日記の呪い
翌日。結は日記の内容を頭から離せずに学校へ向かった。
日記には、屋上で小さな事故が起きると書かれていた――クラスメイトの花山がうっかり転ぶ、ただそれだけの出来事だと書かれていた。
「まさか、現実になるわけ…」
信じたくない気持ちと、気になって仕方ない気持ちが交錯する。
昼休み、結は屋上に向かう。日記に書かれていた通り、花山は本当に転び、ペンを落として床に転がった。
周囲の友人たちは笑って「大丈夫?」と声をかけるだけで、特別な反応はない。
しかし、結の心臓は早鐘のように打った。
「これは、私だけが見ている…?」
その日の放課後、結は日記を机に置き、もう一度ページをめくった。
そこには、次に消えるクラスメイトの名前が暗号のように書かれていた。文字の一部が滲み、読むたびに意味が変わる。
――消えた人々は、図書館の奥にある「影の部屋」に囚われる。
――影の部屋は夜しか開かない。
結は息を呑む。日記に書かれた通り、友人たちが一人ずつ消えていくのだとしたら――。
その夜、結は再び図書館へ向かう。
階段を上がると、昼間とは違う空間が広がっていた。迷路のように続く書架、そして微かに揺れる影たち。
日記を頼りに歩く結の前に、最初の幻影が現れた――消えたはずの花山が、無表情で立っている。
「……花山?」
その声に振り向くと、花山はゆっくりと手を差し伸べる。しかし、その目には光がなく、影のように黒く染まっていた。
結は恐怖で立ちすくむ。次の瞬間、背後で階段の音が聞こえた。誰か――いや、何かが、近づいてくる。
ページをめくるたび、現実が少しずつ狂っていく。
結は、今、自分が日記に書かれた運命の中に閉じ込められていることを理解する――。




