つよつよおばあちゃん
目が覚めると、知らないふかふかのベッドに寝かせられていた。私の今の所持金では絶対に止まれないような部屋だ。おそらく、あの老婆の家なのだろう。
「あら、起きたのね。調子はどう?」
私が起きたことに気づいた老婆が、優しく話しかけてくれた。まだ少しまどろんでいる脳を働かせて返事をする。
「ありがとうございます。私はレヴィーナ。今まではパーティーで冒険者をしていたのですが、私情で最近はソロで活動しています」
「あらそう。もしかして、パーティーを追放されちゃったり?」
核心を突かれ、ギクッとする。そんな私の様子を、老婆はクスリと笑った。
「人生長けりゃそんな経験はたくさんあるわよ。さ、私も自己紹介をしないとね。私の名前はカナデ。少し前まではあなたと同じソロで旅をしていたわ。冒険者をやめた理由は……そうね、歳ってことにしておこうかしら」
少し含みのある言い方で、老婆……カナデは話を切り上げた。
「さ、ご馳走するわ。下にいらっしゃい」
カナデに誘われるがままに、階段を降り、食卓につこうとしたところで、昨日の光景を思い出した。
「カナデさん、昨日、ハンマーを振り回していましたよね?」
「ええそうよ。これでも私、ソロでAランクまでの上り詰めたんだから。さ、食べましょ」
今さらっとすごいことを言われた気がする。冒険者Aランクというのは、並大抵の人間じゃ生涯をかけても達成できないような偉業だ。それをソロでなんて、とんでもない実力者なんじゃないか?
「あの、ソロで長年どうやって活動してきたんですか?」
私は雑談のふりをして、少しでもなにか私の助けにならないかと質問した。
「がんばったのよ。お料理が冷めちゃうわ」
「……」
また、のらりくらりと質問を躱されてしまった。もしかして、昔の旅になにか嫌な記憶でもあるのだろうか。なら、質問するのも失礼か。命を助けてもらったんだ。これ以上何かをもらうなんて、強欲すぎる。
「……ふふ、そんなに悩まなくても、聞きたいことがあるなら率直にいいなさいな。答えてあげるわ」
この葛藤も、カナデにはお見通しだったようだ。私は顔が熱くなった。
こんなに気を使われていていいのか? 失礼な気もするし。でも、答えてくれるって言ってくれたし……。
ええい、ままよ!
「あの! ソロとして強くなるにはどうすればいいですか!?」
カナデは、にっこりと笑って答えてくれた。
「そうねぇ。私の持論だけど、やっぱり経験じゃないかしら。一気に強くなるなんて無理よ。私だって、ひよっこ時代はあったわけだし。あなたもまだ若いじゃない。経験を重ねていくうちに、少しずつ、少しずつ強くなっていくわ」
私はその言葉がストンと腑に落ちた。心の底ではわかっていたんだ。急に強くなる方法なんてないって。けど、弱いって言って追放されて、ムキになっていたんだ。
恥ずかしさや安堵、他の感情がぐちゃぐちゃになって、泣きそうになった。
少しの間静寂が訪れたあと、それをぐっと我慢して、私はカナデの目を見た。
「ありがとうございました。頑張ります」
「ええ、頑張ってちょうだい。あ、あと、できることを増やすってことはいいんじゃないかしら。見たところ前衛職でしょう? 少しでも魔法が使えたら楽になるわよ。魔導書の基礎のやつなんかを買ってみるのもありじゃないかしら」
すごい人から色々と教えてもらった。できることを増やす、というのは私の目標でもあった。まずはそれをやってみようかな。
「あら、すっかり長話しちゃったわね。冷めちゃったけどいただきましょうか」
ご馳走された料理は、どれも優しく、温かい味のするものだった。
■■■
「ありがとうございました」
「ええ、また何かあったら頼ってちょうだい。私頑張っちゃうわ」
「はい、本当にありがとうございました」
カナデに別れを告げ、歩き出そうとしたところで、そもそもここがどこかわからないことに気づいてしまった。
「あの……ここってどこですか?」
「あら、伝えてなかったかしら? ここはイントリッヒ。あなたが倒れていた西の大陸があったでしょう? 」
おっと、その言い方だとここは別大陸という事になってしまうが大丈夫だろうか? 私、生まれてこの方大陸を出たことがないのだが……。
「そこから東にずーっと行ったところの小さい島国よ。ちょっとまってね、地図を見せてあげるわ」
そう言うと、カナデは家の中に戻ってしまった。
なんてこったい。まさか初めての大陸移動が気絶している間に終わってしまうとは。というか、スライムを倒すのがやっとな私が別の場所なんかでやっていけるのだろうか。
私がうずくまって悩んでいる間に、カナデが地図を持って帰ってきた。そして、地図を広げながら言った。
「これがあなたの居た一番大きい西の大陸。そしてそこから中央大陸を超えて更に東の小さな島が今私達のいる場所よ」
なんと、世界の端から端に来てしまったようだ。
「こんな端から端まで、帰るのには何日いるんだ……?」
「安心してちょうだい。私がどうやってここまで来たと思うの?」
はっ! ま、まさか、世界の端から端まで飛べる技があるのか!?
「ふふふ……そう、あるのよ。少し前に私の弟子が創った魔法なんだけどね、まだ試作段階で発表には至っていないのよ」
どうやら思考がすべて顔に出ていたようだ。
「すごいですね!」
「ええ、すごいでしょう。自慢の弟子なのよ」
カナデは、ふふんと胸を張ったあと、私に言った。
「さて、どうしましょうか。 今すぐ帰しましょうか? それとも、もう少しここにいる?」
「帰らせてください。あなたのお陰で、やりたいことがとっても増えました」
「そう、じゃあまたね。もしこっちきたら、ここを訪ねてね。地図をあげるわ」
そうして、印の入った地図を渡してくれた。ここはどうやら東の島の中でも下の方のようだ。
「じゃ、少し目をつぶってね」
言われるがままに目を瞑ると、徐々に体が浮いてくる感覚がした。
こっから週一です。
ちなみに世界が球体っていう案もありました。
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