第4話 世の中は理不尽で動いています
ガバガバな警備のおかげで王宮への侵入は結構容易だった。
一応フォローしておくと私は秘密の抜け道を知っているのだがそれでも警備兵達はろくに巡回もしていない。
何か起きたらこの国あっさり亡ぶ気がする……
王宮内にはパーティーの時は感じなかった禍々しい妖気が充満していた。
これがボルオンによる人を操る呪術。
「あの、ところでメールさんは何で木箱に入って移動してるんですか?」
「隠密行動の基本!!」
「うふふ、アリアさん、このバカ姉のすることをいちいち気にしていたらダメですよ」
いや、流石に城内で木箱が動いていたら怪しいと思うけど、気にしたらダメなのよね。
<よく来たな、ローラントの末裔よ!!>
ダンスホールまで来たところで男の声が響く。
宮廷魔術師ボルオンのものだ。
<どうやら我々、『邪神の祭壇』による王国乗っ取り計画に気づいて乗り込んできたようだが……>
何かいかにも悪そうな組織の名前が出てきた。
やはり王国乗っ取りを企んでいたのね。
<だが飛んで火に居る何とやら、英傑の血筋はここで抹殺してくれよう!!>
ダンスホールの明かりが付くといつの間にか兵達に囲まれていた。
多くは王宮の兵だったが中には髑髏面を被った謎の兵士たちも混ざっていた。
「王宮の兵士達……ああっ、やっぱり操られてます!!」
<ふふふ、よく見れば印持ちでない娘もいるな。バカめ、そいつも操って敵対させてやろう!!>
何処からともなく黒いオーラが出現しメールの身体を包み込む。
「ああっマズイですよ!メールさんが操られてしまいます!!」
マズイ!やっぱり印持ち以外は危険だった!!
しかも私の知る限り彼女の戦闘能力はこの中でもトップクラス。
やはり置いてくるべきだったか……
「あー、何これ?もやっとしててよく視えないなぁ……えいっ!」
こちらの心配をよそにメールは煙を払う感覚で黒いオーラを払ってしまった。
<は、はい!?>
今、ものすごく理不尽な現象が起きた気がするんだけど……
あれって操られてこっちがピンチって流れだったわよね?
「よーし、いっちょ暴れますか!ねぇねぇ、リム。どれをぶっ飛ばせばいいの?」
「私たち以外の全てをお好きな様に。我が姉」
「わかった!!」
メールはそう言うと敵目掛け突撃していき手当たり次第に殴り倒していく。
<なっ!?まさかこいつも『印持ち』だったのか!?>
「まさかやっぱりメールさんも『印持ち』なんですか!?」
「いえ、違います。姉はあまりにも『バカすぎて』呪術の類が効かないんですよ。『言霊が理解できない』っていうかなんというか……ほら、言ったじゃないですか。ゴリラだって」
<はぁ!?>
気持ちはわかる。
私も『そんなのアリ!?』とか思ったし。
だけどこれはいい流れ。
「よしっ!一気に畳みかけてボルオンを叩きのめすわよ!!」
剣を構え敵に突撃していく。
「ああっ!こんな、こんなのってぇぇ。私は穏やかな暮らしがしたいだけなのにぃぃぃ!!!」
アリアが半泣きで兵士たちを杖で殴っていく。
ほら、やっぱり杖って殴打武器だったじゃない。
そしてリムはと言うと嬉々とした表情でメイスで兵士を殴り倒していた。
しかも私達が苦労しそうな重装兵を優先的に狙って装甲を打ち砕いていた。
流石は『砕き姫』の異名を持つだけあるわ……
そして英傑ローラントの印を持つ私は流れる様な剣さばきで兵士たちを倒していく。
武器の殺傷能力が高いので狙うのは謎の兵士達。
そうして5分も経たずダンスホールの兵士たちが全滅する。
「ふはは、面白い。ならばこの私が直接相手をしてやろう!!!」
空中に黒いオーラが集結し、そこからボルオンが姿を見せた。
「ボルオン!よくも殿下達に怪しげな術をかけたわね。あんたから受けた辱め。そして国を乗っ取らんとした悪行。断じて許せない!!」
「許せないとは言っても所詮は小娘。長き時をかけ研鑽を積んで来た我が闇魔術をその身に受け、絶望の内に死に絶え……」
「敵将はっけーん!!」
演説の真っ最中、全く空気を読まずに飛び上がったメールがボルオンを捕まえると逆さまに持ち上げ落下していく。
リムが顔を手で覆っているのが見えた。
「え、ちょっと?ちょっと待って」
「アダマス・フェイスクラッシャー!!」
落下と同時にボルオンの頭がメールの膝に叩きつけられた。
「ぐへぁっ!!」
汚い断末魔を上げ頭をかち割られたボルオンが床に倒れた。
あれぇ……これって普通は私が倒すとかそういう流れだったよね?
あるいは仲間と協力して打倒するとかそういうねぇ。
その、敵さんからしたら何の因縁もないモブキャラにやられた気分になる展開なんだけど……
「敵将、討ち取ったリー」
討ち取ったりじゃなぁぁぁぁい!!




