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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第18話 切り離される仲間

異変は、戦場では起きなかった。


 むしろ――

 安全な場所から始まった。



「……通達です」


 ギルドの受付で、

 女性が声を落として言った。


「個別行動の推奨?」


 ミラが紙を覗き込む。


「なにそれ」


 書類には、淡々とした文字。


《活動分析課勧告》

《当該パーティは、

 今後の任務において

 役割分離を推奨する》


「……要するに」


 ガルドが言う。


「一緒に動くな、

 ってことですね」


「はい」


 受付の女性は、

 目を逸らした。



 理由は、書かれていない。


 だが、

 全員が分かっていた。


 強すぎるからでも、

 弱すぎるからでもない。


 “揃いすぎている”からだ。



「じゃあさ」


 ミラが、

 わざと明るく言う。


「別々で行けば、

 問題ないってこと?」


 返事は、なかった。



 最初に分けられたのは、

 ガルドだった。


《前線固定要員は、

 単独行動を基本とする》


「……単独?」


 ガルドは、

 困った顔をした。


「前に立つだけですよ、

 俺」


「だからです」


 書類には、

 理由だけが並ぶ。


《防御因果が過剰》

《周囲への影響が大》


 ガルドは、

 何も言えなかった。



 次は、コムギ。


《補給支援は、

 専属化を推奨》


「……え?」


「戦闘同行は、

 不要と判断されました」


 コムギは、

 袋を抱え直す。


「でも……

 一緒じゃないと」


 声が、

 小さくなる。



 フィーも同じだった。


《生体調律対象は、

 事前指定制へ移行》


「つまり?」


 フィーが聞く。


「現場で、

 勝手に直すな、って」


 ミラが代弁した。


「……雑だな」


 フィーは、

 笑えなかった。



 ミラだけは、

 まだ何も書かれていない。


 だが――

 それが一番、嫌だった。


「……ねえ」


 ミラが、

 俺を見る。


「これ、

 次は私だよね」


「……ああ」


 否定はできない。



 クラウスは、

 最初から対象外だった。


 “観測不能”。


 それだけが、

 書かれている。



「……どうする」


 ガルドが、

 小さく言った。


 誰も、

 すぐに答えられない。



 その時。


 ぽめが、

 小さく鳴いた。


「……?」


 全員が、

 そちらを見る。


 毛玉は、

 いつも通りだ。


 何も変わらない。


 だが――

 この空気が嫌だ

 と言っているようだった。



「……大丈夫だ」


 俺は、

 初めてはっきり言った。


「一緒に、

 動かなくても」


 全員が、

 こちらを見る。


「……何か、

 考えが?」


 コムギが、

 恐る恐る聞く。


「ない」


 正直に答えた。


 だが――

 それでも。


「役割を切られても、

 関係は切れない」


 それだけは、

 確信していた。



 その夜。


 宿の部屋は、

 いつもより静かだった。


 ガルドは、

 壁の前に立っている。


 誰も、

 守るものがいない位置で。


 コムギは、

 余った食材を見つめている。


 フィーは、

 直す予定のない包帯を巻いている。


 ミラは、

 弦を張り替えずに座っている。


 クラウスは、

 糸を張らない。



 ぽめは、

 部屋の中央に座っていた。


 初めての位置だ。


 全員の間。


 何もしない。

 ただ、

 そこにいる。



 世界は、

 役割を切り離した。


 だが――

 切り離したつもりなだけだ。


 まだ、

 本当に切れたものは、

 一つもない。


 それに気づくのは、

 次に“何か”が起きたときだ。


第19話 19日更新

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