19. 運命は変えられる
(運命は変えられる)
私は、一息ついて少し気持ちを抑えて……
「じゃー、美晴には人の運命が見えるのね……?」
「そう見えるー、だからさっきから言っているでしょう。死んでも、運命も人生も変わらないって……、桜は桜、梅は梅、松は松、命という幹は変わらないのよ。桜から梅には変わらないでしょうー、自殺する人は自殺する、貧乏人の命は貧乏人のまま、お金持ちはお金持ちのまま、お姫様はお姫様のまま変わらないの……、暦ができて紀元後二千年、人が平均して七十歳ごろまで生きたとしても三十世代、紀元前二千年古代エジプト時代末期のころね。もう文明はあったわ。それを足しても六十世代。それだけ、生と死を繰り返しても、この世の中がそれ程変わったようには見えない。もちろん、文明は発展し変化していくけど、それはただ使っている道具が変わっていくだけ。人間そのものは相変わらず貧富の差はあるし、病気も戦争もある。男と女のやることも変わらない。詰まり、桜は桜、梅は梅ということだよ。なぜ変わらないか、簡単なこと、同じ命の人間が繰り返し生まれ変わっているだけだからよ」
「でも本当にそうだったら、人が努力する甲斐がないじゃないのよ!」
私は、また語気強く言った。
「そんなことはないよー、ぜんぜん違うよ。さっきも言ったでしょう、運命に対して何もしないで、ただ従っていれば、そのまま運命は変わらない。昔の映画で『アラビアのロレンス』の中で言っていたわ。運命に従うのではなく、運命は自分で切り開くものだと……、私と同じくらい、少しはわかっている人ねー、だから努力するんじゃない。死んでも、何も変わらないのよ。また同じ命で生まれてくるのなら、ただ古い体から新しい体に入れ替わるだけだとしたら、その人生をその運命を変えるのは生きている今しかできないじゃない。運命は、生きているうちに変えるもの……」
美晴の言葉は力強かった。
ちょっと圧倒されてしまう。
ときより見せる彼女のこの熱意がまた好きだ。
「やっぱり、私に努力しろって言いたいのね!」
「そうよー、生まれたときに自殺する運命の人も、もしこの世で死にたいほど苦しいことがあっても、もし我慢して乗り越えたとしたら、そして人生を全うしたのなら、次に生まれてくるときは、自殺など考えない幸せな人生をおくれる運命に変わっているはずよ!」
「じゃ病気で死んだ人は?」
「今度、たとえ病気で死ぬ運命を持って生まれてきても、その生まれた時代には病気の治療法が発見されて、注射一本で治ってしまうかもしれないじゃない。昔の結核のようなものね。今は結核で死ぬ人は非常に少ないようにね。そして幸せに暮らして人生を全うしたのなら、次に生まれてくるときには、病気にならない幸せな人生がおくれる運命になって生まれて来るはずよ!」
「じゃあ、お婆ちゃんとお爺ちゃんは……?」
「老人ホームで寂しく死ぬ運命で生まれてきたとしても、今度は親のことを第一に考えてくれるような優しい子供に育てることができて、老後は息子と孫に囲まれて幸せな生涯をおくることができれば、また次に生まれるときは、幸せな家庭の中で暮らせる運命を持って生まれてくるはずよ!」
「すごいー、人生は変わっていくのね……」
美晴の話は、いつも落ち込んだ私を元気にしてくれる。
「もちろん、努力しだいでねー、これが反対に、幸せな人生を送れる運命を持って生まれてきても、自分の健康も顧みず、すき放題やって体を壊して死んだとしたら、次に生まれるときは、不健康で体を壊して死ぬ運命を背負って生まれてくるのよ……」
「すごい落差ね……」
「そうよー、生まれたときは、大金持ちで幸せな生活ができる運命を持って生まれてきても、どこかで欲をかいて事業に失敗して、貧乏のどん底で死んだとしたら、次に生まれてくるときは、幸子と同じ貧乏人の運命で生まれてくるのね……」
「私は、大金持ちのなれの果てってことねー」
「そうそう、ぴったしねー、でも幸子が努力してお金持ちになって死んだら、次に生まれてくるとき、最初からお金持ちかもしれないわね……」
「やっぱり私はお姫様。でも地球の人口はだんだん増えているのよ。同じ人間が生まれ変りを繰り返していれば、人口は変わらないはず……、その理論はおかしいわー」
「幸子、男にだまされて捨てられた割には、いところに気が付いたわねー」
私はもう一度布団を思いっきり蹴飛ばした。
布団は大きく跳ねて、床に落ちた。
夜更けの少し冷えた空気が、私のほてった体を包み込んで気持ちがいい。
「またそれを言う……」
「そう、地球の人口は増えているといわれているわね。このまま増え続ければ食糧危機にもなるとも言われている。でもそれは生きている人間のことで、潜在的な命の数なんて誰にも分からないじゃない。でも、私はこうも考えるのよ。確かに原始の地球に人間はいなかった。この時の口は〇人ね。そして人間は猿から進化したと言われている。命、生命というものは、時には姿かたちを代えられる普遍的なものかもしれないって……、猿から人間に代わるくらいよ。一つの命が生まれ変るということは、地球上の生きとし生けるもの、全ての姿に生まれ変れる可能性があるということだと思うわ。犬や猫の命が人間に代わっても不思議ではないと思うよー、よく人間を動物に例えたりするじゃない……、あれって案外あたっているかもしれないわね。さしずめ幸子は犬ね。幸子の命の幹の年輪には、犬だったころの性格が受け継がれているわねー」
「え、どうして……?」
「あんた、男に献身的だったから!」
「失礼ねー、人を好きになるって、そういうものよ!」
「そうかなー、だから男は、他の女にも手を出したんじゃないの? この女は俺から離れられないとか思って……、多分その男はトドだねー、ハーレムを作る、しょせん一人の女では満足できない動物だとか……」
男の話が出てきたわけではないが、私は電話を持っていないもう一方の手でおっぱいを掴んだ。
「私、そんなに犬みたいだった?」
「犬も犬、チワワって感じー、旗から看ていて哀れなくらい……」
美晴と電話をすると、話が長くなり、手持ちぶささになり、時々おっぱいを掴んで揉む。
「え、チワワって可愛いじゃん!」
「でも、男のいない幸子は猫ね……、自分のテニトリーを守って他者を寄せ付けない。抱きかかえようものなら引っ掻く……」
「それって、ただのわがまま娘じゃない!」
「ピッたしでしょうー」
「でも私、犬よりも猫のほうが好きよ!」
「やっぱしねー、血が呼ぶのね!」
おっぱいを揉んでいると、時より指が乳首に触れて、気持ちがいい。
そのうち乳首が立ってきて、パジャマとこすれあって、足のつま先までしびれるような感じが、また好きだ。