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この異世界に救済を  作者: 秋月良羽
第一部 アルーラファル国フロンティラ領~変わり者の領主と防衛戦~
49/214

第49話

『この異世界に救済を』以外にも以下の作品を投稿しています。


『水晶』(「小説家になろう」で投稿中);https://ncode.syosetu.com/n5361ga/


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中);https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『この異世界に救済を』のあらすじは、有輝とイルアーナはゴブリンシリーズの依頼を受け、ゴブリンの密偵を討伐していくのだが、その帰りアルーラファル王国の国王直属の部下に出会うことになる。この部下の目的は、有輝とイルアーナをアルーラファル王国側へと勧誘することであったが、有輝は断る。一方―…。

 では、今回、第五回目の語りを始めていきましょうか。

 今回も多くの方々にご来場いただきありがとうございます。

 さて、前回までは、有輝とイルアーナさんはアルーラファル王国のフロンティラ領フロンティラベルトを拠点としてスペーグラ活動を再開することになりました。

 住居も確保し、二人は日々、スペーグラの依頼をこなしていくのであった。

 そんななか、有輝とイルアーナさんは、ゴブリンシリーズに関係する依頼を受け、偵察に来ているゴブリンを討伐していくことになった。

 その帰り、二人は、アルーラファル王国の国王直属の者によって、勧誘されるが、断るのであった。

 というところでしたね。

 さて、話は有輝とイルアーナさんにも関係あることですが、それでも、二人が主体的に関わることがなく、水面下で動いているところへと話は進んでいくことになります。

 そう、アルーラファル国とフロンティラ領の双方の戦いに繋がるものへと―…。

 では、さっそく、内容の方に入っていましょう。

 場所は、アルーラファル王国の王宮。

 そこは、派手な装いをした城ではあるが、建設当初にあった金箔は完全にくすんでしまい、歴史というものを感じさせるには十分である。

 金が変色することは有り得ないのだが―…。

 その原因に関して、私に聞かれても困りますが―…。

 そういう話を進めていても意味はないので―…。

 城の中における大きな会議室がある。

 アルーラファル王国は王国制を敷いており、中央集権化をほとんど達成しているが、領地の持ちの地方貴族、領地を持たない文官貴族と軍閥貴族という三種類の貴族がいる。

 そして、この大きな会議室でおこなわれる会議は、重要な会議であり、軍閥貴族と文官貴族の中でも、一派閥を形成している有力者達である。

 そんな人々がいる中、アルーラファル王国の王であるアルーラ=タンガルドは宣誓する。


 「さあ、アルーラファル王国の繁栄のために、諸君らの意見を汲み取ろうではないか。」


 この言葉は、アルーラファル王国が建国する前からある宣誓の言葉であり、元々アルーラファル王国の初代国王が有力者から意見を募るために会議を開いたことに始まる。

 ゆえに、今のような言葉を言い、有力者が人々から集めた意見を聞き、王としての国のためになる判断を下すことができるとされている。

 だけど、時代が流れると同時に、意味というものは形骸化していき、この会議では国王の意見に対して、国王の利益になるためのことを言い、その中で国王に気に入られた者が出世していき、寵愛を受けるためのアピールの場と化してしまっている。

 人という生き物における欲望とは、底も上限もありませんから~。

 私から言わせてもらいますと、ボトムアップの目的とした会議だったのに、トップダウンというか、上の意向に満足するために、どういう提案があるという会議になってしまっているのだ。

 それが一概に悪いとは言えないが、今のアルーラファル王国では悪い方向に進んでいってしまっているのだから、悲しいことである。

 このタンガルドの言葉を、貴族達は聞かされながらも、このタンガルドという国王から如何にして利益を得るのかばかり考えるのだった。

 多くの者たちは、自分の一族の目先の利益ばかりに目を奪われていて、地方貴族であればそこに暮らす領民、文官貴族と軍閥貴族であれば自らの下っ端と呼んでおかしくない部下達のことを、彼らの状況を完全に無視してしまっているのだ。

 重税や安い給料に苦しめられていることに一切、気づかないし、そこから不満の芽が出ようとしていることをまるで自らが知らない世界ように扱っている。

 それが自分と同じ世界において起こっていることであったとしても―…。

 世界を自らの認識の中で分けることによって、自分には関係ないと思うことを正当化しているように―…。


 「今回の会議は、フロンティラ領において、グルアルラ国から逃亡した達観有輝とイルアーナ=レイスリというスペーグラどもについてだ。

 この二人は、ギフトを保有しているものと思われ、捕獲する必要がある。

 アルーラファル王国のギフト保有者は、必ず我に一生、仕えなければならない。

 それが正しいことであり、反する者たちは無理矢理にでも我の言うことを聞かせないといけない。

 理由は分かるだろ。

 アルーラファル王国の建国神話において、我の先祖は神の子であり、神と同一であった。

 その神は、全知全能であり、神の子であり、神である我の先祖の血が流れている我には、すべてのことを正しく認識し、導く使命がある。

 それを達成するためには、ギフトを収集し、ギフト所有者を我のもとで仕えさせ、有効活用しないといけない。

 そうすることで、先祖はアルーラファル王国の支配を神によって正当化されたのだからなぁ~。

 ということで、フロンティラ領からこの二人を奪うにはどうすれば良いか、意見を聞こう。」


 もう、さっき私が言ったように、ボトムアップのような感じにはほとんどなっていません。

 自由に困り事を聞くのではなく、国王の政策に賛成で、それを達成されるための意見しか許されないようになってしまっています。

 悲しいねぇ~。

 自分は別世界の人間か、些細な庶民の困り事など取るに足らないと思っているのだろうか。

 本当に、彼らは愚かな存在だ。

 そんな人の評価をしている余裕が私にあるかというと、語っているのだから、あると言っていいわけがない。

 というか、今日の語りの予定では、重要な防衛戦の手前まで進めないといけません。

 ということで、しっかりと進めていくことにしましょう。

 最近、おふざけすることができていない。

 さて、話に戻ると、タンガルドの言葉に、多くの者は意見を言うことがなく、し~んと静まりかえっていた。

 その中で―…。


 「タンガルド王、意見を言って宜しいでしょうか?」


 一人の有力貴族が手を挙げ、発言の許可を求める。


 「構わん。良い意見を言え。」


 そして、タンガルドは、その有力貴族に発言を許可するのだった。

 その有力貴族は、自らの意見を言い始める。


 「達観有輝とイルアーナ=レイスリに関しては、スペーグラである以上、金銭的な額を引き上げられるだけ引き上げることができれば、確実に、タンガルド様の側へと引き抜くことが可能でありましょう。

 フロンティラ領の領主ハルバーラ=フロンティラは、アルーラファル王国の貴族とは思えないほどに、市中にある下賤の者達の店や馬にも乗らずに歩いているという愚かな真似をする者であり、卑しいからこそ、達観有輝とイルアーナ=レイスリを脅すか、金で買収しているだけに過ぎません。

 タンガルド様なら、その富を使って、ハルバーラなんか以上の金額を出すことができ、それを達観有輝とイルアーナ=レイスリに提示することができれば、必ずやタンガルド様の要望に叶うのではないでしょうか。」


 この有力貴族の意見を要約すると、有輝とイルアーナさんを金銭で買収すること。

 それをこのように回りくどく言うのは、有力貴族の一部の人間の癖みたいなものだ。

 こうやって、一秒でも長く意見を述べることができれば、それだけ、自分が目立つこととなり、名前を憶えてもらいやすいと思っているのだ。

 現にそうだ。

 ただし、一秒という感じではなく、上の者にとって都合が良いか、何度もやっているから、憶えられてしまったのか、どうかだ。

 そうすることで、記憶の中に刷り込まれた結果、何か重要な時に頭の中に浮かび、何か重要な役職を任されることだってあり得るかもしれないからだ。

 そんな僅かな可能性というものを手に入れるために必死なのだ。

 そういう意味では、凄いと思われるかもしれないが、結局は地位とか名誉とかだけを手に入れたいので、中身というものが伴わず、失敗してしまう可能性が高かったりする。運よく成功することはあるかもしれないが―…。

 そういう意味で、この有力貴族は、今の考えを実践しているだけに過ぎないということがわかる。

 まあ、実力という中身がなければ、成功し続けることはできないであろうが―…。

 付け加えるのであれば、人という生き物がすべてを把握することができないからこそ、発生してしまうようなものだから―…。

 私には詳しい説明はできませんので、どっかの人に聞いてみてくださぁ~い。

 さて、こんな寄り道をしている場合ではなかった。

 この有力貴族の言葉を国王であるタンガルドは考え始める。


 (確かに、これなら達観有輝とイルアーナ=レイスリを我々の側へと手に入れることができる。

 だが、ここで金を消費してしまうのは良くない。

 フロンティラ領のハルバーラを潰すには、軍事遠征をしないといけない。

 膨大な費用がかかる。)


 意外にも、お金に関しては、堅実なようです。

 その理由は、アルーラファル王国のタンガルドの前国王であった父親がかなりの浪費家で、いろんな人々に借金をしては踏み倒したりしていたので、各方面から恨まれ、アルーラファル王国では、重要な時に金を借りることができなくなってしまったのだ。

 タンガルドの母親たちは、時には、自らの品を売ったりしてもいたが、それでもその父親の浪費癖がなおるどころか、激しくなる一方だった。

 そして、アルーラファル王国では、国王は絶対的な権威である以上、国王に逆らえる者はいなかった。

 だからこそ、国王の地位に就いた後は、タンガルドは豪華な生活はほどほどになり、父親のように浪費することはなかった。理由、それはお金のことが心配になって―…。節約する癖が抜けないと考えても良い。

 さて、タンガルドのお金の使い方が堅実であることを述べたのですが、それ以外の面では意外にも良い性格をしているとは言えないんですよねぇ~。

 例えば、ギフトの研究というのが最たるもので、軍事目的に限定した上でのギフトの研究をおこなっていたりするんです。それなりの費用をかけて―…。

 そのため、タンガルドは、軍閥貴族からそれなり尊敬を集めていたりする。

 まあ、良いカモ程度の認識でしかないでしょうが―…。

 話を会議の方に戻しましょう。


 「確かに、その方が安上がりかもしれないが、相手はギフト所有者であることを忘れるな。

 お前の意見は嫌いではないが、ギフト所有者である以上、俺たちの目的にすぐに気づかれるかもしれない。

 そうなると、費用がかかるかもしれないが、無理矢理従わせるしかできない。

 それに、これは格好の機会だと思っている。

 ハルバーラという下賤野郎と殺すためのなぁ~。」


 そう、タンガルドにとって、フロンティラ領の現領主であるハルバーラ=フロンティラは目の敵なのだ。

 学生の頃に、空気も読まず、タンガルドよりトップになったのだから―…。

 そのことに対する恨みはすさまじいものであり、どうしようもないと周囲は思うかもしれないが、どうしようもないことでも人という生き物はかなりの恨みや復讐心を持つことができる。

 何が重要なのかは、人によって異なるのだから―…。

 本当に、個性とは基準を狂わせてしまうものです。

 タンガルドは続けて言う。


 「だからこそ、決めたのだ。」


 すでに心の中で決めていますよね。

 周りの有力貴族もそのようなことは分かり切っているという目で見てますよ。

 あの意見した有力貴族が気づかないだけであり、タンガルドの意図なんて、少しだけ探れば、分かってしまうものなのだから―…。

 タンガルドは席を立ち言い始める。


 「今回、達観有輝とイルアーナ=レイスリという二人のギフト所有者を匿っていることを理由に、フロンティラ領に出兵する。

 そして、フロンティラ領のハルバーラ=フロンティラには、アルーラファル王国への裏切りの可能性があり、だと―…。」


 堂々と、宣言するかのように―…。

 このような過程で、フロンティラ領は防衛戦を強いられることになるのです。

 恐ろしいこと。


 (グフフフフフフフフフフフフフフフフフ、ハルバーラよ、お前の首は俺の栄光のための置物となってもらおうか。)


 と、心の中で物騒なことを思いながら―…。

 本当に、怖い人ですねぇ~。


第50話に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正していくと思います。


今回から第三章の内容です。

ここから、第一部の物語の重要な部分になってくると思います。

次回の投稿日は、2023年8月26日頃を予定しています。

では―…。

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