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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第21話 触れたもの

最初に起きたのは、

 音の途切れだった。



 歩いていたはずの道が、

 いつの間にか、

 無音になっている。


 風も。

 鳥も。

 自分の足音すら、

 どこか遠い。


「……」


 俺は、

 立ち止まった。


 腕を組んだまま。



 ぽめは、

 隣にいる。


 いつもより、

 少しだけ近い。


 それだけで、

 嫌な予感がした。



「対象を確認」


 背後から、

 声がした。


 振り返ると、

 白い装束の男が立っている。


 世界調停機構。

 実地調整班。


 一人だ。


 一人で来る判断をした、

 ということ。



「……何の用だ」


 俺は聞いた。


「確認です」


 男は、

 淡々と言う。


「単独行動中の

 異常値について」


「異常はない」


「観測が、

 一瞬切れました」


 それだけで、

 十分だった。



 男の視線が、

 ぽめに向く。


 ほんの、

 一瞬。


 だが――

 好奇心が混じった。


「……それは?」


「犬だ」


「登録されていませんね」


 男は、

 一歩、近づいた。



「触るな」


 俺は、

 はっきり言った。


 男は、

 足を止めない。


「危険性を測るだけです」


 測れるものだと、

 思っている。



 ぽめが、

 動いた。


 前に出ない。

 吠えない。


 ただ――

 こちらを見た。


 それだけだ。



 男の手が、

 伸びる。


 次の瞬間。



 ――“触れた”。


 それだけ。


 爆発もない。

 閃光もない。

 衝撃波もない。


 音すら、

 ほとんどない。



 だが。


 男の手が、

 そこになかった。


 正確には――

 「最初から存在しなかった」

 かのように、

 消えていた。



「……?」


 男は、

 自分の腕を見下ろす。


 血は出ていない。

 痛みも、ない。


 ただ、

 因果が欠けている。



「……な……」


 声にならない声。


 理解が、

 追いつかない。



 次に消えたのは、

 足だった。


 そして、

 胴。


 頭。


 順番ではない。


 “触れた事実”だけが、

 削除されていく。



 数秒後。


 そこには、

 誰もいなかった。


 死体も。

 血痕も。

 痕跡も。


 ただ、

 風が戻る。



 ぽめは、

 座った。


 あくびをした。


 それだけだ。



「……やめろと言った」


 俺は、

 静かに言った。


 ぽめは、

 何も答えない。


 だが――

 もう、十分だった。



 遠くで、

 観測が一斉に復帰する気配。


 遅すぎる。



 俺は、

 初めて“選ぶ”必要を感じた。


 このまま、

 何もしないでいるか。


 それとも――

 何もしないことを、

 やめるか。



 ぽめは、

 隣で丸くなった。


 もう、

 何もしない。


 約束を守ったかのように。



 だが――

 世界は、

 もう後戻りできない。


 触れてはいけないものに、

 触れた。


 それだけで、

 十分すぎた。


明日から3日間、連続で最終話まで連続更新。

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