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ゴカイ無双 ~説明しよう! これは最強ではない男が、誤解されたまま責任だけを引き受ける物語である~  作者: フラグメント水沢


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第7.5話 ノリが死ぬと、人は死ぬ

挿絵(By みてみん)



ミラは、岩の上に腰を下ろしてギターを拭いていた。


 血は付いていない。

 当たり前だ。

 ちゃんと当てたから。


「……やっぱ、音悪かったな」


 弦を軽く弾く。

 きぃん、と乾いた音。


 悪くない。

 でも、さっきの戦場は――

 間が死んでた。



 戦いって、音楽に似ている。


 始まりがあって、

 溜めがあって、

 落とすところがある。


 それを無視すると、

 だいたい誰かがズレる。


 ズレると、

 怪我する。


 怪我すると、

 空気が壊れる。


「だから嫌なんだよね、

 静かすぎる戦場」


 ミラは、鼻で笑った。


 静かなのは、

 上手いからじゃない。


 噛み合ってないだけだ。



 あのチームを見た瞬間、

 違和感があった。


 前に立つ男。

 減らない体力。

 壊れても戻る身体。


 なのに――

 指揮がいない。


「……ありえなくない?」


 普通、誰かが振る。


 合図を出す。

 間を切る。


 それがないのに、

 成立してる。


 しかも、中心にいる男は、

 何もしてない顔をしている。


「一番信用ならないタイプ」


 でも、

 目が離れなかった。



 実際、声を出してみたら――

 はまった。


「そこ、今!」


 それだけで、

 全員の動きが揃った。


 偶然じゃない。


 あれは、

 揃う前提の空気だった。


 ミラは、それを叩いただけ。



 戦いが終わったあと、

 あの男――トンヌラは、

 何も言わなかった。


 感想も。

 指示も。

 評価も。


 それが、逆に怖い。


 音を聞いてない人間じゃない。


 聞いた上で、

 何も言わない。


「……プロデューサー気取りかよ」


 そう思ったが、

 違う気もした。


 あれは――

 舞台装置だ。


 自分が鳴れば、

 勝手に成立する場所。



 ミラは、立ち上がって肩にギターを担ぐ。


「ま、いいや」


 ノリが合うなら、

 続けてもいい。


 危ない?

 当然だ。


 でも、

 ノリが死んでる場所よりはマシ。


 最後にもう一度、弦を鳴らす。


 きぃん。


「……ああ」


 思わず、笑った。


「このバンド、

 たぶん、

 めちゃくちゃでかい音、出すわ」


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