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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第6.5話 慣れてるだけ

挿絵(By みてみん)


フィーは、鏡の前で自分の腕を回していた。

その拍子に、豊かな胸がふわりと揺れる。


 さっき、落ちたはずの腕だ。

 ちゃんと動く。

 違和感もない。


「うん、問題なし」


 胸元のストラップを指で直しながら、

 それを確認してから、ベッドに腰を下ろす。

 座った瞬間、また小さく胸が沈んだ。



 最初に思ったのは――

 変なチームだな、ということだった。


 前に立つ人。

 疲れない子。

 何もしてない人。


 バランスは、悪い。

 でも、どこか崩れない。


「……ああいうの、久しぶりだな」


 フィーは、小さく笑った。

 笑うたびに、肩と一緒に胸もわずかに動く。


 昔から、壊れる現場ばかりだった。


 噛まれて。

 引き裂かれて。

 踏み潰されて。


 泣いている飼い主の前で、

 黙って直す。


 それが仕事。


 だから、壊れること自体に、

 あまり意味を感じなくなった。



 今日もそうだ。


 腕が落ちた瞬間、

 怖いとは思わなかった。


 ――あ、取れたな。

 それだけ。


 拾って、戻す。

 いつも通り。


「普通でしょ?」


 そう言ったら、

 みんなが黙った。


 ああ、そうか。


 普通じゃないのは、こっちだった。



 ガルドは、前に立つ。

 たぶん、壊れないように。


 コムギは、食べさせる。

 たぶん、減らないように。


 トンヌラは――。


「……何してるんだろ」


 腕を組んで、考えているようで、

 何もしていない。


 でも、不思議と目が離れない。


 ああいう人は、

 現場に一人いると、

 全部が静まる。


 理由は分からない。


 でも、

 壊れる前に、止まる。


 そんな気がする。



 フィーは、ベッドに倒れ込んだ。

 

 天井を見ながら、考える。


 このチームは、

 壊れない。


 いや、正確には――

 壊れても、戻る。


 それは、すごく危険だ。


 壊れてもいい、と思い始めた瞬間、

 本当に壊れる。


 だから、あの人が言った言葉は、

 少しだけ、嬉しかった。


「使いすぎると、壊れる」


 当たり前のことを、

 当たり前に言っただけ。


 でも、それが言える人は、

 案外少ない。



 目を閉じる前、

 フィーは小さく呟いた。


「……しばらく、一緒にいよっかな」


 面白いから、じゃない。


 危ないから、でもない。


 ただ――

 放っておけない。


 それだけだ。


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