第12.5話 内部資料/抜粋
世界調停機構・第二観測室
非公開文書:分類外現象報告
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対象コード:N-LESS
通称:ネームレス
個体名:トンヌラ(仮)
職業判定:《ネームレス》
系統:不明
行動傾向:極端に低介入
結果傾向:戦果最大化/損耗最小化
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観測要約①
対象は、戦闘・指揮・支援のいずれも行っていない。
にもかかわらず、同行者の能力発現は最適化されている。
因果の中心に「意思」が存在しない。
また、意思の欠如が結果を阻害していない。
結論:
本現象は「無能力」ではなく、
能力の定義が成立していない状態と推定される。
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観測要約②(同行者)
•ガルド:前線固定/防御因果の自然発生
•コムギ:補給による消耗否定
•フィー:部位再生/生体調律
•ミラ:《リズム・ドミネーター》として確定
•クラウス:因果修正痕跡あり(極小)
※各員の能力は、単独では説明可能
※束ねる因果が存在しない
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注意事項
対象に対し、
•直接命令
•強制干渉
•能力定義の試行
を行った場合、
現象全体が破綻する可能性あり。
監視のみを推奨。
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追記(未承認)
観測ログに、
説明不能な余白を検出。
戦闘・移動・休息、いずれの局面にも属さない。
因果の外縁部に、
未分類の反応あり。
対象未確認。
影響未測定。
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参考注記(削除検討中)
「終焉級の反応パターンに類似」
※該当箇所、
現時点では関連付け不可。
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最終評価
対象は、
世界を変革する存在ではない。
だが、
世界が“終わるはずだった局面”を
終わらせない可能性がある。
引き続き、
静観を推奨する。
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――文書ここまで。
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同時刻。
宿の裏庭。
「……犬?」
フィーが、足元を見下ろした。
小さな影が、
気まぐれに尻尾を振っている。
誰も、
まだ気にしていない。
ここまでで、
ぽめを除く仲間たちは全員そろいました。
そしてこの12.5話で、
物語は初めて
主人公たちではなく、世界の側から見られています。
世界調停機構は、
悪ではありません。
正義でもありません。
ただ、
「理解できる世界」を保ちたいだけです。
だからこそ、
《ネームレス》は危険でした。
・何もしない
・指示もしない
・中心に意思がない
それなのに、
結果だけがきれいに整ってしまう。
これは彼らにとって、
一番扱いづらい現象です。
なお、報告書の最後に出てきた
「余白」「未分類の反応」については、
この時点では誰も分かっていません。
……読者の皆さんだけは、
少しだけ心当たりがあるかもしれませんが。
次話から、
世界調停機構は
「見ているだけ」ではいられなくなります。
物語もまた、
ここから先、
引き返せないところに入っていきます。




