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子供の島の物語  作者: 真喜兎
第二十八話 ブラック
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28-2.ブラック

 ブラックは百八十四センチメートルの体になった。完全に大人の姿に戻ったと感じたブラックは、急いで大人用の服を着る。


「服……着なくても……」


 返事もできず、服を着終わったブラックは背を向けたまま床に座った。


「ブラック」


 リールのか細い声がブラックを呼ぶ。ブラックは肩を震わせる。


「嫌なら、やめる」

「嫌じゃない、嫌じゃ……」


 ブラックは顔を伏せたままリールに向き直る。


「ど、どうすればいい」


 リールは少し考えるようにうつむき、それから聞き取りにくい声で言う。


「……じゃあ、キス……して」


 明るすぎるようにも思える月明かりが窓から差している。部屋の電気はついていなくても、リールの表情は見えた。リール自身、困っているような戸惑っているような表情だ。


 ブラックは動けなかった。以前に事故のような唐突さで、お酒を飲んだリールにキスされた事はあるが、自分からそうするなんて考えられなかった。リールに好意はある。それは自分でもはっきり分かる。でも、だからこそ、動けなかった。






 リールはそんなブラックを見ながら、少し消沈したように羽織を取った。


「じゃあ……体……触って」


 ブラックはそれを聞いたとたん、急いで立ち上がった。


「手、洗ってくる」


 足早に洗面所まで行き、入念に手を洗う。急激な展開に頭がぼーっとしそうだったが、待っているリールが消えてしまうのが恐ろしくて、やはり足早に部屋に戻る。


「ブラック……」


 不安そうに自分の名を呼ぶリールの顔を見ながら、ぐっと拳を握り、リールに近づいていく。震えているのを悟られない事を祈りながら、体を寄せていき、リールがそのまま倒れこんでいく上に覆いかぶさっていく。


「服……脱ぐから……」

「脱ぐな……脱ぐな……」


 ブラックは仰向けになっているリールの上で体を浮かせ、リールの顔の横で息を吐く。そしてシャツの下に手を滑り込ませていく。お腹をゆっくりとなぞり、胸へと手を伸ばしていく。ブラジャーに手が触れた時、リールは顔をしかめ「フ」と息を吐いた。その瞬間、ブラックは反射的に身を引く。


「ダメだ……! この体勢はダメだ……!」


 一度距離を取ったブラックに、困惑した顔をしながらリールも半分体を起こす。ブラックの名を呼ぶリールの声に無言で答え、ブラックはベッドの上で壁を背にして座り、リールを前に座らせた。リールを強く抱きしめながら、ブラックはようやく疑問を口にする。


「なぜ……だ」


 後ろから抱きしめられているリールはブラックの方を向けない。


「ダメ……かな?」


 ブラックにもリールの震えが伝わってきた。ブラックはただただ抱きしめている。


「や、やっぱりぼくとじゃ嫌……かな?」

「嫌じゃない……」


 リールの匂いを吸い込むと、少し気持ちが落ち着いてくる気がする。そしてその代わりに男の本能が目覚めてくる。






 ブラックはリールの首筋に唇を這わせる。ブラックはまたリールのシャツの下から手を入れた。ゆっくりとリールのブラジャーの隙間に指を入れていく。リールは頬を染めて「ん」と軽く唸る。リールは少し身をよじるが、ブラックの腕はリールの体を離さない。


 ブラックはリールのシャツのボタンをいくつか外し、あらわになった肩にキスをした。そしてリールのズボンのベルトに手をかける。


「いいのか、本当に……」


 ブラックは赤い顔ではあっと息を吐きながら、リールのベルトを外していく。リールは返事せず、筋張っているブラックの腕に触れる。それがYESなのかNOなのか、ブラックには分からない。分からないが手はしっかり動いていて、リールのきついズボンを少々強引に脱がせた。


 リールの太ももは柔らかくていつまでも撫ぜていたいような気になった。だが男の本能はリールの太ももの間へ指を這わせる。「フ、ウン」とリールが唸る。思わず声が出たのか、それとも嫌がっているのか分からない。リールはブラックの腕を抑えるように強く掴んでいる。


「や、やっぱりやめて……」


 リールの悲痛な声が聞こえたが、既に体中の血液が沸騰しそうなほど興奮しているブラックはその声に従えない。


「ムリだ……ムリだ……!」


 はあはあと息をしている。汗が体中から湧き出てくる。乱れたシャツとショーツ姿のリールに、心臓がどくどくするのが止められない。リールのショーツの中に指を入れる。リールは「うー、うー」と唸りながら、体を強張らせる。


 ブラックは我慢できずにリールを押し倒し、体をこすりつけた。あまりにも強く押しつけられるので、リールは痛みを感じる。


「ブラック……! ちょっと、痛い……!」


 ブラックはリールから体を離し、自分のズボンのチャックを下ろし、下着を脱ぎかけた。しかしその一瞬の間にブラックの動きが止まる。


 ブラックに何か考えているほどの余裕はない。だが別の本能……リールを想う心がブラックの動きを止める。


 ブラックはそのためらう心を振り切って、今度はリールのショーツに手をかけた。だがその手は震えている。強く歯ぎしりしているのを、リールも感じた。ブラックは震えた手のままゆっくりと手を離し、はっはっと荒く息をした。






 その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。カイナルがまだ起きていた。キッチンに水を飲みに来たカイナルは、ブラックの部屋から物音がした気がして、気になりノックをした所だった。


「ブラック、起きてんの?」


 返事のないブラックの部屋のドアを、カイナルは少し開く。窓とドアから差し込む灯りで、ブラックが背を向けて横になっているのが分かる。


「ブラック、寝てる?」


 やはりブラックは返事しない。


「……まあいいや、おやすみ」


 カイナルはあくびをしながらドアを閉じた。ブラックはリールの頭を抱くように横になっていた。辛そうに顔を歪めている。


「もう寝ろ……!」

「……パンツ替えたい」


 リールがぼそっと言うと、ブラックは少し戸惑う。


「おれのでいい、か?」

「うん……」


 リールはブラックがタンスから出してきたトランクスに履き替える。


「……ぼく、帰るよ」

「ダメだ……! ここにいろ……! いてくれ……!」


 ブラックの懇願に、リールは沈んだ表情のまま「わかった」と頷いた。ブラックはまたリールを抱くようにベッドに横になった。


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