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第2話 陰謀の臭いがします

 帰った私は殿下から婚約破棄されたことを理由に19年間育った我が家から勘当された。

 どうせ私が浮気なりしたのだろうこの親不孝ものめ!と言い分も聞かず叩き出されたのだ。


 いやぁ、こんなあっさり勘当されるとは思わなかった……びっくりだわ。

 ちょっとくらい味方してくれてもいいじゃない。実の娘よ?


「あ、あの……エステル様、ローラント・エステル様ですよね?」


 人目を避けて街外れに来た私に声をかけてきた女性が居た。 

 声をかけてきたのに視線を合わせない気弱そうな雰囲気の彼女は、確かパーティーで見た覚えが……


「アリアーヌ嬢?確かデアドラ家のご令嬢よね」


「はい。デアドラ・アリアーヌでございます。アリアとお呼びください」


「……それで、あなたも私を笑いに来たわけ?」


「そ、そんな滅相も無い。実はエステル様に確かめたいことがあって……」


「確かめたいこと?」


「あの、殿下の新しい婚約者についでなんですけど………………………………………………あれって、おじさんですよね?太ったおじさん」


 何という事。

 ここに来てようやくまともな意見が出てきた。


「ええ、そうよ。やっぱりそうよね?あれっておかしいわよね?」


「ああ、やっぱりおかしいと思ったのはわたしだけじゃなかったんですね」


「ええ、そうよ。あれは本当に一体全体何の冗談なのかしらね」


「あの、それなんですけど……あれって多分呪術の一種じゃないかと思うんです」


「呪術?」


 彼女によると特殊な呪術の影響で皆、おじさんを絶世の美女と、そして私を醜い女と認識するようになってしまっているらしい。


「とんでもない話だわ。だけど何で私やあなたはその呪術にかかっていないの?」


「えっと……それは恐らく、英傑の血が関係しているのかと。エステル様は『印付き』ですよね?」


「そ、それは……そうだけど」


 かつてこの世界に存在した巨大な王国。

 その国の王に仕える十人の英傑が居た。

 彼らは後に各地へと散って行きそのほとんどが子孫を残し力を繋いできた。

 子孫の中には特殊な力を持つ『印付き』と呼ばれる者たちがおり、英傑の子孫の証でもあった。


 私もその『印付き』。

 英傑ローラントの末裔なのだ。

 だからこそ、王家としても私の血が欲しくて殿下の婚約者として選ばれたわけだが…… 


「印付きは呪いに対する耐性が非常に高いんです。だから呪術が効かず、おじさんを認識出来たんです」


「なるほど。だけど待って。その理論で行くとあなたは……」


「……はい。わたしはデアドラ家の娘ですが実は養子でして……実は英傑レスドンテの印付きです」


「レスドンテ……確か今では失われたと言われる英傑の血……」


「印付きは政治目的で狙われる事もあります。デアドラの養父母はわたしをそんな目に遭わせない様、印の事は隠しながら育ててくれました」


「そうだったの……」


 つまり、彼女も英傑の印付き。

 だからこの異常事態に気づくことが出来たのね。


「だけど何で呪術でこんな真似を……」


「恐らく、国を乗っ取ろうと企んでいる輩が居るのではないかと」


 確かに呪いをかけて殿下の婚約者を偽造するとかただの嫌がらせでそんな真似はしないだろう。

 つまりは陰謀、即ち国自体をどうかしようとしている。


「そうなら何とかしないと!あなたの言う通りなら呪術をかけている輩が居るのよね?」


「は、はい。恐らくは宮廷魔術師のボルオンではないかと」


「何故そう思うの?」


「実は先ほどのパーティー会場でボルオンから黒いオーラが出ているのを見つけまして」


 意外とドストレートだった!!


「全然気づかなかった」


「でっぷりおじさんのインパクトが強烈すぎましたし、彼自体会場の端っこに居ましたからね」 


「なら彼をどうにかすれば殿下たちは正気に戻るのね?」


 よくも私にあんな恥をかかせた上、国まで乗っ取ろうとしてるだなんて……


「まずは武器が必要ね」


「えっと……エステル様、何を考えておられるんですか?」


「王宮に乗り込んでボルオンを叩きのめすのよ」


「えぇっ!で、でもエステル様ひとりでは……」


「何を言っているの?あなたも行くのよ。だってボルオンの呪いが効かないのでしょう?」


「無理無理!わたし、ただのヒーラーですよ!?」


 そうは言っても呪いの影響を受けない仲間が居ないと流石になぁ……


「まあ、そう言わず。手伝ってくれたらキツネの串焼きを奢るから」


「そ、それなら……」


 安っ!

 対価がすぐ浮かばず冗談で言ってみたけど何かひっかかってくれたみたい。


「で、でもやはり二人では不安です。もう少し戦力が欲しい所ですけど……でも、王宮内は術の支配下にあるでしょうから耐性を持っていないと操られてしまうかもしれないし……」


「あー、それなら丁度適任者がこの国に来ているわね」

 

 それから私達は顔を隠してとある宿屋を尋ねた。


「あの、こんな宿屋に助っ人がいるんですか?」


「ええ。彼女なら適任よ」


 宿の食堂では二人の女性が食事をしていた。

 二人とも腰まで髪を伸ばしており一人は赤髪、もうひとりは金髪。

 顔立ちはよく似ていて姉妹であることがわかる。


「助けてくれないかしら、リム」


 金髪の女性、リムはこちらを確認すると小さくため息をついた。


「あら、その感じだと厄介ごと、みたいですわね」


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