第5話 結局、国を出ることにしました
英傑の子孫3名と平民ゴリラ1名の活躍によりボルオンは倒され城の者たちに掛けられていた呪術も解けた。
殿下の寝室から凄まじい悲鳴が聞こえたが、まあお察しだ。
というか婚約発表の夜にベッドインしてたなんてそんな人だとは思わなかった。
殿下は私に対する非礼を謝罪してくれたが大々的に婚約破棄をしてしまった手前どうしたものかと悩んでいた……と思ったらあろうことか平民ゴリラことメールに一目ぼれしたらしく彼女に結婚を申し込んでいた。
うわ、この男思った以上に最低。
リムが鬼のような形相で殿下を睨みつけていたのがとても印象に残っている。
おバカなメールの事だから『何かわかんないけどいいよ~』と言い出さないか不安だったが返事は予想外のものであった。
「うわ、男から告白だ……………ダサッ!絶対お断り!!」
完全に忘れていた。
彼女はナダ人。女性から告白やプロポーズをすることに高い誇りを持つ人種なのだ。
そんなナダ人からしたら初対面+男から+プロポーズというのはダサい男の最強コンボ。
相手が一国の皇太子であろうが関係はないのだ。特におバカな彼女にとっては。
全く空気を読まないドストレートな一撃で殿下のメンタルは粉々に砕かれてしまった。
そしてそんな彼の肩を叩き慰めた人が居た。
「ヘナデン……君は……」
「うっぽぽ。大丈夫だよ、傍に居てあげる」
何の因果か偽りの妃候補として連れてこられたでっぷりおじさんは傷心の殿下を支え、やがて二人は結ばれる事に…………ってダメだ、結局この国終わった。
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国の乗っ取りは防げたものの結局私はでっぷりおじさんに負けた。
そしてやっぱり両親から勘当され、国外へと向かっている。
「これからどうするんですか?エステル様」
色々と雑なこの国に嫌気がさしたのかアリアも養父母と共に国外へ引っ越すことになった。
今、私はその馬車に同乗している。
「そうね。冒険者になって旅をしてみるのもいいかもしれないわね。この目で色々な世界を見てみたいの。あなたはどうするの?」
「そうですね。引越し先で両親とお店でも開こうかと思います」
「じゃあ、近くに来た時は寄らせてもらうわね」
こうして、私は新しい人生を歩み出したのだ。
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ナダ共和国側国境近くの宿屋。
ここではメールとリムの姉妹が泊まっていた。
「結局、農地改革も国を救った報酬も貰えなかったねー」
「全くですわ。友人の頼みだからわざわざ遠方まで出向いたというのに荒事に巻き込まれた上、投獄されかけて、挙句の果てには無報酬で強制送還だなんて二度とあの国の土は踏みません!!」
「リムがそこまで怒るなんて珍しいよね。いっつも冷めた感じなのに」
「そりゃ、私だって怒るくらいしますわ。まあ、怒りの原因はあの恥知らずな皇太子です。全く、人の姉に色目を使って……」
「あれ?もしかしてあたしが王妃様になっちゃうかと思った?ありえないって!だってあんなダサい男、ナダ女的にねぇ」
それな、とリムも同意し笑った。
第一、勝手に旅行先で結婚したとか母親が怒り狂って極大魔法を撃ちかねない。下手したら国が滅ぶ。
想像しただけで背筋が寒くなる。
「あー、何か疲れちゃったな。眠くなってきたよ」
「あーもう、寝るならベッドに行ってください……ってもう寝ちゃった。まったくこの姉は……………」
本当に子どもみたいだと呆れながらリムは姉の隣に腰を下ろすとその髪を撫で上げた。
「本当に心配しましたのよ。あなたが有象無象如きに取られるんじゃないかってね」
起こさない様にと出来るだけゆっくりと抱きかかえベッドに運ぶ。
「いつかはあなたも素敵な男性に出会い私と離れる事になるでしょうけど……それまでは傍に居させてくださいね。大好きな私のお姉さま」
「えへへ、もう食べられないや……」
幸せそうな寝言を話す姉を見て軽く微笑むと妹は自分のベッドへ行くのだった。
というわけで不意に浮かんだ『婚約破棄』『おじさん』で作ってみた物語終了です。
ヘナデンをダンディなおじさんにしても良かったかな、とか今更。
後、実は姉が大好きな毒舌妹とか。書いていて楽しかった!




