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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第22話 何もしないことを、やめる

ぽめは、眠っていた。


 本当に、何事もなかったかのように。



 俺は、しばらくその場を動かなかった。


 腕を組んだまま、

 考える。


 ――今までと同じだ。


 何もしていない。

 何も命じていない。

 何も選んでいない。


 それでも、

 世界は勝手に転がってきた。



「……違うな」


 小さく、

 そう呟く。


 転がしていた。


 無自覚に。

 無責任に。



 ぽめの方を見る。


 終焉の獣。

 世界を削れる存在。


 それが、

 俺の隣にいる。


 理由は分からない。

 運命だとか、

 因果だとか。


 どうでもいい。


 問題は一つだ。


 俺が、

 ここに立っている

 という事実。



 遠くで、

 慌ただしい気配がした。


 観測。

 確認。

 遅れてやってくる“理解”。


 次は――

 もっと多く来る。


 一人じゃない。

 試す者。

 囲う者。

 壊す者。


 ぽめが、

 また触れるかもしれない。


 今度は、

 もっと大きな“削除”が起きる。



「……それは、

 ダメだ」


 初めて、

 はっきり否定した。


 世界のためでも、

 誰かのためでもない。


 自分のためだ。


 これ以上、

 知らないところで

 消えるものを増やしたくない。



 俺は、

 一歩、前に出た。


 十五年ぶりに、

 山を下りた時以来だ。


 “立つ位置”を、

 自分で選ぶ。



「ぽめ」


 初めて、

 名前を呼んだ。


 ぽめは、

 片目を開ける。



「……もう、

 勝手にやるな」


 命令じゃない。

 頼みでもない。


 約束だ。


 ぽめは、

 何も答えない。


 だが――

 尻尾が、

 一度だけ揺れた。



 その瞬間。


 周囲の気配が、

 少しだけ落ち着いた。


 観測が、

 遠のく。


 中心が、

 動いた。



 俺は、

 深く息を吸った。


 決める。


 逃げない。

 任せない。

 誤解のまま、

 突き進まない。


 ……いや。


 誤解は、

 使う。


 だが、

 責任は取る。



「……行くぞ」


 ぽめに言う。


 ぽめは、

 立ち上がる。


 だが、

 何も変わらない。


 毛玉のままだ。


 それでいい。



 遠くで、

 仲間たちの気配を感じた。


 ガルド。

 コムギ。

 フィー。

 ミラ。

 クラウス。


 まだ、

 何も知らない。


 だが、

 必ず合流する。


 今度は――

 俺が、

 “戻る”。



 腕を組む。


 だが、

 ただ立つためじゃない。


 立つと決めるためだ。


 世界は、

 もう止まらない。


 だから――

 俺が、

 止める。


 壊さず。

 削らず。

 終わらせず。


 誤解されたままでもいい。


 ただ一つ。


 選ばなかった責任から、

 逃げない。


 それが、

 俺の役目だ。


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