間章 ーダンジョンの食糧事情1ー
ダンジョン外から侵入してくるのは、侵略してくるヒトばかりではない。
より良い生活環境を求めてダンジョンに迷い込む野生動物や魔物もいる。
その日、ダンジョンに侵入してきたのは10匹ほどの豚の魔物の群れだった。
食糧が自ら足を運んできたのを、狩猟担当のウルフ達が見逃すはずもなく、戦闘能力も低かったのかあっという間に倒し終えた。
"侵入者を倒しました"
2000魔素を手に入れました。
魔豚を召喚できるようになりました。
ほう、倒した魔物は召喚できるようになることがあるのか。
早速能力を確認してみよう。
ー召喚ー
魔豚 消費魔素 300
消費魔素からみると、ウルフとゴーレムの中間くらいの強さだろうか?
試しに1匹召喚し、能力を鑑定してみる。
ー鑑定ー
種族名:魔豚
個体名:なし
力:20
耐久:20
敏捷:40
器用さ:20
賢さ:40
魔力:20
耐魔力:20
スキル
繁殖LV5
「なんだこれは?全然弱いじゃないか。」
消費した魔素の割に全く戦闘に向いていない。
肉壁にでもする魔物なのか?
うんうん唸っている俺の前に、シャボンが興奮した様子で現れる。
「ヤマトはラッキーにゃ!
魔豚は食用の魔物で、弱すぎてすぐに狩られてしまうから巷では幻の食材と言われているにゃ。
繁殖力は高いけど、すぐに狩り尽くされてしまうのにゃ。」
…なんというか、哀れな魔物だ。
見ると周りのウルフ達は涎を垂らしながらこちらを見つめている。
我慢ならないという感じだ。
「よくやった、褒美だ。
狩った魔豚の半分はお前たちで食べて良い。」
俺の言葉と同時にウルフ達は我先にと魔豚に食らいつく。
俺とシャボンも魔豚の肉をステーキにして味見したが、うまいな。
肉汁が滴り、濃厚な旨味が口の中に広がる。
それでいて後味はさっぱりしているからいくらでも食べられてしまいそうだ。
しかし、これは使えるな。
魔豚を養殖すればダンジョンの食糧事情は大きく改善されて、食糧を気にせずに戦力を増強できるだろう。
俺は、森エリアの片隅に魔豚をオスとメスを20体ずつ召喚して養殖場を作成。
管理兼護衛としてハイウルフとウルフの群、ホビット達を順番に配置するのだった。
肉はこれで量を確保することができるだろう。
繁殖LV5の威力は凄まじく、魔豚達は1週間で10匹近くの子供を産む。
定期的に食べて数を減らさなければ、養殖場が魔豚で埋め尽くされてしまうほどだ。
そうそう、魔豚達の餌も大量に必要だな。
トレント達には魔豚の餌となる果物を多く生産してもらえるように言っておこう。