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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第4.5話 ちゃんと食べれば、ちゃんと動く

挿絵(By みてみん)



コムギは、袋の中身をもう一度確認した。


 干し肉。

 乾パン。

 塩。

 甘い粉。

 苦い粉。


「……うん、大丈夫」


 足りないものはない。

 多すぎるものもない。


 それが、管理栄養士の仕事だった。



 戦いは、思ったよりも静かだった。


 前に立つ人がいる。

 それだけで、敵が進めなくなる。


「不思議だなぁ……」


 コムギは小さく首をかしげた。


 でも、深く考えない。


 分からないことを、無理に理解しようとすると、

 だいたい余計なことになる。


 大事なのは、今、身体がどう動いているかだ。



 ガルドさんは、疲れていない。


 息も乱れていないし、

 足運びも安定している。


「よしよし」


 心の中で、そう呟く。


 問題は、その先。


 疲れる前に、疲れさせない。

 減る前に、補う。


「はい、水です!」


「……今?」


「今です!」


 迷う時間は、いらない。


 身体は、正直だ。

 正しいものを、正しいタイミングで入れれば、

 ちゃんと応えてくれる。



 戦闘が終わったあと。


 みんな、普通に歩いている。


「……あれ?」


 コムギは、少しだけ不安になった。


 ――やりすぎた?


 でも、数字は合っている。

 計算も間違っていない。


 じゃあ、問題ない。



 トンヌラさんは、何も言わない。


 指示もしない。

 文句もない。


 でも、不思議とやりやすい。


「……こんな私でも、任せてくれるんだ」


 背も低いし、力もない。

 戦うことなんて、ひとつもできない。


 それでも、荷物の中身と、出す順番だけは、

 ちゃんと信じて預けてくれている。


 そう思うと、少し胸の奥があたたかくなった。


 任せられる、というのは、

 必要とされているということだから。


 たぶん。



 ギルドに戻ったあと、

 周りの人たちが、ひそひそ話しているのが聞こえた。


「魔法だ……」

「補給の……」

「いや、名前が……」


 コムギは、首を振った。


「違うのになぁ」


 魔法じゃない。

 奇跡でもない。


 ただ、ちゃんとやっただけだ。



 夜。


 宿の台所で、コムギは食材を刻む。


「明日は、もう少しだけ変えよう」


 同じじゃ、だめだ。

 状況は、毎回違う。


 だから、考える。


 考えて、準備して、出す。


 それが、管理栄養士の仕事。



 ふと、視線を感じて振り返ると、

 トンヌラさんが、少し離れたところに立っていた。


 腕を組んで、何か考えているような顔。


「……すごい人だなぁ」


 何が、とは言えない。


 でも、きっと。


 この人は、全部わかってて任せている。


 コムギは、そう思った。


 ――それでいい。


 自分がやることは、変わらない。


 ちゃんと食べさせて、

 ちゃんと動いてもらう。


 それだけだ。


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