番外編 世界調停機構 報告書
事故報告書
件名:未分類存在との接触による観測事故
分類:保留(最優先)
提出先:世界調停機構・中央監査局
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1. 事案概要
•発生日時:第七周期・第三節・観測標準時
•発生地点:第二区画外縁・臨時観測ルート
•関与対象:
•未定義中心個体
•未登録随伴存在(犬型・通称「ぽめ」)
本件は、
上記未登録存在に対する接触確認行為中に発生した
重大な観測事故である。
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2. 目的
•未登録随伴存在の危険性評価
•《ネームレス》との因果関係の確認
•物理・魔術的影響範囲の測定
※当該存在は、それまで一切の能動的行動を確認されていなかった。
3. 経過
3-1. 初期観測
•犬型存在は、地面に伏し、睡眠状態
•周囲への魔力影響:なし
•空間歪曲:なし
•因果変動:観測不能(=異常値なし)
担当官は、
低危険度対象として分類を進めた。
3-2. 接触行為
•担当官A、右手にて対象へ接触
•接触理由:反応確認
この時点まで、
《ネームレス》本人からの妨害・警告はなし。
3-3. 事故発生
•接触成立と同時に、観測ログが欠落
•物理的破壊、爆発、魔力反応は確認されず
•担当官Aの存在が連続性を失う
以下の事象が同時に確認された:
•担当官Aの身体構成要素が「消失」ではなく
「最初から存在しなかった」扱いとなる
•血痕・遺留物・死体なし
•担当官Aに関する過去ログの一部が欠落
4. 特記事項
•犬型存在は、事故後も睡眠を継続
•攻撃・防御・威嚇行動は一切確認されず
•事故発生後、《ネームレス》は明確に
「やめろ」という発言を行った
この発言は、
命令・詠唱・能力行使には該当しない。
5. 分析
5-1. 想定外要因
本件は、
「攻撃された」「能力を使われた」
いずれにも該当しない。
正確には、
「触れた事実そのものが成立しなかった」
と記録される。
5-2. 危険性評価の修正
当該犬型存在は、
•兵器:✕
•魔獣:✕
•災害:✕
上記いずれにも該当しない。
仮分類:
終焉事象に近い“自然現象”
ただし、
意志・感情・選択が存在する可能性あり。
6. 対応方針
•当該存在への直接接触を全面禁止
•観測距離を最大限確保
•《ネームレス》本人への刺激行為の停止
理由:
本存在は、《ネームレス》の
選択・判断に依存して挙動が変化する可能性がある
7. 結論
本事故は、
世界調停機構の判断ミスによるものである。
ただし、
当該存在が自発的に敵対しなかった事実は
記録しておく必要がある。
8. 付記(監査官コメント)
我々は「危険な存在」を排除してきた。
だが今回、
危険でないことを選び続ける存在を
初めて観測した。
それは、
我々の想定外だ。
最終備考
本件は
敗北でも、勝利でもない。
ただ一つ言えるのは、
触れてはいけないものに、
触れてしまった。
以上。




