間章 ー首都ガルマンー
騎士の国ガルマン王国の首都ガルマンは、近衛騎士団100名、騎士団3万名を抱えている。
国内に草原地帯が多く、馬の餌となる牧草が豊富だったことから馬の一大生産地であったことも騎士が発展した理由と言われている。
騎士道を重んじている彼らは、国内の警備は怠らず、有事の際にはすぐさま騎士団を派遣して鎮圧をはかってきた。
そんなガルマンでは、ガルマン王国近衛騎士団第三席ベッツの報告を受けても大規模なダンジョン討伐部隊が、編成されていなかった。
もちろん、ベッツの報告が届かなかったわけではない。
報告の鷹は確かに第三王子ハーネスへと届いたのだが、騎士団を動かせない理由があったのだ。
ベッツがユートピアを脱出した直後、国王ランスロットが急病で逝去した。
国王ランスロットは優秀な騎士王ではあったが、まだ40歳と若かったことから後継者を指名していなかった。
そのため第一王子アーサーと第二王子マルクスのどちらを国王にするかで混乱が生じたのだ。
通常であれば第一王子が後継者になるのだが、側室の子アーサーではなく、正妻の子である第二王子マルクスを後継者に推す有力者が少なくなかった。
あわや内乱発生かと首都ガルマン内部がきな臭くなり、とても辺境のダンジョン攻略に戦力を割く余力がなかったのだ。
ベッツも第三王子の護衛のため、ガルマンに籠りことの成り行きを見守っていた。
ー王城 第三王子私室ー
「クソッ!
父上もタイミングの悪い時に死んだものだ。」
「ハーネス様、気持ちはわかりますが落ち着いて下さい。」
苦々しい顔でハーネスが吐きすてるもベッツに宥められる。
「どこで誰が聞き耳を立てているかもわかりません。
どちらの陣営に与するにしても、隙をさらしてはなりません。」
第一王子、第二王子の派閥は強大だが決定的な差はない。
どちらの陣営も他の有力者を抱き込み自分たちに有利になるように動き回っていた。
第三王子は勢力としては第一王子、第二王子に次ぐ第三位。
どちらの陣営もハーネスを味方につけられないか常に隙を窺っている状態だ。
ベッツの供として連れてきたコロネ村のカリンも、当初は城下町で暮らさせようとしていたが第一王子派、第二王子派に人質にとられると不味いということでベッツの私室の隣に住まわせている。
「ダンジョンはどんどん成長する。
時間をかければ最悪、国家存亡という危機に跡目争いなどしていてはガルマン王国に未来はないぞ。
アーサー兄上、マルクス兄上。
ベッツ、私の私兵と勢力のものだけでもいつでもダンジョン攻略に向かうよう準備をさせておけ。」
「ハッ‼︎」
ガルマン王国は後継者争いにより、未だユートピアに攻め込むことはできないでいた。




