々に、彼は周囲の人間に溶け込んでいた。まるで、旧知の間柄であるかの様に。
ある種の才能とも言えよう。
クラスの発表。年度頭恒例のイベントが始まり、彼は心臓を高鳴らせる。
そう。彼は、新しい友人を作れるという事そのものが楽しみで仕方ないのだ。
彼は掲示された表を眺め、自分のクラスを探す。
すぐに見つかったのか、彼は早速教室へと向かった……
ある年の春。毎年どこでも行われる入学式。それは、私立秀栄高校でも違わずに行われた。私立だからと言って特別な所はなく、ごく普通の入学式が行われ、ごく普通の風景が続いた。
勿論真面目な生徒もいるが、そうでない生徒もいる。(名前の割りに)特に進学校というわけでもなく、かと言ってそれ程体たらくな学校というわけでもない。とにかく、中堅的な位置の学校である。
そんな秀栄高校に今年から通う事になった少女・綾瀬遼は、どちらかと言えば真面目な生徒ではない。不真面目。というわけではないが、内向的で、周囲と関わろうとしない。おそらく、事務的に日常を送る少女だ。彼女はあまり運動は出来ないが、その代わりとても頭が良い。記憶力が高く、また要領も良い。だから勉強は出来る。
そんな遼は、人一倍【孤独】を好む。
幼い頃の体験がそうさせるのか、それとも元からの性分なのか……
彼女は常に他者との接触を避けようとし、【独り】であろうとする。
その独特の雰囲気からか、周囲からも彼女にはあまり近寄らない。彼女はそれを哀しいとは思わず、好都合とし、静かに過ごす。
そんな彼女には、友達と呼べる友達がいない。教師達も、彼女を敬遠する。かと言って問題を起こすというわけでもないので、放っておく。という策に出る。それもまた、彼女にとっては好都合なのだろう。
クラスの発表。年度頭恒例のイベントが始まり、彼女は早く済ませて欲しいと考える。少しして張り出された表を見据え、彼女はすぐに教室に移動する。
彼女は人混みが嫌いだ。わんさかと集まる新入生達の波から逃れる様に、事務的に用件を済ませ、教室へと向かおうというのだ。
それが彼女のスタイルであり、今までも、これからも変わらない意志。
この時はまだ、彼女は知らない。
これから先、【自分】というモノを、一人の少年によって変えられていく事を……
幸介は知らない。これから先、自分が誰かの一生を左右する事になるなどと……
誰も知らない。
【二人】の出会いを、運命が待っている事を……