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桜咲く坂を君と[前編]

普通の青年、終刀刀刀刃刃しゅうとうちかたな・ばじんは幼なじみの東園寺他界さいおんじたかいの紹介でクラスの美少女、桂包丁裏葉かつらほうちょううらはと付き合い始めた。

しかし他界も刃刃のことが好きだと言うことを気づいてしまい、刃刃も魔がさしてしまい、関係をもってしまう。

そして、英雄王である美少女サイバーに助けられ「直死の魔眼」に目覚め、無限のメモリー「インフィニット」を巡るオルタネイテェブ聖杯対戦に巻き込まれていくことに…‥

僕の名前は、終刀刀刀刃刃しゅうとうちかたな・ばじん

変な名前と言ってくれるな、知ってるよ。

僕は神奈川県あかつき町にある公立アヴァランチ学園高等部の二年生で、普通の、ごく普通の少年である。

でも、僕には今までコンプレックスがあった。

僕は未だに女性と付き合ったことがない、悲しい運命の少年である。勿論、童貞である。

女の子の体に触れたことが、ない。

しかし、最近おかしなことが起こっている。

妖精が見える魔法使いになりたくないな、と思っていた僕に、ついにモテ期が来たのである。

クラスの女子全員が僕に優しいのだ、僕の勘違いではなく、熱い視線が学校ではいつも突き刺さるのだ。そして、今日も―

春、別れと出会いの季節。

いつもと変わらない朝、学校へと繋がる幾つもの桜に挟まれた坂道を、カカシのように縦に長い体つきをした青年が歩いていた。

青年はあの山本裕典をデチューンしたような顔をしており、肩まで伸びた長髪をかきわけ、寝ぼけ眼をこすっていた。

モテないオーラが、黒い学ランに包まれたそのカカシのような体漂う。

その青年こそ、僕である。

「ふあ〜今日の授業も、授業なんてなくなればいいのに」

でも、授業もクラスの女子に優しくしてもらえるから、あってもいいかな、と思った。

「うふふ、おはよう刃刃君!一緒に学園行こ?」

僕の背後からまるで鶯のような綺麗な声が響き、僕の眼前に少女が回り込む。

この少女の名前は、至高宝可憐しこうたから・かれん

可憐は綺麗な金髪をポニーテールを揺らし、モデルのような体型で僕に近寄る。

二重の瞳が、真っ直ぐに僕を見ていた。

「あ!…ああ!俺で良ければ」

僕は少しどもりながらも、嬉しそうに答える。

可憐は成績優秀で品行方正なお嬢様だが、最近よく僕に話し掛けてくれるのだ。

まさか、僕に好意を?と思っていたが、その予感は今この瞬間、確信に代わった。

「というか…‥俺でいいの?」

一応僕は確認をとる。人違いかもしれないからだ。

確かに僕は山本裕典をデチューンしなような顔をしているが、彼女にはもっと釣り合う男性が五万といるはずである。

解りやすく説明するなら、彼女のスペックはMSで言うならばキュベレイ、僕はせいぜいジムである。

解りにくい?ごめんなさい。

「うん!!というか…‥刃刃君じゃないとだめなの、お願い!」

どうやら人違いではないようである。

続いて、ドッキリじゃないよな…‥と、僕は不安になる。

だが、こんなモテ期、満喫しないテはない。

「な、なんだか嬉しいや!行こう行こう!…‥至高宝さん?」

一応、周囲を見回して、僕は答える。

そして、至高宝と、姓で呼ぶ。

人生始めてであった、女子と一緒に登校することは。

「ふふっ、よかったぁ…‥でも、名前で呼んで、刃刃君?」

可憐はニコッと笑うと、僕のすぐ隣に寄り歩きだした。

「え?あ…‥うん、可憐さん」

彼女の要求に答え、名前で呼ぶ僕。

舌が、甘い名前で溶けるところであった。

そして僕も彼女の歩幅に合わせて、歩きだす。

お互いの体が、近かった。手を伸ばせば、彼女のすらっとした手に触れてしまう距離。

「ねえ、刃刃君?」

可憐が更に近寄り、僕は赤面する。

「なっ?ふははっ、なんでしょう可憐サン?」

彼女に触れないように慌ただしく腕を組み、余裕の表情をしてみせる。

「刃刃君はどんな女の子が好きなの?」

にこにこ笑いながら、彼女は僕に問い掛ける。

僕は耳を疑った。

「?!」

声にならない、声が出て、一気に挙動不審になる。

何を言っているのだ?と僕は思った。

「え、えっと〜ですね、ん〜」

僕は困った。

普段からモテてる気の利いた人なら、「可憐さんみたいなおしとやかな娘かな」と、返せるのだろう。

だが、スペックの低い僕にはそんなスキルはない。

「そ、そういう可憐さんは?」

と、これが精一杯の返しであった。

「ん〜それは、私に言わせるの?刃刃君…‥」

赤面して立ち止まり、静かに俯く可憐。

そして、こほんこほんと咳ばらいして、意を決したように顔を上げた。

僕といえば、先ほどから全く動けなかった。

よく考えてみたら、もし、もしの話であるが。

あくまでもし、もし彼女が僕のことを好きだとしたら、彼女に告白を要求するような行為ではないか。

僕は自分が必死で返した言葉の意味を、噛み締める。

「それは、ね…‥」

だが、彼女は口にしようとしている。

おそらく僕が、例えに出した、告白の言葉を。

彼女と同じように赤面し、ゴクリ、と生唾を呑んでしまう。

横目でちらっと一目を気にする。誰もいない。

不思議なほどに、誰もいないのである。

「それは…‥」

僕は口を開き彼女の言葉をオウム返しにしていた。

「それは…‥ね」

「!?」

彼女は、僕の手を掴み真っ直ぐに見つめる。

僕の心臓は、爆発しそうになっていた。

そして彼女は唇をまるで雛鳥のように突き出し、一気に接する。

「え?!」

僕は心臓が爆発しそうになった、いきなり過ぎである。

告白ですら、こんないつもの朝の登校時

には早過ぎるし、何より彼女と僕はあまり話したことはない。

何もかもが早過ぎた、少女漫画で言えば、新連載の巻頭カラーでベッドインしているようなものであった。

先程からかなり地の文が無駄に長いが、この瞬間を僕がかなり長く感じているという、スローモーション的表現なので、悪しからず。

そして今、桜が舞い散る坂の途中で、名前の通りに可憐な少女が僕の唇に向かってキスを―

「刃刃く――――」

そして。

そして、有り得ないことは起こらなかった。

いや、有り得ないことは起こった。

しかしその、有り得ないことは、彼女の突然のキスではなかった。

事態は、一瞬であった。

「は…‥あ?!え…‥?!」

僕は目を疑った。

そして、次は眼球とこの頭蓋骨の中に収められた脳みそを繋ぐ視神経を疑った。

次に、脳自体を疑った。

確かに僕の頭に入っているのは、毎回期末テストで追試ギリギリのお粗末な脳みそである。

だが、まさか現実に起こっている事象を正確に把握出来ないほどに異常をきたしているとは、自分では思えなかった。

勿論、僕は尿検査にも引っ掛からないはずだ。ならば、今この自体は何なのだ?

彼女がキスをする所までは納得出来る。

だが、その次の瞬間からだ―

いや、もしかしたら最初から夢だったのかもしれない。

夢オチという奴だ、それならば全ての説明がつく。

そもそも、僕がモテること自体が嘘だったのだ。

全てが作り話。

そんな都合のよい展開、小説サイトでちびちびラノベモドキを晒している奴の妄想に過ぎない、ということなのだ。

そう、思うことにした。

。全ては夢、幻、妄想だったのだ、と。

しかし、目の前の事象は現実であった。

なぜなら―

「うそ…‥だろ!?」

そう、僕は夢から覚めないのである。

覚めない夢ならば現実、と思うしかないのだ。

僕は、やっと声が出ていた。

そして、目を擦る。が、震える足は姿勢を崩し、カカシのような体はそのままその場に尻もちをついた。

彼女は、至高宝可憐は僕と唇と唇が触れる瞬間―

真っ二つに割れたのだ。

切り裂かれた、と表現した方が正しいのだろうか。

全く見えない刃物のようなものが、まるで刺身になる魚よろしく、彼女の体の中心から、鼻、ヘソ、股間の真ん中という真ん中を通過したのだ。

「こ…‥こんなの、こんなの…‥ありえない」

その結果、彼女は周囲のアスファルトを赤く染めて、尻もちをついた僕の眼前で、二つの生暖かいタンパク質の塊になっていた。

血飛沫を浴び、僕の学ランの黒は滲む。

「な……‥なん、なんだ?」

恐怖のあまり叫ぶことすらままならず、同じような言葉を繰り返す。

もし叫んだとしても、誰もいないのだ、桜が両端に並ぶ一直線の坂の周りに。

恐怖の中ですら気づくことが出来た、というか、やっと気づいたのだ、人の気配が、ない。

僕は、腕と足を使い地面を這い、腰を抜かした態勢のまま、可憐だった塊から遠退く。

立ち上がることすら出来ない。

すると、肉塊のすぐ後ろから少しずつ、人の形をした影が姿を現した。

「ふふふふ…‥汚い星の生き物は、散る様も汚いのねぇ」

恐らく、可憐を真っ二つにした化け物は低い声で笑った、まるで殺戮を楽しむかのような、恐ろしい口調。

その声に僕は戦慄を覚えるとともに、化け物の輪郭がやっとはっきり見えた。

その化け物は、女性であった。

腰まで届くくらいに長く艶やかな銀色の髪、前髪は眉に触れるくらいの長さ。

切れ長で釣り上がった大きな赤い瞳に、すっと通った鼻。紫色のルージュが引かれたぷりっとした唇。

「ふふふ…‥」

そして顔以上に異質なのは、その服装である。

衿の部分と長い裾に爪のような突起がついた、まるで彼岸花の花弁を象ったような赤と黒のグラデーションが目に優しくないドレス、巨大な瞳が横一線に描かれた黒いスカート、すらっとしたした生足に赤いヒール。声優である井上喜久子さんを24歳まで若返らせ、死に神のようなドレスをコスプレさせたような姿である。そして露出された胸元や生足と相まって、この存在が普通の女性なら妖艶さすら醸し出すのだろうが、僕はあまりに人間離れしたその化け物に恐怖するしかなかった。

「あっ」

その女性の姿をした化け物は、しまった、というような表情で、思い切り肉塊を踏み潰していた。

あまりにリアクションが簡素で、人間の命が、その化け物にとってまるで小石に躓いたくらいの軽さであるように思えた。

「いやだわ、一張羅が汚れてしまった。気に入っているのに、コレ」

くすす、と長い指で口を抑え、ヒールにへばり付いた臓物をアスファルトに擦り付け、化け物は再び僕に向かって歩き出す。

「どう、落し前をつけてくれるのかしら」

化け物とはいえ、とても理不尽なことを言う。

そして、冷たく笑ったまま、僕の眼前、3メートルくらいの距離に接近し、赤い眼で真っ直ぐに見つめてきた。

僕は戦慄すらする暇がない、まるで全身の血を全て吸い付くされたような感覚であった。

化け物の瞳に、腰をぬかしたまま動けない僕が見えた。

殺される。

確実に、殺される。

僕は、死ぬ。

シヌ。しぬ。息をしなくなる。死んでしまう。

走馬灯が回るのを、感じた。様々なことを、思い出していた。

僕はまだ人生の中で楽しい事などまるでなかったのに、真っ二つにされて、血飛沫で、冷たい肉の塊になってしまうのか。

僕は死ぬのか。

死んだら、どこへ行くのだろう。

雑然と考えてしまう。

多分、可憐と同じように切り裂かれ、血飛沫を散らしながら死ぬのだろう。

そうだ、そしたら多分天国に行くのだ。

まさかこんな死に様で地獄に堕ちるほど、神は理不尽で残忍ではないだろう。

今のままでも十二分に理不尽極まっているというのに。

もし天国に行ったら、なんで僕を好きになったのかを、可憐に聞いてみようと思う。

そしてあわよくば、天国で童貞を卒業するのだ。

そう、死ぬのだ。

受け入れよう、仕方ないのだ。

どうせ人はいつか死ぬ。

美しい女性の皮を被った、恐ろしい化物を前にして、僕は気を失いそうになる。

受け入れよう、この死を―

だが。

しかし。

だがしかし、僕は嫌であった。

このまま終わるのは、嫌であった。

納得できない。

どうせ死ぬのだ。

僕は、もう死ぬのだ。ならば最後に、せめて最後に一矢報いてやろう、と思った。

世界は理不尽である、僕を童貞のまま殺戮するのだから。

僕はその世界に対して、最後に何かを残したかった。

開き直った僕は、周りを見渡す。

そして奇跡的に、アスファルトの道路の端の並木の中の一本の桜の木の下に、鉄のパイプが打ち捨てられていた。

もう恐怖などないのだ、僕は死んだのだ。この後、全ての爪を剥がされようが、眼前でハラワタを全て食い破られようが、怖くはない。

「!!」

声にならない声を出していた、おそらく断末魔になるであろう叫びである。一瞬で、声が出なくなった。

あと一歩の所で手が届くという至近距離まで迫る化け物を前に、僕は立ち上がり、横に跳んだ。

「まあ、すごい」

呑気な声を出し、感心したように釣り上がった目を見開き、胸の前で手を合わせる化け物。

奇跡的に桜の下にあるパイプに、奇跡的に手が届き、僕は横っとびの体を上手く着地させられず地面に転がる。

痛くはなかった。アドレナリンなどのせいであろうか、もう感覚がほぼ無かった。

多分、火事場のクソ力というやつだ。

僕は立ち上がり、パイプを構えた。

多分普通の人間が出していない百パーセントの潜在能力を、今なら出せる気がした。

今なら、あの化け物に届くかもしれない。

この、錆びた鉄パイプが。

「…‥」

僕は口を閉じ、化け物に向かって一気に駆け出した。

別に一撃与えなくていい、届けばいい。どうせ倒すことなど叶わない。

あの一張羅を、この可憐の血にまみれた体で汚せれば、御の字だ。

それでいい、それなら奴もさぞ不快になるだろう。

だがクリーニング代は出してやらない、その前に華々しく絶命してやる。

それがこの終刀刀刀刃刃の、あの化け物への、この世界への最後の抵抗だ。

それだけを目的に、僕は駆け出した――

聖杯対戦は終焉を迎えたが、刃刃は最後のサイクロンジョーカーアンテットを倒してしまい、自分自身がルナジョーカーアンテットになってしまった。

その隙をついてゴルゴミとクライスシ帝国が作り上げた最強の存在、シャドウブルームに殺されてしまう。

そしてサイバーも悪魔大将軍が率いる大悪魔超人軍団の悪魔大超人バッファローカイザーのトルネードミキサーによりバラバラにされてしまう。

もう地球のピンチと思われたその時、刃刃に埋め込まれた超キング石が太陽の光により覚醒、刃刃は田村ゆかりRXとなり、覚醒する!

そして集まったキン肉ライダースーパーフェニックス軍団とディケインド率いるノリダー軍団と共に、死ね死ね団撲滅のためにポケットビスケットの再編を、コンボイ司令官と共に画策するのであった。

しかし、東京上空を数百のゼオンライマーが襲う!

この状況を打破できるのは、奴しかいない!

頼む!ウォーリーを探せ!

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