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桜咲く坂を君と[中編]

太陽の光により覚醒した、終刀刀刀刃刃(しゅうとうちかたなばじん)は田村ゆかりRXとなり、覚醒した。

そして、ポケットビスケットの再編により、世界はコーディネイターと猿により支配されてしまった。

その支配された世界を破壊出来る奴は、彼しかいない。

ロックオン・ストラトス。

この物語は、ロックオン・ストラトスとティエリア・アーデが世界の変革を成し遂げるために戦った、記録の全てである。

その化け物は、女の姿をしていた。

腰まで届くくらいに長く艶やかな銀色の髪、前髪は眉に触れるくらいの長さ。

切れ長で釣り上がった大きな赤い瞳に、すっと通った鼻。紫色のルージュが引かれたぷりっとした唇。

そして顔以上に異質な、服装。

衿の部分と長い裾に爪のような突起がついた、赤と黒のグラデーションが目に優しくない、まるで彼岸花の花弁を象ったようなドレス。

巨大な瞳が横一線に描かれた黒いスカート、すらっとしたした生足に赤いヒール。

まるで声優である井上喜久子さんを24歳まで若返らせ、死に神のようなドレスをコスプレさせたような姿である。

今なら、この錆びた鉄パイプが、そんな出で立ちをした、あの化け物に届くかもしれない。

高校へと繋がる桜並木に囲まれた緩やかな坂道の途中で、僕は死を覚悟する。

空はまるで雲を全て掃除してしまったかのように、晴れ渡っていた。

「…‥」

僕は口を閉じ、化け物に向かって一気に駆け出した。

別に一撃与えなくていい、届けばいい。どうせ倒すことなど叶わない。

あの彼岸花に似た奇妙な一張羅を、この可憐の血にまみれた体で汚せれば、御の字だ。

それでいい。

それがこの終刀刀刀刃刃の、あの化け物への、この世界への最後の抵抗だ。

それだけを目的に僕は駆け出す。

しかし―

僕は、抱きしめられていた。化け物女は念力か何か、見えない力で、僕の両足を地面へと引き寄せ、大股開きの体勢で倒れさせる。

そして、あろうことか化け物女はアスファルトに片膝をついて、そんな姿勢の僕を抱擁していた。

「なっ?!」

僕は、間の抜けた声を出してしまった。

化け物女の腕が、僕の体を抱きしめ、その恐ろしいほどに綺麗な顔が、僕の顔のすぐ隣に迫った。

「ふふふ、いい匂い」

そう言う化け物は、桜のお香のような匂いがした。

「なんなんだ…‥お前は」

訳が分からなかった。

大股開きの体勢のまま化け物女に抱擁され、冷たい腕の感覚が僕の背中に伝わる。

細い指先が、背骨をなぞっている。

「え…‥なんだッ?!」

そして、僕は再び目を疑った。

至高宝可憐しこうたから・かりんだった無数の肉塊が黒い炎をたぎらせているのが、僕を抱擁している化け物女の肩越しに見えたのだ。周囲はいつの間にか紫色の煙で覆われており、青い空は黒い雲により完全に埋め尽くされてしまった。

『刃刃グン…‥アタシとキスをシテ、一つニナリマショウ?』

そして、バラバラであった塊はまるで、ビデオの逆再生をかけた映像のように元の美少女に戻り、歩きだす。

「ふん、醜い死骸風情が、鏡を見てからものを言いなさい」

振り向かずに、僕の胸板に顔を埋めながら、まるで僕が自分のものであるかのような態度で、化け物女は冷たく言い放つ。

『貴様…‥邪魔ヲするなァ!!』

可憐は、元に戻ってはいなかった。

可憐の顔面から、六つの赤い瞳がせり出し、唇から指先ほどに大きな蜘蛛の足のようなものが突出する。

その直後、制服が破れ、全身が黒いマダラ模様に変化し、それは完璧な怪物と化した。

『ギャアァアアッ!!』

そのマダラ模様の怪物は奇怪な声で叫び声をあげ、巨大な斧のような形となった両腕を振り上げた。

「かっ―可憐?!」

化け物女と可憐だった怪物が、俺を取り合い修羅場を迎えた、と言うのだろうか。

化け物にすら、モテるようになってしまったのであろうか、僕は。

「あの醜い怪物が奴の正体。かわいいクラスメイトの姿で油断させ、あなたを狙っていたのよ。」

慌てる僕に向かって、化け物女は対照的に淡々と説明をしていた。

なるほど、マダラ模様の怪物が、可憐の姿をして僕を狙っていただけなのか。

だから、僕に急接近していたのか。

では僕は、間一髪の所を、この化け物女に助けられたというのか。

ふざけるな。

僕は、思った。

ではお前は、僕を助けるために現れたとでも言うのか。

「そうよ、私はあなたを助けるために26583の世界を巡っていたのよ―」

ふうっ、と耳元に吐息をふきかける化け物女。

ずぞぞっ、という感触がする。

思考を、完璧に読まれていた。

しかし驚いている暇もなく、更に奇怪な事が起こった。

「ふふふっ、感じるでしょう?私も感じてるわ。欲しいの、貴方の刀が―」

化け物女は、右手で僕の背中から物干し竿のように長い刀を引き抜いたのだ。

と、同時に僕の体の中に穴が空いたような、まるで臓器が一つ駆け落ちたような感覚に襲われる。

どこに入っていたのだろう、と僕は一瞬考えてしまった。

どうせ考えても無駄だというのに。

そう、無駄な抵抗だ。

もう、全ての事態が、僕の理解の範疇を逸脱し、世界があまりに目まぐるしく変化をし過ぎていた。

化け物女の恐怖と、その左手と唇が与える正反対な快楽。

そしてクラスメイトだと思っていたものが、怪物だったという受け入れることしか出来ない真実と恐怖。

そして体から出て来た刀。

もう思考は、完全なパンク、エンスト、廃車状態であった。

「ふふふ、耳ぃ…‥甘いわ」

そして、化け物女は振り向きもせず、僕の耳を甘噛する。

と全く同時に、右腕で背後にその長い大刀を振るった―

『?!』

呆気ないものであった。

まさに一瞬で、化け物対怪物の勝負はついてしまった。

一撃、化け物女が背後に振った刀が、マダラ模様の怪物に突き刺さる。

怪物は黒く輝く粒子と化していき、今度は完全に消滅した。

僕の目には、そういうような感じにしか映らなかった。

「お前は…‥何者なんだ?」

その化け物女に、僕は聞く。

体は、もう自分の意識ではもう自由に動かなかった。

多分、パイプを持って化け物女に最後の抵抗をした時に、全ての力を使い果たしてしまったのだろう。

まるで、30分ほど正座したような感覚が全身を覆っているのだ―

「私の名前はエルーマ。はじめまして、人外の中の人外、世界を終わらせる存在、そして――」

化け物女だからって、好き勝手に言ってくれる。

化け物女に、人外呼ばわりされる言われはない。

確かに、背中からは刀が出てしまったが。僕は普通の高校生だ。

だからこそ、今、思考も気力も何もかもが限界なのだ。

普通でなければ、とっくにヒーローに変身してお前らをライダーキックで倒してくれているわ。

「ふふ…‥んっ」

「ん―――?!」

エルーマ、と名乗った化け物女は、頬を赤らめながら僕の唇を奪う。

ぷりっとした唇の感触から、痺れるような感覚が広がる。

そして彼女は、僕の右手に手を添え、指先の感触を好き勝手に楽しんでいるようであった。

何でこんなにしてくるんだろう、そして何故僕も拒まないのだろう。

「そして、私の旦那様、終刀刀刀刃刃君」

名前を呼ばれた。

そしてエルーマは長い舌をぺろっと出すと、二つの唾液の匂いがする吐息をほうっと漏らし、右手に握られた刀を僕の背中に突き刺す形で、戻していく。

すると、僕の体の中の何かが欠けていた感覚が無くなり、額にどっと汗が出る。

空を覆っていた黒い雲は消え、元の青空が広がっていく。

桜の花びらが、風に吹かれて舞い散る

「わけ…‥わからねえ」

僕は大股開きのまま、坂道の途中で背後に倒れた。

体の力を使い果たし、あまりに様々な事態が起こってしまい、それを正確に把握、処理出来なくなっていた僕は、完全に意識を失ってしまったのだ―


――


気絶してしまったようだから、あなたの

意識に直接語りかけることにするわ。

これなら、かなり一方的に説明出来るから便利なのよね。

しかし、気絶するほど気持ちのいいキスだったのかしらね。

うふふ、からかってごめんなさい。

私は化け物女、エルーマ。いやいや、本当は化け物などではないのよ、もっと高位の存在。

刀を納める、「鞘」としての存在。

あ、私の説明をする前に、まず貴方の説明をしなければいけなかったわ。

先程も言った通り、貴方の方が私よりよっぽど「特殊」なのよ。

貴方は、「終刀刀刀刃刃しゅうとうちかたなばじん」は体の中に五つの刀を持っているの。

理由なんて聞かないで、誰も知らないわ。

一つが「惨殺之大刀ざんさつのたち

さっき私が使ったやつね。

あらゆるものを殺すわ、それこそ神や悪魔もね。

二つ目が「消死刀けしかたな

その名前の通り相手の存在を完全に消す刀よ、全ての平行宇宙に存在する相手を全て消すわ。

この刀は、刃が見えないの、回避はほぼ不可ね。

勿論、消されたら元には戻せないわ。

三つ目が「返死刃かえしば

相手の攻撃を完全に返す刃よ。これで防げない攻撃はないわ。

因みにこれは貴方が本当に死にそうな時にも勝手に発動して、勝手に危険を排除するわ。

まあ、私がいる限り使うことはないでしょうけどね。

四つめが「幻無刃げんむじん

これは、世界を移動するための刀ね。

何?

能力被ってるのがあるし、あまりに厨房くさいですって?

ふふふ、確かにそうね。

そうかもしれないわね。

でもね、事実よ。

全て、あなたの体の中に入っているわ。

そして、この四本までなら、貴方はまだ人外中の人外、世界の規格から大きく外れた存在で済むのよ。

この四本なら、あなた達人間が神と呼ぶような存在の更に上位の存在が、数億の犠牲を払えば何とか対処出来るの。

でも、問題なのは五本目。

終刀刀刀刃刃の体に隠された、最後の刀。

その名も「終刀おわりかたな」。

さっきの君のクラスメイト、至高宝可憐とかいう女に化けた怪物も、この刀が目当てね。

この刀だけは、本当に危険なのよ。

なぜなら、使ったら全てが終わるの。

比喩ではないのよ、刃刃君。

本当に全て、終わるの。

さっき多次元宇宙とか、平行宇宙という言葉を出したでしょう?

もしも、の世界よ。

しかし、その無限に存在するもしもの世界すら、全て一瞬で終わらせることが出来るのが「終刀」なのよ。

イメージで言うなら、全ての世界の強制終了ボタンね。

怖いでしょう?

でも安心していいのよ、刃刃君。

私がいる限り、その刀は使わせないわ。

なぜなら、その「終刀」はあなたの股についているのよ。

そう、それが「終刀」。

ふざけてなんかいないわ、私は本気よ。

だから無数の怪物がクラスメイトに化けてあなたを狙っていたのよ。

まあ、あなたに触れる前に全て私が殺してあげたけど。

ん?

安心しなさい、本物のクラスメイトは無事よ。

でも、これで本当に危険なモノであることが分かったでしょう?

あなたがそれを女性に対して使った時、世界は全て終わるわ――


ロックオン・ストラトスはツインドライブ搭載機、00デュナメスライザーを駆り、真のイノベイターであるシュタインベルグ・カウザーが乗る最強のベルセデウスガンダムと激突する。

彼は、リボンズの自我を暴走させ、イオリア計画を歪ませた、世界の真の歪みである。

「ロックオン!気をつけろ!そいつは普通じゃない!」

新たなMSラファエルガンダムを駆り、ガデッサ部隊を撃滅し、道を開くティエリア。

「ああ!分かってる!シュタインベルグ・カウザー、俺はお前をー狙い撃つぜぇ!!」

ロックオンの叫びと共に、トランザムデュナメスライザーはGNスナイパーライフルを構える。

その標準に、ベルセデウスガンダムが映る。

「やってみろソレスタルビーイングのガンダムマイスター!!この私を、シュタインベルグ・カウザーを世界から排除してみせろぉ!!」

今、月面を舞台に、最後の戦いが始まろうとしていた―

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