ドラゴン4姉妹
捕虜尋問用の装甲室でドラゴンたちと会談することになったのだが……会話にならない。
いや、言葉は普通に通じたんだが。
メーダたちが暇つぶしにと渡した数冊のマンガ(サーカ公用語に翻訳済み)をドラゴンたちが奪い合うように読んでいる。
ドラゴンサイズではない。どうも本来のサイズは人間くらいで魔法でドラゴンサイズになるらしい。
「ドラ〇ラムかいな…。」
魔法エネルギーを実体化してドラゴン化するとかなんとか。
「話を聞かないと続き見せないぞ!」
聞こえないふりをしやがった。
「巨人の正体ばらすぞ!」
というとやっと話し合いが始まった。
何の成果も得られないという事態は何とか避けられたようだ。
四姉妹はドラゴン族の戦士。ファンタジーで言うとドラゴニュートか?
なんで女性が戦士なのかというと、女性のほうが強いから。
魔法でだいたいのことは済む。
文明の利器はあるが必要最小限度。異種族との交流は避けたいという方針のためだそうだ。
それらの文明の利器は密貿易で手に入れている。
かつてナーワに侵入しようとしてきた者たちを魔法で精神操作して物資を送らせてきているそうだ。
彼女たちはナーワ防衛とともに、科学文明輸入の役割も負っているわけだ。
「つまり君たちのその精神操作で……」
「ナーワへの侵入を防いでいました。」
「でも、あなたには効かなかった。」
「脳波が我々より強いわ。」
「だから精神攻撃が効かなかったのかな。」
「私たちにも魔法は使えますか?」
科学的な関心だろう。ノージとビースが尋ねる。
「可能性は薄いわね~。」
長姉のアーザ。得意魔法は雷系。治癒や強化魔法も得意。おっとり系の美女。ゴスロリ調の服が似合っている。和服も似合いそうだ。
「精霊があなたたちを恐れている。」
次女のマミヤ。風系魔法が得意。防御魔法、攪乱魔法も使える。小柄な美少女風。無口で一見無愛想。飾りっ気のない服装だ。まぁ、清潔感はあり、かわいい妹風キャラ。
「対話を拒否されたら魔法は使えないわね。」
三女のクージョ。得意魔法は火系だが、全魔法を高レベルで操れる。ショートカットのお嬢様風。これぞ『魔女』という格好をしている。
「でも、そこの男の人は可能性がありそうだな。」
末っ子のノーダ。得意魔法は水系。魔法力は4姉妹最強。ツインテールの活発な美少女キャラ。何か魔法だけでなく物理も強そうな……。服装も魔女というより、『剣士』だ。
ナーワが機械文明を拒否するのは魔法力の低下を恐れて、とのことだ。
もともと自然の少ないサーカは機械文明で今まで生き延びてきた。
地球は結構自然が豊かだ。日本の地方都市に住む自分は精霊にとって親しみやすいのかもしれない。
「ひょっとしたら精霊たちが私たちの精神攻撃魔法から守ってくれていたのかもしれませんね。」
魔法は精霊との対話から始まり、中~上級の精霊との契約。それにより魔法が使えるようになる。
精霊は他の下位精霊を吸収し、より強い精霊になる。
4姉妹曰く、地球の精霊は未進化のものなのだろうと。だから人との対話の経験がなく、契約もできない。当然、地球では魔法が使えない。
なぜ地球の精霊は進化しなかった?
「自然が豊かすぎて、他の精霊を吸収しなくても生きていけたからなのでは?」
人工物も元はと言えば自然の物だったのだが精霊はいないのか?
「いえ。精霊はいる。ただし自然の物からいじくりまわされた結果、人との対話、契約はもっと拒む。」
他から精霊が入って来ない艦内の環境では精霊はやがて死に絶えるそうだ。
「でも、悲しいけど特に支障はないわ。物の劣化が少々早くはなるけどね。」
地球でも人が住まなくなった家が早くさびれると言ったことが言われるが、似たようなモノだろうか。
「たぶんそうだ。精霊も活気のある環境が好きなの多いし。あんたから自然の精気を感じて精霊がたくさん集まってきてるぞ。」
宙を追う彼女たちの目には精霊が見えてるんだろう。
精霊との対話は思ったより簡単だった。もっとも精霊との仲介は4姉妹がやってくれた。
さもなければ機械文明に染まった自分の所には来てくれなかったかも。
魔法は呪文(精霊語)を唱え精霊に力を出してもらうということ。
魔法を撃つ対価として精霊が術者から取っていくものが魔法力と呼ばれているそうだ。
それが何かは分からないが、魔法力が切れたら極度の精神的疲労で動けなくなるかことから精神エネルギー的なモノではないかと言われているとか。
機械文明に染まっている上、はじめて呪文を唱える自分は精霊にあまり力を借りることができなかった。が、初級の火炎魔法を一応撃てた。かなり弱い威力だが。
自分は火系と土系の能力を持っているそうだ。水と風系もあるが、やや弱いらしい。
脳波誘導機器の調整時に分かったことだが、地球人はサーカの人間より脳波が強い。そのため、脳波誘導も高精度で行える。
それは魔法習得にとってもかなり有利だったようで、火球を小さいとはいえ形にするのは初心者にはほぼ無理なそうだ。
ドラゴン4姉妹の精神攻撃にも耐えられるとか、ちょっとしたチート能力かも…。(期待しすぎてがっかりしないように注意はするつもりだが。)
そのおかげもあってか、けっこう上位の精霊と契約できた。
精霊との会話は脳に負担をかけるのだが、脳波の強い地球人である俺にはあまり苦にならず、対話は順調だった。
下位精霊も多く集まってきて、精霊の進化も早い。魔法や精霊の知識のない自分にも感じられるくらいに。
しかし、魔法を他の星の者に教えていいんだろうか?
ナーワは魔法を使う知恵あるドラゴンの惑星だった。長年の謎が解けたのだが……
「サーカやトークォに報告する義務はないしする気もない。」
平和に暮らしている星にわざわざ混乱の元を持ち込む気はない。持ち込めば貴重な魔法技術が失われかねないだけでなく、戦乱の元になるかもしれない。
ナーワの開国はじっくり時間をかけて考えるべきだろう。
このことはうちのクルーたちも同意してくれた。
ナーワの首脳との会談は何かと面倒だった。
自分たちの情報を漏らしたくない首脳陣は俺たちを消すか記憶操作をしたいようだった。それ以上に彼らは我々のみならず異種族への嫌悪が酷いようだ。
だが、最強のドラゴン4姉妹の魔法力と宇宙戦艦の攻撃力には抗いきれないようだ。(会談の場には記憶操作の魔法陣トラップがあったが、4姉妹が一瞬で見抜き、無効化していた。)
「情報は独占していてこそ価値がある。現状、魔法を含めたナーワの秘密を公開するより秘匿した方が我々には有利である。」
我々がナーワの情報を漏らさない方針だという言を一応信じ、それを4姉妹が保証するということで半ば無理やり納得させた形だ。
ナーワと友好な関係を築き、魔法を教われればと思ったが、そう甘くないようだ。
だが、そこまで悪くない結果だといえるだろう。
まぁ俺たちの訪問が変化のきっかけになるだろう。そう思いたい。
「長老たちの無礼をお詫びします。」
「私たち全てが他種族に偏見を持つ者ではないです。」
「異種族でも誠実で有能な方がいることが分かって良かったわ。」
「あたしはあんたたち好きだよ。」
大量のマンガやDVDを記念に渡し、俺たちはナーワを去った。
変化は思った以上に早かった。
密航者が確認された。あの4姉妹である。
「去り方が変だと思ってはいたが…。」
普通に飛び去るのではなく、消えた…。去ったふりをして艦内に残っていたのである。
隠蔽魔法で可視光と音、熱などなどを遮断したそうで。
…これは艦とかにかけることはできるんだろうか?
まぁ魔法を教えてくれたのは引き換えに艦に乗せろ、ということだったんだろう。
「そんなところですが、私たちはナーワ以外の星を知りたいのです。いいえ。知る必要があるの。」
「鎖国政策をつづけていたら、ナーワは衰退していく。」
「魔法技術に科学の力を加えればナーワはさらに発展するわ。」
「魔法だけじゃあっさり負けちゃったからね。」
故郷を捨ててまで挑むか…。彼女たちの言うことは正しいし魔法にも興味がある。
たぶん、俺たちがナーワの秘密を洩らさないか監視する役も担っているのだろう。それが彼女たちがナーワを離れることを許す条件だったのかもしれない。
今更戻ることもできないし(ということにしておこう)、魔法の教官として艦に残ることを許可した。
「新たなる仲間として君たちを迎える。これからよろしく。」
ドラゴンたちの星 ナーワの次に向かうは、
今まで誰も手を付けられなかった超金属の星。
新たに仲間になったドラゴン娘たちの魔法が超金属に挑む!
次回『超金属の星』




