スライム狩り狩り
強かった。スライム超強かった。私の弱さを実感した。
しかし! このようなことでヘタれている私ではないのだ。慣れればどうとでもなるさ。
そのままスライムの肉片とヒール草を採取し、ギルドへと戻る。⋯⋯もしかして、今までってエスメルに魔法かけてもらったりしてたのかな。いつもと違ってとても体が重い。いや、こっちが普通なのか。そうなると、優秀な魔法職がいればパーティー全体が強くなるのか。エスメルって本当に優秀だったんだな。
このままソロを続けるとなると、今までやってくれていたことも全て自分でやらないといけない。魔法を覚えてみるのも良いかもしれないな。まあ、もう少し先のことになるとは思うが。
門を抜けると、数時間前と同じ光景が見えてくる。見慣れたギルドの中には、先ほどと変わらないおっさんが受付に立っていた。
「ガルバン、ヒール草を取ってきた。精算を頼む」
そう言い近づくと、いかつい顔が少し緩んだ気がした。
「おう、レヴィーナか。⋯⋯ふむ、やはりアンタは採取が上手いな。根まできれいに残っているのに、土はほとんど付いていない」
「ああ、それはグリムのおかげだな」
私は、グリムにいろいろなことを教えられた。孤児だった私とアーウィンを養子として引き取ってくれたグリムは、私達にとても優しく接してくれたし、冒険者として生きる知識を教えてくれた。そういえば、初めてスライムを倒したときは、今よりずっと時間がかかった気がする。そう考えると、昔より少しは強くなっているんだな。
「合計で銀貨3枚だ」
「ああ、ありがとう。ついでにスライムも買い取ってくれないか?」
スライムをカウンターに乗せる。ギルドは、大体のモンスターの素材を買い取ってくれる。そこから商人が買い取って市場に回している。
「ああ、いいだろう。最近はスライムの価値が少し上がっていてな。なんでも、どこかの魔道具士がスライムを魔力タンクにできる道具を作ったとか」
なんと! それはラッキーだな。これからスライム狩りが少し続くだろうし。
「スライムの分は銀貨10枚だな」
「ありがとう、また来るよ」
■■■
あれから数日スライムを狩り続けた。そこで、なかなか一人での立ち回りもわかってきたような気がする。ソロでは、敵の注意を引いてくれる前衛もいなければ、魔法で足止めをしてくれる後衛もいない。全て自分でやるということは、それ無しで攻撃を避け続けないといけない。
攻撃を避けるには慣れがいる。スライムは直線的な体当たりしかしてこなかったから慣れるのは早かった。今ではもう——
「お、いたいた」
草陰に食事中のスライムを発見。こちらを見つける前に、全力で叩き切る!
ザシュッ!
こんなふうに、スライムは敵の気配を察知する能力があまりない。気付かれなければ、一撃で仕留めることだってできる。……おや、もう一匹いるようだ。こっちも慎重に近づいて……
「たあっ! あああれええええ!?」
避けられた。しかもよく見ると、スライムにしては色が濃い。
「まさか、進化個体か?」
魔物は、戦闘経験を重ねると自分のスタイルに合ったものに進化することもある。同じ種では数年に一回話を聞くくらいには稀なのだが。
スライムは、こちらの様子をうかがいつつ、奇妙な動きをしている。もう一度距離を詰め、斬りかかろうとすると、私の攻撃に合わせて炎の玉を吹き出した。
「なっ! 魔法を使えるのか!」
斬りかかろうとしていた体を全力で捻り、炎の玉を回避する。しかし、その隙を見逃さず、ものすごいスピードで突進してきた。なんとか剣で防ぐが、そのまま弾き飛ばされる。
この感覚、久しぶりだな。一人で初めて戦ったときも、こんなふうに弾き飛ばされた気がする。咄嗟に剣を構えれただけ私も成長はしている。こんなところで負けるわけにはいかない。
弾き飛ばされた私に追い打ちをかけるよう、もう一度炎の玉が飛んでくる。それをまた伏せるようにして躱し、一旦距離を取る。
考えろ! 進化しているとはいえ、スライムはスライムだ。できる動きは体当たりと炎魔法だけだ。どうすれば攻撃を与えられる? 考えろ、考えるんだ!
スライムは、距離を詰めると同時に飛びかかってくる。
この動き! 前と同じ動きだ。ギリギリまで引き付けると攻撃できるはず!
「てっりゃああぁ!」
ギリギリまで引き付けてから一閃。スライムは2つに分かれた。
「ふぅ、やったか」
危なかった。まさか進化個体と出会うとは。しかし、進化個体としては弱かったような……? まあいいか。素材を回収しよう。進化個体の素材なんだから、きっと高値で売れる。
「なっ!!」
スライムを回収しようとすると、分かれたはずのスライムがまた動き出した。急いで片方を切ると、更に分裂して三体になってしまった。
まさか、切るごとに分裂している!? まずい、私は今魔法も使えなければ打撃を与えることもできない。しかも満身創痍ときたもんだ。どうすれば……。
三体に別方向から突進され、一体は払えたものの、二体から攻撃を受けてしまう。まずい、追撃が来る! 衝撃に備えて、瞬時に体に力を入れる。
あれ? なんともないぞ?
視線を上げると、さっきまで戦っていたはずのスライムが爆発四散していた。
「大丈夫かい? お嬢ちゃん」
そこには、温厚そうな老婆が立っていた。手に持っているものさえ見なければ。
老婆は、片方で酒樽一つ分はしそうな特大ハンマーを軽々と扱っていた。
「ふぅ、重いものを持つと腰に来るねえ」
老婆は、振り下ろした二対の鉄の塊を持ち上げ、私の前に立った。
「ありがとう。あなたが来ていなければ、死んでいたかもしれない。本当にありが……」
体に疲労がどっと来て老婆に倒れ込む。
「あんた、疲れただろう? 今はゆっくりおやすみ」
老婆は、自分より大きな私を軽々と抱き上げ、優しく囁いた。その誘惑に抗えず、意識が遠のいていった。
おばあちゃんの武器はエルデンのバトルハンマーを巨大化したやつです。
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