187524の弾幕[前編]
本編内容
全武鮭留
センシティ部部長。
戦闘機王子。
最大加速。
完全回避。
高校三年生。
青い学ラン。
甘味狗久
製菓の弾丸。
鉄壁の彼女。
完全防御。
圧倒的火力。
高校二年生。
黒いセーラー服。
分厚い弾幕、最大戦速。
超絶戦闘、学園決闘。
三角関係、恋愛感情。
完全燃焼、製菓接吻。
隙間倶楽部、第七弾。
本編開始。
私の名前は、全武鮭留。
襟までまっすぐに伸びた金色の髪、緑色の切れ長の瞳。
某レグザのCMの某福山を劣化させたような顔面。
まるで戦闘機にように引き締まった長身。モデル体型と言っておこう。
そして、それを包む、澄み切った空のように青い学ラン。特注品だ。
また、何事に対しても毅然とした態度で臨み、卑怯な事や筋の通らないことを嫌うため後輩からは「王子」と呼ばれている。
都内某所にある、都立セントガイア高等学校の高校三年生である。
私は、この高校にある「センシティ部」の部長。
センシティ部というのは私が作った部活で、何でもやる部活である。
人生相談や、読書、サイクリング、アニメ観賞、ソフトボール、バトミントン。
蹴鞠、踊り念仏、選挙活動、同人誌の作成、モンハン、料理。
ジェンガ、ルービックキューブ、手話。
ラテンダンス、パラパラ(死語)、カピパラ、蒟蒻ダイエット、ブートキャンプ、登山。
たまごっち、ガンプラ制作、アマチュア無線、ネットサーフィン、ミクシィ、グリー、パクロス、マクロス、サザンクロス、ガンダム、イデオン、ザブングル、ダンバイン、エルガイム。
とまあ、各人が思いついた事をやる部活。
帰宅部に近いが、帰宅部ではない。
この学校には、帰宅部はない。
先生方の思惑により、必ずどこかしらの部活動に入らなければいけないこの学校で、私が作り出したのが、このセンシティ部だ。
この物語は「戦闘機王子」にして、「センシティ部」の部長である私の物語。
―
春、出会いと別れの季節。
屋上で親友二人と弁当を食べ終えた私は、古ぼけた体育館の片隅であぐらをかき、読書をしていた。
両隣には、一緒に食事をした二人の親友が壁にもたれ掛かっていた。
「ふ、平和だ。そうは思わんか?」
私は隣で寝転んでいる友人に同意を求める。
ありきたりな話だと思うが、しかし、平和は大切だ。
その平和を享受し、こうして友人と普通に談話出来ることを、私は感謝している。
「ふ、そうだな鮭留!平和は偉大だ!俺はこのピースを五臓六腑とダンロップに沁みわたらせているゾ!」
友人は私の意見に同意し、うんうんと頷く。
彼の名前は、ビリーズ・武倒・チャンプルー。
私の青い学ランとは対照的な赤と黒と茶色の迷彩柄の学ランを着て、白いマフラーをした彼は、その学ランのボタンを開き、バタバタと扇いでいる。
ドレッドヘアーに、黒いサングラスに隠れた切れ長の瞳。
縦長の顔、小麦色の肌、まるでダビデ像のような巨大な体。
熱いならまずマフラーを取るべきだと思うが、彼のポリシーに反するのだろう。
彼はセンシティ部の副部長、私のクラスメイトにして古くからの友人。ひたすらに熱血漢で情に厚く、礼儀を知らないが、嘘を何よりも嫌う誠実な男。
ひたすらに熱い男だが、その熱さ故に周囲が見えなくなる所もあり、服と同じく中身まで私と対照的である。
まあ、共通する部分も多いと思うが。
「テンション高いねー!私はもうご飯食べたらそこまで張り切れないよ全く!しっかし晴れた晴れた!よく晴れたよ、青いねー、青春だねー。ほんと平和って大切だよね!でも午後の授業がもう少しで始まると思うとちょっと憂鬱、でもぉ~鮭留の隣の席だから、別に授業も悪くないかなぁ~なんて、なんてね!じょ、冗談だよ、あははー!」
私の右隣りで寝そべり、脳天気に早口で喋る少女は散々喋った挙句、赤面して照れ笑いをしてそっぽを向く。
彼女は私達と同じくセンシティ部の自称副副部長の噺家潟里、実際には書記をやってもらっているが。
彼女は有名な落語家の家の次女に生まれたため、よく喋る。
私の偏見かもしれないが。
肩まで届くほどのポニーテールの髪に、セーラー服に身を包んでおり、真っ直ぐな二重の瞳、すっと通った鼻筋、全体的な顔と体型の造形はよい。十代の頃の広末涼子に、よく似た容姿をしている。
よく見ると綺麗だが、喋り始めるとその独自のリズムに圧倒されるため、男の人気はまずまず、と本人は言っている。
「つうか潟里はいつもよく舌回るなあぁオイ!つうか、舌噛まないのか?噛みちぎってるのかレバーを?」
ビリーズはサングラスのズレを人差し指でくいっと上にあげて直し、少し呆れたように言う。
ビリーズに言われ、潟里はムッと頬を膨らませた。
「ふん!エセ外人のビリっちとは鍛え方が違うんだよ!ビリっちこそ変な英語ばっか使ってたら日本語が可哀相だよ。変な喋り芸ジ・エンド!」
立ち上がり、ビリーズに近づき軽いチョップを頭に叩きつける潟里。
ポカっという漫画みたいなマヌケな効果音がして、壁にもたれ掛かっていたビリーズは姿勢を崩した。
全く、こいつらは本当に昔からこうだ。
まあ、それだけ暇で平和ということか。
もはや止める気も起きぬ。
「ぬァ~にぃ~?!俺様はこれが地だコラ!バーニング顔面掴み!」
姿勢を直して床に座り、ビリーズは壁にもたれ掛かったまま潟里にアイアンクローを放つ。
まるで野球のグローブのように巨大なアイアンクローが潟里の顔を掴み、比較的小さな体を引き寄せる。
痛そうだ、女性にやる技ではない。
まあ、潟里は昔から頑丈だから大丈夫だろうが。
「ぐああっ!ギブギブ!暴力反対!色即是空!空即是色!悪霊退散!!」
五里霧中、四捨五入、自由奔放!罵詈雑言、etc…
知っている限りの四文字熟語を叫び、じたばたと暴れる潟里。
この無駄に語彙の多いところが、彼女らしいといえば、らしい。
見ていて飽きない奴だと思う。
「全く、相変わらず暑苦しい奴らだ――」
そんな二人を尻目に、私はあぐらをかいたまま、体育館内でバスケに興じる生徒達を見つめていた。
五、六人で互いのゴールに向かって攻防を繰り広げている、確かバスケ部の生徒達だ。
一生懸命だ、彼らは彼らで。
我らセンシティ部もそうなのだが、教師達からは合法的帰宅部と呼ばれることがある、困った話だ。
私はそんなつもりで、帰宅部のつもりでセンシティ部を作ったわけではない。
スポーツや芸術、慈善活動などの枠にとらわれず、高校三年間のうちに、放課後の時間を自由に使い、自分を探す、他人と関わる、何かを成し遂げる、自分の可能性の幅を広げる。
その起爆剤になれば、と思い、私はセンシティ部を作った。
確かに帰宅するのも自由だ、だが、今や80人以上となったセンシティ部の部員達の殆どが、自主的に学校内で活動している。
「悪くは、ないがね」
そんな部を作れたのは、真っ直ぐなビリーズと、他者とのコミュニケーション能力、喋る力に長けた潟里、この二人の協力があったからこそなのだ。
私達は、笑っていた。
休み時間、春の日差しがけだるい体育館の片隅で。何事もないことが、今の私達三人の幸せだった。
と、そんな時だった―
「あの、すみません」
「あなたが、センシティ部の部長さんですか?」
体育館の中に入ってきた男子学生二人組が、私達の前に現れる。
一人は坊主頭をしたえなりかずき似の顔面の学生。
もう一人は、野球帽に眼鏡をかけている、やや知的そうな学生であった。
まるで、日曜の夕方6時あたりにやってるアニメに出て来る小学生のような風貌であった。
あまり見たことのない顔と、学ランの新品さ具合からいって、新入生であろう。
私はゆっくりと立ち上がり、彼らに会釈した。
「ああ、私は――」
「うん!そうだよ!この人がセンシティ部の部長の全武鮭留!さそり座で趣味は読書とアウトドア関係、好みのタイプは私みたいな元気な娘でーす!なんて…‥えへへ。中学生の頃は帰宅部だったんだけど私達と一緒に毎日ボウリング行ったりカラオケ行ったりアウトドアショップ行ったり、色々なことをして、結構多趣味というか、何でもやっちゃう好奇心と探究心の強い少年です!あ!因みに私は副副部長の噺家潟里です、よろしくね!」
私の言葉を、潟里が完全に遮る。
そして、物理的にも私と新入生二人の間に割って入る。
このタイミングで潟里が喋り出す技術は、『言葉のシャッター』と異名がついている。
この『言葉のシャッター』よりも早く喋れる人を、私は見たことがない。
私は気を取り直し、潟里の両肩を掴んでどかし、二人と握手を交わす。
どかした潟里が「やん」と変な声を出したが、私は気にせず続けた。
「すまない、彼女は無視してもらって構わない。そう、私がセンシティ部の部長をやっている全武鮭留だ。今日は何か用かな?」
私の質問に、彼らは少し俯き加減で答える。視線を合わせてくれない。
まあ、私の所に訪れる新入生は八割がこんな感じではあるが。
「あの、俺達、特にやりたいスポーツも無いし、かといって美術部とか音楽には興味ないし…‥」
富永みーなのような声の坊主の新入生が言う。
「でもこの学校、何かしら部活に入らないといけないから、俺達センシティ部に入りたいんですが」
メガネをかけた少年も、申し訳なさそうに言う。
二人とも、センシティ部を帰宅部に近い組織と思っているのだろう、無理もない。
だが、それは誤解だと、私は教えねばならないのだ。
「大丈夫だ、このセンシティ部では各人が自由に活動していい。」
いつも私はこう説明する。これ以上は付け加えない。
どう受け取るかは、彼ら次第。
放課後を有意義に使えるか、使えないか、それは各人の考えであり、そこで私は何かを強要しない。
より良い時間を過ごしてほしいと、望んではいるが。
「自分の自己責任において、だがね」
そして、一つだけ付け加える。この自己責任は大切なのだ。
センシティ部の活動と謳い、他者に迷惑をかけるような輩が現れないようにするためだ。
自由には責任が付いて回るのだ。
「そうさ後輩達!俺達若者はまだ色々な可能性を秘めたプレシャスさ!だから一つの事に縛られることなんてナイッ!だから、自由にしていいんだぜ、センシティ部は!」
「買い食いとかジェンガとかもいいんだよ?あと、オセロだったら受けて立つからね!」
二人が新入生二人に、それぞれセンシティ部に思うことを伝える。
こう三人で言うと、先週まで行っていた新入生の部活勧誘を思い出す。
「あ、はい!わかりました!磯野伊、入ろうぜセンシティ部!」
「おう、中之島!よろしくおねがいします先輩方!」
二人はうれしそうに顔を見合わせると、私に向かって頭を下げる。
潟里がどこからかセンシティ部の部員リストを取りだし、ニヒヒと笑いながら新入生二人の名前を書いていた。このあたりは、さすが書記、と素直に思う。
「ああ、歓迎しよう、磯野伊君。そして中之島君。」
名前まで、日曜夕方六時あたりのアニメだな、と思いつつも、私は二人と再び握手を交わす。
そして、走り去っていく二人を、私は見つめて、静かに笑った。
そろそろ、昼休みも終わる時間である。教室に戻らねば。
学生の本分は学業なのだから、教員のような台詞ではあるが。
そんな時であった。
「ん、なんだ…メールが来てるぜ」
軽快な電子音が響き渡る。着信音だ。
するとビリーズが懐から携帯を取り出し、画面とにらめっこをする。
「あ着メロ、変えたんだ」
潟里がどうでもいいことに気づく、よく気づいたな、と素直に関心した。
「な…なんだって」
ビリーズの表情が曇り、携帯を握る拳に力が入っているのが分かる。
何かが、あったのか。
私は、嫌な予感がした。
「どうした?」
ビリーズに聞くと、彼は携帯を閉じ、眉間にしわを寄せて右腕で壁に八つ当たりに一撃を加える。
ダビデ像のような男の拳は、木造建築の体育館の壁に一気にクレーターを作り出した。
「シット!クソっ!!センシティ部員二人が俺達のクラスの前でボッコボコにやられてるらしい!!」
怒りの感情むき出しで叫ぶビリーズ、サングラスの奥の瞳は大きく見開かれていた。
「なにっ?!」
「えーっ!!」
私と潟里はほば同時に反応する。
私は耳を疑った、センシティ部員がやられた?
どのセンシティ部員が?
一体なぜ?
何のために?
誰に?
幾つもの疑問が頭を過ぎるが、今は此処で考えていても仕方がない。
実際に今、センシティ部員が誰かにやられているのだ。
こんな事態、今までにそうはなかった。
二、三度くらいであろうか、不良達に絡まれた後輩を助けたのは。
部員達の平和のために、戦うのも私達の使命だ。
誰が命じたわけでもない、使命だと俺が感じるのだ。
「くっ!!行くぞ二人共!!」
いや、俺達の使命なのだ。
「おう!!くそっ!!一体どこの誰だド畜生が!!」
「もぉ―――う!ほんっと誰なのよッ!!」
こういう所は阿吽の呼吸である、私たち三人は一気に駆け出し、体育館を後にした。
人ごみをかき分け、ひたすらに長い廊下を、階段を駆けていく。
間に合え、間に合ってくれ。私は、それだけを考えて廊下を走っていた。
PM0:46
私達の昼休みは、まだ終わらない---
---
間に合わなかった。
二人のセンシティ部員は、ボロボロになって廊下に倒れていた。
しかも三年の使う校舎の三階、私のクラスの前で。
彼らは、倒れていた―
「ぐうっ、やられちまいました…‥部長」
ヘヘッと笑いながら、橙色の学ランを着た、背の高い長髪の少年は力なく瞳を閉じる。
彼は井伊直助、センシティ部に所属している三年生である。
彼はセンシティ部誕生の頃から入部していた古株であり、主な活動内容はアマチュア無線と筋トレ、そして作詞。
得意技は空中二段蹴り。
のはずだ、そんな簡単にやられる男ではない。
しかし今その体には制服を貫通し無数の小さな棒が突き刺さっており、所々から流血していた。
痛々しいほどの傷であった。
「これは、ポッティー?えっ?これで!?これでやられたっていうの!?」
二人の体に突き刺さったチョコレート菓子、ポッティーを引き抜き、瞳を見開いて驚く潟里。
確かに、それはポッティーであった。
どのような仕掛けがあるのかまだようわからんが、確実にそれは貫通力をもったポッティーであった。
しかも一発ではない、一人につき全身に数十発突き刺さっており、その体はまるで散弾銃に射抜かれたようになっていた。
そして、さらに驚くべきは、周囲の廊下の壁と床。
まるで針の山のようにポッティーが突き刺さっており、チョコレートの匂いが充満している、異様な光景である。
「俺達、一個下の後輩の甘味狗久って女子に告白したんですけど…‥ぐううっ」
そう言い申し訳なさそうに俯き、膝を立てながら壁にもたれているもう一人の部員はハリス・マッケンジー。
金髪、碧眼、色白の肌、ビリーズほどではないが、まるで彫刻のような筋肉を纏った体、そしてそれを包む緑色の学ラン。
直助と同じくセンシティ部の古株で活動目的は同人誌の作成。
同人誌といっても漫画ではない、文集だ。
あいだみつおにインスパイアされた作品達は、文学に疎い私にも分かりやすく、共感できる部分が多い。
しかしそんな彼もまた、ボロボロにやられていた。
その巨体はまるで、朽ち果てた大木のように動かない。
「返り討ちにあったと?お前達ほどのセンシティ部員がか?」
二人を凝視し、眉をひそめる。
私は不可解であった。
二人はそれなりのスペックを誇る男子だ、はっきり言ってモテなくはない。
そしてひ弱なモヤシっ子ではない、それなりに強い。
だが、その二人をこんな形で拒絶し、圧倒するとは。
一体、その甘味狗久とはどのような女なのか。
「すみません…‥」
瞳を閉じたまま、力無く謝る直助。
救急車の音が、近くに聞こえる。
ビリーズが手配した四、五人の救急隊員達が二人を担架に乗せる。
「こっちだこっち!!ハリーアッ!!急いでくれぇー頼む!!ジーザス!!」
「わかってますから落ち着いて!!」
ビリーズが救急隊員達を誘導しつつ、急かしながら一緒に担架を運ぶ。
「くっ!!何もできなかった…何も」
私はその場に落ちていた二人のドッグタグを握りしめ、学ランの胸ポケットに入れた。
運ばれていく二人を見送りながら、私は誓った。
センシティ部部長の誇りにかけて、敵は討つぞ、ハリス、直助。
「しっかしこれだけのポッティー、よくお金だせるよ。すごい量だよこれ、1、2、3、4…数えきれないし」
自分持ちのイチゴムースポッティーを食べながら周囲を見回して溜息をもらす潟里に同意し、床から引き抜いたポッティーを凝視する。
「確かに不可解ではあるな。貫通力だけで考えてたら、もっと強い物はいくらでもあるはずだ。なぜ、ポッティーなのだ」
しかし、よく今ポッティー食えるな、と思いながら私は頷いた。
と、その瞬間。
「んっ!!」
私の頬を、まるで弾丸のように何かがかすめる。
しかし一瞬で、私はそれが何であるかを確信した。
ポッティーだ、確実に。
これが、製菓の弾丸。
不覚であった、不意打ちとはいえ、戦闘機王子である私が被弾とは。
「えっ!?何っ何がおきたの!?えっ!えっえっ!?」
潟里が、私の後ろに隠れた。
私は弾丸が来ても避けるから、そこは一番危ないぞ潟里。
頬をつつっと血が流れ、そのポッティーの軌道から、私は敵の…甘味狗九の位置を特定した。
「その威力なら、余計なお世話だというのが分かったでしょう?」
冷たい口調で言い放つその女は、ポッティーが突き刺さった床をゆっくりと歩き、真っ直ぐに歩いてきた。
姿を現したのだ、センシティ部員を倒し、私を今、怒りに駆り立てる存在が。
金色のツインテールに、キレ長の赤い瞳。厚みのある整った唇。顔の造形はよいものの、眉を顰め、口は横一線に閉じられ、まるですべてを憎むかのような、冷たい怒りの表情をしている。
比較的小柄な体型に、それを包む黒く、袖の長いセーラー服。
そして、ミニスカートに、黒いニーソックス。
「ほう、探す手間が省けたぞ。貴様がその甘味狗久か」
私は、彼女の前に立ちはだかる。
そして、その瞳を、怒りに燃える瞳で真っ直ぐに見つめる。
もう感情を抑えることなでできない、ここまでされて平然と対応できるほど、私は冷たくはない。
なぜ、ここまでした。
なぜ、二人をあそこまで追い詰めた。
そんな私の感情を感じ取ったのか彼女は、小さな白い人差し指と中指の先にポッティーを挟み、私に突きつける。
「そうよ、私が―――甘味狗久。」
そして小さく頷くと、彼女―――狗久はこちらを真っ直ぐに睨み、一歩、こちらに近づいた。
二人の距離は、数メートル。
彼女の立っている位置が、ギリギリ、私の間合いの内側。
そして、私の立っている位置が、多分彼女が敵を確実に仕留められる間合いの、ギリギリ一歩外。
そんな立ち位置で、二人は睨みあっていた。
彼女が、二人の仇。
彼女が、製菓の弾丸の使い手。
彼女がその少女、甘味狗久。
PM0時54分
私達の昼休みは、まだまだ終わりそうになかった------
続く
今回はちょっとキャラ達に動きがあるので不安です。
読者様のご意見、ご感想をお待ちしております。