第二章 魔女の思惑、盗賊の夢 ーゴンザという漢ー
リンネル率いるウォータイガー部隊は持ちなれた剣を手放し、リーチの長い槍を手にしていた。
丘の上という地形的有利を活かすための策だ。
作戦の1、マリカとサミーとかいう女の部隊を先に撃破するためにまずは時間稼ぎをしなくてはいけない。
丘の上からリーチの長い槍で突くことによって敵を近づかせない。
幸い森エリアの中央を走り抜けてきたゴンザ部隊の武器はほとんどが剣、副首領のゴンザが斧と皆リーチは短い。
「てめーら、なにもたついてやがる‼︎
さっさとぶちのめせ!」
技量と経験には劣るウォータイガー部隊だが、ステータスにはそれほどの差はない。
地形的有利も手伝ってゴンザ部隊に有利な戦いを続けていた。
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森エリア中央の戦いが始まって数十分。
戦いは膠着状態に陥っていた。
始めのうちは果敢に攻めてきていたゴンザ部隊だったが、地形の不利、リーチの不利から10名ほどが死傷したことで一度距離をとった。
軍師のいないゴンザ隊には柔軟な作戦行動は出来ず、丘を回って登りやすい箇所を探したり、手頃な石を投げつけてみたりと苦し紛れの作戦に出るが当然リンネル部隊は揺らがない。
ヤマトが警戒していたベッツとカリンはゴンザ部隊に組み込まれていたが、部隊の端でうまく力を抜いているようだ。
ヤマトの鑑定で敵の実力さえ見切れなかった男が本気を出せばリンネル部隊など一蹴されるだろう。
本気で攻略する気がないのだろうか?
そんな時だった。
最初のうち、喚いていたゴンザは疲れたのか途中から沈黙を貫いていたが、ついに我慢の限界をむかえる。
「うおぉおおおぉ‼︎
ふざけんなーーーー‼︎
黙って見てりゃあ情けねえ。
この雑魚どもが‼︎」
攻めあぐねている状態に耐えかねたゴンザが、部下をまとめて斬りつける。
「ぐあっ!」
「ゴンザさん、なんで…。」
ゴンザの凶行に数名の部下が倒れた。
元来ゴンザは気が短いことで有名だった。
地元で手のつけられない暴れん坊だったゴンザをダブラがタイマンで倒して、部下とした。
その後ダブラ盗賊団は大所帯となり、副首領となったゴンザにも部下が大勢できたことでその暴力性は押さえつけられていたのだ。
それが遅々として進まない攻略に、不甲斐ない部下の姿に、臨界点を超えて爆発したのだ。
「どきやがれ、情けねえ!
ゴンザ部隊に敗北は許されねえんだよ‼︎」
1人突出したゴンザは、リンネル隊の槍をまとめて叩き斬る。
力だけなら首領のダブラすら上回るゴンザの一撃は使い慣れない槍など容易に叩き斬る。
装備を失いまごついているウォータイガーをゴンザの斧が断ち切る。
「次はどいつだ、
クソ猫どもがぁ‼︎‼︎」




