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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第13話 監視されている日常

挿絵(By みてみん)



変わったことは、特にない。


 朝は起きて、

 準備をして、

 依頼を確認する。


 それだけだ。



「……なんか、

 見られてる気しません?」


 ギルドへ向かう途中、

 コムギが小声で言った。


「気のせいだ」


 即答したのはガルドだ。


「見られてるなら、

 前に出ます」


「意味ある?」


「あります」


 彼は真顔だった。


 前に立てば、

 後ろは守れる。


 理由はそれだけだ。



 ギルドの空気は、

 微妙に変わっていた。


 露骨ではない。

 だが、視線が逃げない。


「……あれ?」


 ミラが首を傾げる。


「ギルドの人、

 今日やたら静かじゃない?」


「確かに」


 フィーが笑う。


「前はもっと、

 ヒソヒソしてたのに」


 それが一番、

 嫌な変化だった。



 受付の女性は、

 妙に丁寧だった。


「お、おはようございます、

 トンヌラさん」


「おはよう」


「本日の依頼ですが……」


 差し出された紙には、

 簡潔な内容だけが書かれている。


《討伐》

《危険度:中》

《詳細:未記載》


「……雑ですね」


 ミラが言う。


「余計なこと、

 書かなくなった感じ」


 つまり、

 見られている前提だ。



 外へ出ると、

 足元で何かが動いた。


「……?」


 白くて、

 小さくて、

 丸い。


「……犬?」


 フィーが、しゃがみ込む。


 毛玉は、

 こちらを見上げて、

 あくびをした。


「かわいい」


「……どこから来た」


 ガルドが周囲を見回す。


 首輪はない。

 魔獣の気配もない。


 ただ、

 最初からそこにいた

 みたいな顔をしている。



「ついてくる?」


 フィーが立ち上がると、

 毛玉は当然のように歩き出した。


 列の後ろ。

 ちょうど、

 誰の邪魔にもならない位置。


「……放っておく?」


 コムギが言う。


「危なくないですか」


「大丈夫でしょ」


 ミラは、軽く言った。


「ノリ、悪くないし」


 判断基準が、

 よく分からない。



 討伐は、問題なく終わった。


 ガルドは前に立ち、

 止めた。


 コムギは支え、

 減らさなかった。


 フィーは触れ、

 戻した。


 ミラは叫び、

 揃えた。


 クラウスは、

 何もしなかった。


 毛玉は――

 寝ていた。



 帰り道。


「……役に立ってませんね」


 ガルドが、

 毛玉を見ながら言った。


「うん」


 フィーは、即答した。


「何もしてない」


 ミラが、笑う。


「逆にすごくない?」


「……すごい、ですか?」


 コムギが首を傾げる。


「だってさ」


 ミラは肩をすくめる。


「このチームで、

 何もしないでいられるって、

 相当だよ」



 その時、

 毛玉が目を開けた。


 ほんの一瞬、

 こちらを見る。


 ――何も起きない。


 ただ、

 風が止んだ気がした。



 ギルドに戻ると、

 報告はすぐ終わった。


 書類は、

 淡々と処理される。


 誰も、

 深掘りしない。


 それが、

 監視のやり方だった。



 宿に戻ると、

 毛玉は、部屋の隅に丸まった。


「……名前」


 フィーが言う。


「つける?」


 ガルドは首を振る。


「まだです」


 ミラも、頷く。


「今は、

 呼ばないほうがいい」


 クラウスは、

 何も言わない。


 ただ、

 視線だけを落とした。



 夜。


 トンヌラは、

 いつも通り、腕を組んで立っていた。


 理由はない。


 だが、

 ふと足元を見る。


 毛玉が、

 そこにいた。


 気配もなく。

 当然のように。


「……お前」


 声をかけても、

 返事はない。


 毛玉は、

 もう一度あくびをして、

 目を閉じた。


 ――世界は、

 今日も終わらなかった。


 それでいい。


 今は、

 それだけで。


■ 基本情報

•名前:ぽめ

•種別:犬(ポメラニアン風)

•大きさ:小さい

•重さ:軽い

•役割:特になし


よく寝る。

よくあくびをする。

だいたい丸い。



■ 見た目


ふわふわしている。

小さくて、柔らかい。


目は大きめで、

たいてい閉じている。


どこから見ても、

危険そうな要素はない。



■ 性格


おとなしい。

吠えない。

騒がない。


誰かに構われても、

嫌がらない。


特別な忠誠心や使命感は、

たぶんない。



■ 行動パターン

•寝る

•丸くなる

•あくびをする

•たまに場所を移動する


戦わない。

逃げない。

守らない。



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