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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第17話 敵は、定義される

世界調停機構・中央評議室。


 いつもより人が多かった。

 それだけで、事態の深刻さが分かる。


「――再定義は、失敗した」


 議長が、淡々と言った。


 反論はない。



対象ネームレスは、

 能力を持たない」


「しかし、結果を歪める」


「因果を操作している証拠は?」


「……ない」


 それが、最大の問題だった。



「囲えない」


 誰かが言う。


「命名できない」


 別の誰かが続ける。


「干渉できない」


 沈黙。



 議長は、書類を閉じた。


「では、結論だ」


 重い声。


「対象を“脅威”として扱う」


 誰かが、息を呑む。



「待ってください」


 若い観測官が、声を上げた。


「直接的な被害は、

 一切確認されていません」


「被害が出てからでは遅い」


 議長は即答した。


「“終わらなかった”という事実が、

 すでに異常だ」



「脅威分類は?」


「……環境干渉型」


「いや」


 別の声が割り込む。


「終焉否定型」


 その言葉が、

 評議室に落ちた。



「終焉を否定する存在は、

 世界の循環を乱す」


「終わるべきものが、

 終わらない」


「それは、停滞だ」


 誰も反論できなかった。



「対処方針」


 議長が続ける。


「直接攻撃は行わない」


「接触も避ける」


「――定義する」


 空気が、張り詰める。



「対象本人ではない」


 議長は、次の書類を開いた。


「周囲から切り崩す」


 名前が並ぶ。


 ガルド。

 コムギ。

 フィー。

 ミラ。

 クラウス。


「役割を固定し、

 行動を制限する」


「定義を強めれば、

 中心は弱まる」


 理屈は、通っていた。



「……失敗した場合は?」


 誰かが尋ねる。


 議長は、少しだけ黙ってから答えた。


「次は、切断だ」


 何を、とは言わない。


 だが、全員が理解した。



 一方、その頃。


 宿の裏庭。


 ミラは、ギターの弦を張り替えていた。


「……空気、

 重いね」


 ガルドは、

 何もない場所に立つ。


「前に、

 何かあります」


 コムギは、

 いつもより多めに準備していた。


「理由、

 分からないですけど」


 フィーは、

 指先の感覚を確かめる。


「……嫌な予感」


 クラウスは、

 紙を見ていない。


 見る必要がない。



 ぽめは、

 相変わらず寝ている。


 名前も。

 役割も。

 定義もない。


 ただ、

 そこにいる。



 俺は、

 腕を組んで立っていた。


 いつも通りだ。


「……なあ」


 ミラが言う。


「世界、

 こっち見てるよね」


「ああ」


 それだけは、

 否定できない。



 遠くで、

 何かが動き出した気配がした。


 戦いではない。

 だが――

 戦いよりも、

 ずっと厄介なものだ。


 名前。

 定義。

 役割。


 それらが、

 刃になる。


 ぽめは、

 まだ動かない。


 だが、

 次に世界が踏み出したら。


 止まるのは、

 どちらか一方だ。


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