187525の回避
主人公、全武鮭留は、普通の高校三年生である。
しかし彼の作った部活の部員二人が、告白した高校二年生の少女、甘味狗久に病院送りにされ、昼休みの学校は戦場と化した。
そして放課後となった今、再戦の時が来ていた。
PM6:30
旧校舎を舞台に、再び超小規模な若者達の戦争が始まる。
襟までまっすぐに伸びた金色の髪、緑色の切れ長の瞳。
某レグザのCMの某福山を劣化させたような顔面。
まるで戦闘機にように引き締まった長身。モデル体型と言っておこう。
そして、それを包む、澄み切った空のように青い学ラン。特注品だ。
また、何事に対しても毅然とした態度で臨み、卑怯な事や筋の通らないことを嫌うため後輩からは「王子」と呼ばれている。
都内某所にある、都立セントガイア高等学校の高校三年生である。
私は、この高校にある「センシティ部」の部長。
センシティ部というのは私が作った部活で、何でもやる部活である。
人生相談や、読書、サイクリング、アニメ観賞、ソフトボール、バトミントン。
蹴鞠、踊り念仏、選挙活動、同人誌の作成、モンハン、料理。
ジェンガ、ルービックキューブ、手話。
ラテンダンス、パラパラ(死語)、カピパラ、蒟蒻ダイエット、ブートキャンプ、登山。
たまごっち、ガンプラ制作、アマチュア無線、ネットサーフィン、ミクシィ、グリー、パクロス、マクロス、サザンクロス、ガンダム、イデオン、ザブングル、ダンバイン、エルガイム。
とまあ、各人が思いついた事をやる部活。
帰宅部に近いが、帰宅部ではない。
この学校には、帰宅部はない。
先生方の思惑により、必ずどこかしらの部活動に入らなければいけないこの学校で、私が作り出したのが、このセンシティ部だ。
倒れても、ただでは起きない男とよく言われる。
月に一度の贅沢は、『ハーゲンダッツ』をスーパーではなく、コンビニで買うこと。
好きな風景は、学校の屋上から眺めるビル街。
好物はたこ焼き、嫌いな食べ物はワサビだ、よく潟里からは子供っぽいと言われるが、あれは人間の食べ物じゃない。
そして恋愛事情に凄まじく鈍感な男。
身長177㎝。
体重58キログラム。
パンチ力1t。
キック力3t。
走力は100mを8秒。
身長と体重以外の能力値は、電波人間タックルと同じスペックである。
それが私、全武鮭留だ。
この物語は「戦闘機王子」にして、「センシティ部」の部長である私の物語の続き。
長々とした説明ですまなかった、本編再開といこう。
すっかり暗くなってしまった旧校舎の廊下で、俺は目を覚ました。
まだ鈍痛がするが、それでも私は復活をした。
時計を見たら、既に六時の後半になっていた。
なぜ、ぶっ倒れていたのか、それは…
今まで傍にいてくれた少女、噺家潟里の好意に、接吻されるまで気づかず、その事に逆上した彼女にボコボコにされたからである。
なんとも不甲斐ないと、自分でも思う。
友達だと、ただの仲間として、彼女を認識していた。
それ以上に考えられないわけでは決してないのだが、どう接すればいいか、どう切り返していいか、わからない。
そういう事に、私は凄まじく鈍感なのだ。
もう言い訳のしようがない。
「潟里の好意に気づかないとは、私は…なんてダメな男なのだ」
今はそのことより、優先すべき事がある。
私の作った部活『センシティ部』の部員二人を病院送りにした少女、甘味狗久。
彼女と、再戦しなければならないのだ。
助けなければならないのだ、そのひたすらに武装された、心を。
私は、老朽化しすぎて、腐りかけた廊下を駆け抜け、教室に向かった。
「遅かったね。貴方がごちゃごちゃとしているから、帰ろうと思ったけど」
甘味狗久の声だった。
彼女は薄汚れた教室の教卓の上に立ち、私を見下ろしていた。
黒板には、新しいチョークでデカデカと『完全粉砕』と書かれていた、ちょっと怖い。
「それはすまなかった、それについてはこちらは謝罪するしかない。しかし…‥フルアーマー、といった所か」
狗久は黒いガスマスク、黒いヘルメット、そして黒いマントに身を包んだ、黒尽くしの出で立ちであった。
恐らく、マントの中には無数のポッティーのストックなどがあるのだろう。
何故だ。
何故なんだ、甘味狗久。
お前はどうして、なぜ闘争本能を剥き出しにしようとする。
この私の戦いは、ただの敵討ちを越え、友人と一人の少女の想いを背中に受け、ただの私闘ではなくなった。
そう、私はこの女を助ければならないのだ。
なのに、なぜ君はそこまでして自分を守ろうとするのか。
なぜ、そこまで武装する必要があるのか?
私は知りたい。
だが今は聞いても、教えてくれないだろう。
彼女に全力で挑み、勝つ。そのことによってのみ見える、真実があるというなら――
「私は今、駆け抜けるだけだ!!」
私は、旧校舎の木造の床を踏み抜き、一気に走り出した。
一直線に、ただ一直線にフルアーマー状態の甘味狗久へと。
「全武鮭留!!私は全力全霊をもってあなたを粉砕する!!」
狗久は、ガスマスクとヘルメット、そしてマントを剥ぎ取り、一気に翻した。
なるほど、そうきたか。
「マントに搭載したポッティーを全て放出するとは!!」
翻した黒いマントの中に装備されていた数千にも及ぶポッティーが、教室内に飛び交う。
武器のストックをチマチマ小出しにするのではなく、一気に使用し畳みかける。
たしかに、いい戦闘センスをしている。
以前も似たようなことを思ったが、勝負の世界は常に、絶対的に『先手必勝』だ。
1000の技があるなら、先にそれを何の躊躇いもなく出せる奴が勝利するのである。
ウルトラ兄弟やライダーで言うなら、戦闘開始三秒ぐらいで光線技かライダーキックを放つ、ということが、重要なのだ。
「だが、しかし!」
私は教室の床を蹴り天井に跳ぶ、そして次は天井を蹴り、床へ跳ぶ。
私はポッティーの段幕を全て髪一重で避けつつ、上下左右前後に加速する。
軌道だけでいったら、スーパーボールのような動きをとりながら、私は少しずつ狗久との距離を縮めていく。
しかし、彼女の放つポッティーの弾は依然、凄まじい勢いで放出されていき、尽きることを知らない。
「すごい!この技を避ける人はあなたが初めて!でも、もう駄目―――もう消えてよ!!」
彼女はポニーテールを振り乱し、その中に仕込まれたポッティーをも放出する。
しかし、私は回避する。
「私は悪くない!!仇討ちなんてされる覚えなんてない!!だから貴方は、消えてよ!!」
更に、袖の部分から更に弾幕を放射する。
しかし、私は回避する。
「最初は確かに敵討ちだった!!センシティ部の部員二人を病院送りにされた私の、怒りに任せた死闘だ!」
数百を越す製菓の弾丸が、教室の中を弾け飛ぶ。
だが、私は回避する。
「何で!?何で一発も当たらないの!?」
そう、全てを、紙一重で避ける。
それが、今、私に出来る全て。
「だが今は違う!お前は助けを求めている!その弾幕を越えて、自分を助けてくれる誰かを、お前はずっと待っている――そう、私は感じたのだ!!」
「そんなことなんて…私は!!」
彼女の顔は確実に戸惑っている。
が、体は依然、弾幕を放射している。
全自動で迎撃しているというのか、この少女は。
「だから、私は―――この『戦闘機王子』の全武鮭留は、負けるわけにはいかないのだ!!」
そう、私は救いたい、この少女の心を。
私の言葉に戸惑う彼女の弾幕が、やや薄くなる。
と、言っても比較的、放出される量が減少しただけであり、気を抜いたら、ハチの巣になってしまうのだが。
「私は…‥私は!!これで終わりにする!!私の最終必殺!!」
彼女は両腕を構え、一気に凄まじい量のポッティーを放出した。
それは、弾丸というより黒い壁となって、私に向かってなだれ込んだ。
「十万製菓衝撃弾!!」
眼前に迫る、回避不可に思えるチョコレートの弾幕の壁。
最終必殺と名が付いているだけあって、さすがに、普通に回避することは不可能であろう。
「ならばこちらも、奥の手で応えよう!!」
目の前を覆い尽くさんばかりのポッティーを前にして、私は決意を固める。
今こそ、彼女の全力全開に、私の最終必殺で応えるべき、と。
「制服全脱衣!!」
叫ぶと共に私は、制服を全て脱ぎ去る。
と、言っても全裸になるわけではない。
体にピッタリとフィットする黒いインナースーツのみを上下に着た私は、今まで以上の加速力を手にする。
このスーツはオリンピックで水泳選手が着ていたレーザーレーサーのように、空気抵抗を限りなく減らすための特殊な素材で出来ており、全裸よりも速い加速力と、それにより生じる衝撃波から私を守る防御力を私に与える。
そして、この次の技が本当の私の絶技。
「超反射戦闘機解放!!」
私は胸の秘孔を、自らの右の人差し指で突く。
すると、私の体中の神経に稲妻が流れ、私の感覚器官はそれ程までに研ぎ澄まされたのだ。
そして、全身の色がが赤銅に変わった私は、一気に加速した。
そう、インナースーツはこの尋常ではない加速力に耐えるために着こんでいるのだ。
「閃光無限加速!!」
私は加速する。
教室を覆い尽くし、壁となって迫るチョコレートの弾丸を、全て避ける。
まるで、弾のわずかな隙間に針を通すかのように通り抜け、加速し、加速し、加速し、加速し更に加速する。
そして、技の名前通りに閃光と化した私は、狗久に肉薄した。
ほぼ、零距離であった。
「なっ、早!?」
と狗久が驚いた瞬間には、もう勝負は決していた。
既にポッティーを放つ攻撃の起点である両腕は、私が完全に抑え込んでいる。
そして袖と手の甲の間にある隠し武器である太い杭状のポッティーも、砕かせてもらった。
「私の、勝ちだ。」
私は先程の無数の弾の中から拝借したポッティーを口に含み、そのまま狗久の口に挿入した。
ポッティーを口の中に突き刺せば、勝利。
彼女の宣言通りの方法で、勝利させて頂いた。
こんなにも少女と零距離で肉弾戦をするほど、私はサディステックで人間から離れた人格を持ち合わせてはいないし、そもそも、彼女を傷つけてしまっては、この戦いの意味がない。
これで勝負が、ついたのだ。
ポッティーを口から離した、このままではただのポッティーゲームになってしまう。
王様ゲームでよくやる、ポッティーを両端から食べていくという、あれだ。
「もう、自分をこんな手段で守らなくていいんだ。」
ボロボロになった教室の床に、ぺたんとへたり込む狗久。
「……」
甘味狗久はポッティーを口に含んだまま、黙って俯いていた。
「センシティ部に入ってみないか?そうすれば私が、私達が、仲間がお前を全力で守る。センシティ部は自己責任において、何をするにも自由な部活だ、まずは体験という形でも構わない、とりあえず、私たち若者は互いに接点をもつ事、多かれ少なかれ、それが大切なんだと思う。とにかく、もう、独りで全て抱え込むな」
言いたい事は、全て言った。
あとは狗久の出方次第だ。
彼女は頷き、そして…
彼女は一気に立ち上がり、私に向かって飛び掛かった。
回避、出来なかった。
「ありふぁと、ごふぁいます(ありがとうございます)…」
ポッティーを口に含みながら感謝の言葉を口にして、押し倒した私に抱き着く狗久。
私は、頭が真っ白になった。
意味が、分からない。
「なっ?!」
接吻していた。
まさにポッティーゲームのように、彼女の口に含まれたポッティーは私の口に挿入され、彼女はそれをパクパクと食べ、接吻に至っていた。
そう、至っていたのだ。
気づいた時には、既に接吻していた。
「んっ!?」
私は彼女を引き離す。
本日二度目の、しかも二度ともいきなりの接吻だったため、思考がパンクしていた。
「なっ?!どっ…‥どういうことだ甘味狗久?!」
「私は貴方に、惚れました。だから…って、女の方から言わせないでください」
赤面しながら俯く狗久。
すまん、どうやら女の方が言うまで気づかないのが私のキャラ設定らしい。
「私、小学生の頃にクラスの男子に告白されて…私が断ったら逆上されて、本当の目的は『結婚したら、狗久のお父さんの会社のポッティーが毎日食べられそうだからっ』てぶっちゃけられて…私、ショックで」
そう言えば、甘味製菓という日本でも有数の製菓メーカーの会社の本社がこの学校の近隣にある。
甘味狗久は、その会社の令嬢だということなのか。
ああ、だからこんなにポッティーがあるのか、製菓を武器にするのはいただけないが。
「酷い小学生だな、そいつは」
「それで他人が怖くなって、ポッティーで私に言い寄る男の人達から自分を守っていました。怖かったから」
彼女は抱きついたまま、針山と化した教室を見回した。
なるほど、彼女の過剰なまでの攻撃はそういった過去があったからなのか。
「でも、そんな弾幕を壊してくれたのは、貴方だけでした、嬉しかった…‥」
だから接吻したのか、なるほど。
先ほど起こった事象を、冷静に考えようとする私。
しかし、臆面もなく、思いのままに一気に唇を奪うのだから、少女というものは恐ろしい。
まあ、我々男子がただただヘタレなだけ、という考え方もあるが。
「あなたの部の部員さん達は『私を倒せたら、つきあってもいい』って言ったら、二人で一辺にかかって来たから。私も、怖くて怖くて、だからあんなに過剰に攻撃してしまったんです、私…‥」
私はその事実に、甘味の過去以上の衝撃を受けた。
狗久に告白し玉砕して、病院送りになった井伊直助とハリス・マッケンジー。
彼らは紳士的な男だとおもっていたのだが、そうではなかったというのか。
二対一で少女を倒そうとするなど、どれだけ戦闘力が開いていても言語道断である。
そんな手段でこの少女の作った壁は壊せはしないし、そんな卑怯な手段を使うくらいであれば、素直に倒された方が潔い、というものである。
「そ、そうだったのか…‥それは、私の部の部員達が失礼をした」
謝罪の言葉を口にする。
元はといえば、我々センシティ部が悪かったのだ。
二人を信頼していたのに、完全に見損なってしまった。
二人は退部である。
もう、そんな輩をセンシティ部に置いてはおけない。
冷たいと思われるかもしれないが、自由には責任が伴う。
だから、二人には責任をとってもらおう。
「あの二人は退部処分にしておく。なにか、私に出来る償いはないか?私は鈍感だから、恥ずかしながら、わからんのだ。すまない」
私は二人のドッグタグを投げ捨てた。
「い、いいんです。最終的にこうして、私を抱きしめてくれる人に出逢えて、居場所まで与えてくれるなんて…‥」
いや、抱きしめているわけではなく、抱き着かれているわけなんだが…‥
振りほどくわけにもいかず、私はただプルプルと奮え、両腕が彼女の体に触れないようにバンザイの格好をしていた。
なんと間抜けなポーズだろうか。
「私、入部します。センシティ部」
それは凄まじく有り難いし、万々歳だ。
だから、頼むからもうちょっと距離をとって。
なんか柔らかい物が私の胸にぴとぴと触れてるし。
こんな時、この空気を変えてくれる存在がいてくれたら。
誰でもいいから助けてくれ、誰か…‥
「なーッ!なにくっついてんの鮭留?!というか離れてよチョコ女!!鮭留は私のもんだ!!」
一番、今の状況を知られたくない少女が来てしまった。
噺家潟里
噺家の家系で、お喋りな少女。
肩まで届くほどのポニーテールの髪に、セーラー服に身を包んでおり、真っ直ぐな二重の瞳、すっと通った鼻筋、全体的な顔と体型の造形はよい。十代の頃の広末涼子に、よく似た容姿をしている。
クラスメイトにして、センシティブ副副部長(自称)。
「なっ!?潟里、お前ちょっと待て!」
潟里は私から狗久を強引に引っぺがす。
私は慌てて、乱入して来た潟里を静止しようとするが、全く止まる様子が無い。
あまりの自体に、唖然としてしまう。
そして、潟里と狗久の二人はそんな私にお構いなしに、互いに睨み合い、火花を散らしている。
凄まじい争奪戦が繰り広げられようとしているが、私はどうすることも出来なかった。
ヘタレと言うなら言ってくれて構わない、私はまだ二人をそういった対象として見ていなかったのだ。
だから何とも言えない、二人の戦いに介入出来ない。
「チョコ女じゃないです!それより貴女こそ、鮭留さんから離れて下さい!!これから私、鮭留さんと楽しくポッティーゲームやるんだから!」
「そんな甘ったるいゲーム、この噺家潟里をブッ倒してからにしなさいこのチョコ女がぁ!!」
「またチョコ女って言った!!負けないもん!!貴女には負けないもん!!鮭留さんは私だけの王子様なんだもん!!」
「なっ!?言わせておけば、こんにゃろう!絶対に負けないからなぁっ!!潟里ピンポイントバリアパンチ!!」
「そんなの当たらないから!!ポッティーリロード、狗久スターライトブレイカー!!」
針の山のようになってしまった教室。
その中で凄まじい気迫で取っ組み合いの喧嘩をする二人を前に、私は立ち尽くしていた。
愛が、重い。
「俺は、どうしたらいいんだ?」
凄まじい三連戦を経て体力の限界を超えた私に、彼女達を止める力は残されていない。
「よう、モテモテじゃねえかプレイボーイ!」
ビリーズ・武道チャンプルーが、にやにやと笑いながら私の背後に現れた。
センシティ部、副部長。
ダビデ像のような巨体。
サングラスに、ドレッドヘア。
褐色の肌、赤い学ラン。
そんな厳つい彼が、今は天使に見えた。
「もう放っといて帰ろうぜ、鮭留。狗久も大丈夫みたいだし、後は女の戦いみたいだが、見ていくか?」
マンガみたいにボスボカ殴り合っている潟里と狗久をチラっと見て、私は彼女達を背にした。
「辞退させてもらおう、全力で」
悪いが、キャットファイトを見物する趣味はない。
とりあえず、今はとにかく休みたい。
「あと、直助とハリスの二人、全然大丈夫みたいだったし、見舞いにでもいくか?」
その二人は狗久を二人がかりで倒そうとしたらしいから、優しい言葉など不要であろう。
「ああ、あの二人には少し説教しなきゃならんし」
私は踵を帰して、教室から立ち去った。
友よ、ありがとう。
君がいなかったら、雰囲気に呑まれて帰れなかった。
「つうか、お前、明日から学校どうすんだ」
「とりあえず、相談には乗ってくれるか?」
「てめぇも悪いんだぜ、潟里の件についてはよ」
サングラスの奥の瞳を細めて、褐色肌の彼はハッキリと言った。
「ああ、分かっている」
そう、分かっている。
多分何日かは、彼女の機嫌を直すために費やすのだろう。
そして、二人の関係を見直す必要もある。
それだけでも、それだけでも私には難しいというのに。
甘味狗久も、私に心を開いたばかりか、好意を寄せるなど…‥
予想外であった。
ああ、どうすればいいんだ。
私は、どうすればいいんだ。
誰か、誰でもいいから、私はこれからどう立ち振る舞えばいいか、教えてくれ。
いかがだったでしょうか?
とりあえず狗久と鮭留の戦いはこれで終着です。