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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第19話 世界調停機構、踏み込む

その来訪は、静かだった。


 派手な部隊も、

 威圧的な魔力もない。


 ただ――

 正規の書類だけが届いた。



《世界調停機構・協力要請》


 その一行だけで、

 ギルドの空気が凍った。


「……要請、ですか?」


 ミラが、

 半笑いで言う。


「“命令”じゃなくて?」


 受付の女性は、

 首を横に振った。


「形式上は……

 協力、です」


 形式上。


 それが一番、

 信用ならない。



 指定された場所は、

 町外れの施設だった。


 元は、

 研究用の拠点。


 今は、

 誰も使っていない。


「……隔離向きですね」


 ガルドが、

 低く言った。


「前に立てる場所、

 多そう」


 笑えない冗談だ。



 中にいたのは、

 三人だけだった。


 全員、

 戦闘職ではない。


 だが――

 目が違う。


 決定を下す目だ。



「本日は、

 お越しいただき感謝します」


 中央の人物が、

 丁寧に頭を下げる。


「我々は、

 世界調停機構・

 実地調整班です」


 “実地”。


 その言葉が、

 重く響いた。



「結論から申し上げます」


 男は、

 紙を置いた。


「皆さんの行動は、

 世界の均衡に

 影響を与えています」


「被害は?」


 フィーが即座に聞く。


「……ありません」


「死者は?」


「確認されていません」


「じゃあ――」


 ミラが、

 一歩前に出る。


「何が問題?」


 男は、

 一瞬だけ言葉に詰まった。


「……終わらなかったことです」



 沈黙。


 その理由は、

 理解できた。


 だが、

 納得はできない。



「そこで」


 男は、

 次の書類を出す。


「段階的な

 役割制限を行います」


「もう、

 やってるだろ」


 ガルドが言う。


「ええ」


「次は?」


 男は、

 視線を上げる。


「同行制限です」


 空気が、

 一段、冷えた。



「……誰を?」


 コムギが、

 小さく聞いた。


「まずは、

 《ネームレス》」


 その言葉で、

 全員が固まった。



「トンヌラさんは、

 今後、

 単独での行動を

 推奨されます」


「推奨?」


「……強制に

 近い形で」


 正直だ。



「理由は」


 俺が、

 初めてはっきり聞いた。


「中心だからです」


 男は、

 躊躇わなかった。


「定義できない中心は、

 最も不安定です」



「……拒否したら?」


 ミラが、

 低く言う。


 男は、

 少しだけ視線を逸らした。


「次の段階に進みます」


 それが、

 答えだった。



 その時。


 部屋の隅で、

 ぽめが立ち上がった。


 ゆっくり。

 だが、確実に。


「……?」


 調整班の一人が、

 目を向ける。


「……あれは?」


「犬です」


 フィーが、

 即答する。


「分類は?」


「……してません」


 その一言で、

 男たちの動きが止まった。



 ぽめは、

 一歩、前に出た。


 何もしない。

 唸らない。


 ただ――

 見ている。


 その視線に、

 空気が重くなる。



「……対象外です」


 中央の男が、

 慌てて言った。


「本件とは、

 関係ありません」


 そう言いながら、

 無意識に

 一歩、下がる。



 クラウスが、

 静かに言った。


「……踏み込みすぎですよ」


 男は、

 睨み返す。


「我々は、

 世界を守っています」


「ええ」


 クラウスは、

 淡々と返した。


「だからこそ、

 壊し方を

 選ばない」


 その言葉に、

 誰も反論できなかった。



 話は、

 そこで終わった。


 合意も、

 拒否もない。


 ただ――

 線が引かれた。



 外に出ると、

 空気が軽く感じた。


「……本気だな」


 ミラが言う。


「ああ」


「次、

 何する?」


 全員の視線が、

 俺に集まる。


 俺は、

 いつも通り、腕を組んだ。


「……何もしない」


 正直な答えだった。


 だが――

 その“何もしない”が、

 もう許されない段階に

 入っている。


 ぽめは、

 黙って歩いている。


 まだ、

 何もしない。


 だが――

 次に世界が踏み込んだら、

 止まるのは、

 確実にこちらではない。


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