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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第20話 単独行動

通達は、短かった。


《世界調停機構・実地調整班》

《対象:トンヌラ》

《今後の任務は、単独行動を基本とする》


 それだけだ。



「……ふざけてる」


 ミラが、珍しく声を荒げた。


「一人で?

 この人、

 何もできないんだよ?」


 事実だ。


 だからこそ、

 選ばれた。



「……俺が前に立てません」


 ガルドが、低く言った。


「一緒に行けないなら、

 意味がない」


 コムギは、

 袋を抱えたまま黙っている。


 フィーは、

 唇を噛んだ。


 クラウスは、

 何も言わない。



「大丈夫だ」


 俺は言った。


 嘘ではない。


 何もできないことには、

 慣れている。


 十五年の山籠りは、

 ほとんど一人だった。



 指定された任務は、

 “安全”とされていた。


《巡回》

《確認》

《戦闘想定なし》


 調停機構の言葉で言えば、

 観測用の散歩だ。



 出発地点で、

 仲間たちは止まった。


「……ここまで」


 調整班の男が言う。


「これ以上の同行は、

 認められません」


 ぽめが、

 足元で座る。


 ついて来る気だ。


「……ダメだ」


 男が言った。


「それは、

 未登録の存在です」


 ぽめは、

 首を傾げる。



「置いていく」


 俺は、そう言った。


 ぽめは、

 文句を言わない。


 ただ、

 その場に座った。



 歩き出す。


 一人だ。


 音が、

 少ない。


 足音が、

 やけに大きい。



 調停機構の視線は、

 はっきり感じた。


 遠い。

 だが、

 逃げ場はない。


 見られている。



 しばらく歩いたところで、

 違和感が生じた。


 何も起きない。


 敵も。

 事故も。

 風すら。


「……なるほど」


 俺は、

 立ち止まった。


 これは、

 安全じゃない。


 隔離だ。



 その時。


 背後で、

 小さな音がした。


 ――ころ。


 振り返る。


 ぽめが、

 そこにいた。


 いつの間にか。


「……来るなと言った」


 ぽめは、

 返事をしない。


 ただ、

 座る。



 その瞬間。


 空気が、

 変わった。


 重く。

 静かに。


 遠くの観測が、

 一斉に途切れた気がした。



「……やめろ」


 俺は、

 初めてはっきり言った。


「まだ、

 いい」


 ぽめは、

 動かない。


 だが――

 世界の方が、

 先に動いた。



 遠くで、

 何かが“踏み外した”音がした。


 次に起きるのは、

 事故か。

 災害か。

 それとも――

 実験か。


 俺は、

 腕を組み直した。


 何もできない。

 だが、

 何も起きないとは、

 限らない。


 ぽめは、

 隣にいる。


 まだ、

 何もしない。


 だが――

 一人にしようとした選択は、

 確実に、

 間違いだった。

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