視点F 現実
私は麗花の案内でリビングに招かれた。
普通の一軒家、と言いたかったけど、これは・・・。
リビングには燃えないゴミ袋が多く散らばっていた。中身をよく見るとスーパーの総菜が入るプラスチック容器ばかりだ。
「お姉ちゃん、お腹空いた。」
「冷蔵庫の中にあるもの適当に食べていいのよ。」
年の離れた麗花の弟が奥から出てきた。これが姉弟の会話なのか。キッチンを見てみるとシンクは汚れていない。料理をした痕跡がない。あの総菜だけで飲食を済ませてるの?両親はいるはずでしょ?
「ダメだ!!!これじゃ・・・。これじゃ・・・」
大声が聞こえてきた。何があったのか知りたいが人の家だし身勝手すぎるのは・・・。
「・・・こっち。」
麗花が手招きしてくれた。見てほしいの?
やってきたのはスイーツ店の裏の厨房だ。
「ねぇ、あなた。いい加減休んだらどう?」
「いや、ダメだ。このままじゃ。このままじゃ金賞は取れない。取らないと、取らないと、みんなが、期待してる。なにか、なにか別の案を、そうだ、あれと・・・あれと・・・。あぁ麗花丁度良かった。これ処分しといてくれ。」
麗花のお父さんが指さした先にあったのは大量の洋菓子の試作品。
「・・・お父さん、最近ずっとあの調子なの。ずっとコンクールにだすスイーツ作ってばっかで、店の方は丸っきりお母さんに任せるし、そのせいで家事は全部私に回されて、でも私お父さんやお母さんみたいに料理うまくないし、けど弟の面倒も・・・それに、・。それに・・、。。」
「麗花、落ち着いて!」
大きな声は出しちゃったけど、優しく寄り添った。去年の金賞のプレッシャーで異様に創作に執着してしまった父親。そこから家族の歯車が狂っていたの?
「ちょっとごめんね。」
麗花が厨房の試作品に歩み寄る。そしてそれらを乱雑に袋に放り込みゴミ箱に押し込もうとする。
「ま、ま、待って!もったいないよ!」
私は慌てて止める。
「いいの!もう、うんざりなの・・・。もう、こりごりなの。」
「だからって食べ物を粗末にしちゃ、」
「私じゃないから、全部お父さんがいけないんだ、」
「・・・麗花!」
「でも、お父さんがまた金賞取ったら元に戻れるのかな?」
「え?」
「でも、他の店は、きっとお父さんよりも美味しいスイーツを作るんだ・・・だったら」
「なにを言ってるの?!」
麗花はそっと私を押しのけた方思いきやおもむろに駆け出して店を飛び出した。
「ちょっと麗花どこに行くの?洗濯物は?」
母親が困ったように声をかけるが聞いていない。
「私、追いかけます!」
私も麗花についていく形で店を出た。




