視点R 声ヲ
「あのー、百合川咲さんってこの病院にいます?」
真白は廊下ですれ違った看護師に声をかけた。
「百合川さん?病室は言えませんが、先ほど中庭の方に行かれましたよ。」
ありがとうございます、と礼を言い重たい体を引きずり中庭に向かう。
中庭に向かうとベンチに咲ちゃんが座っていた。体がしんどい。針を刺された時よりかはまだましだが足取りは一向に軽くならない。話すために目線を低く少女に合わせる。
「咲ちゃん、久しぶり・・・といっても昨日も会ってるか、ハハハ・・」
笑いに感情がこもってない。それでも続ける。
「・・・・・」
咲ちゃんは黙ったままだ。
「昨日言えなかった、続きを話すね。」
1つ深呼吸を挟んで、続ける。
「先生ね、お父さんもお母さんもいないんだ。」
咲ちゃんが少し反応する。続ける。
「お父さんは、先生が、先生のお母さんのお腹にいるときに車の事故で。お母さんも10年前に事故で。もう二度と帰ってこれんなった。・・・やけんね咲ちゃん、いなくなればいいなんて言っちゃダメ。いてほしくてもいてくれない人が、ここに、おるから・・・。」
涙が溢れてきた。こういうときは泣かない方がかっこいいんだろうけどな。
「いるだけで、素晴らしいことなんよ。」
咲ちゃんは黙って聞いている。
地響きがする。目の前の地面が割れる。
尾を失った蠍が現れた。目つきからして僕には興味がなさそうだ。あいつの視線は1人の少女にしか向けられていない。
「咲ちゃん、僕は君を必ず助ける。」
そういって僕は蠍の正面を向いて立ち上がる。後ろから僕の名前を呼ぶ声がした。おそらく風也君かな。
「だから信じてほしい。君のお父さんとお母さんは・・・・」
少し間をおいて振り返って少女を見る。声をさらに優しくする。
「・・素敵な人だよ。」
腕に付けたユニットが白く輝いた。




