視点R 翌日
教育実習二日目だ。昨日のことを振り返る。またあのようなことがあってはいけない。まずは残りの2週間、子供たちの命を守らなければ、そう考えると幼稚園教諭、重いなぁ。でも自分が決めた道だ。頑張るしかない。病院に搬送された人たちも目を覚ましてくれているといいな。
切り替えていこう!
とは言ったものの、昨日のことがあったせいで内容は地味なものだった。遊戯室でまた最大限の警戒をするのだった。室内でしか遊べなくなった分園児の人数が昨日よりも多い。労力は昨日の2倍、いやそれ以上だ。
(ブラック・・・。超ブラック・・・!)
でも子供たちの笑顔には癒される。これがやりがいというものか。しかしそんなブラックと癒しが波のように交互にきている様子を察したのか
「真白先生、変わりますよ。」
と斉藤先生が声をかけてくれた。
遊戯室を出てドアガラスから中の様子を見る。さすが斉藤先生、隙が無い。言葉ではうまく言えないが20年以上培った歴に圧倒される。自分もおじさんになるころにはあんな雰囲気を醸し出せるのか?とにかく疲れた。斉藤先生の気遣いを無駄にするわけにはいかない。少しでも休息を・・・。
ん?
職員室に続く廊下に独りぼっちの少女がいた。咲ちゃんだ。今にも泣きそうな顔をしている。
「咲ちゃん、大丈夫?」
優しく声をかける。
「・・・遊びたい」
「遊びたい?それじゃあ先生と遊ぼうか!咲ちゃんのためなら先生、なんでもしちゃうぞ~」
「・・・違う・・・」
「え?」
「お父さんと遊びたい。」
「・・・」
まずい、紡ぐ言葉が無い。
「お母さんとも・・・お母さん・・・・とは・・昨日・・・遊べるはずだったのに・・・無理になったって・・・電話してきて・・・・」
咲ちゃんの母は看護師だった。
「・・・あいたい・・・あいたいよ・・・」
「咲ちゃん、君のおとうさんとおかあさんも、咲ちゃんにあいたいって思っているよ。」
「・・・・じゃあ、いらない」
「?!」
「会いたいなら会いにくればいいじゃん!でも来ないってことは嘘つきってことでしょ!先生も言ってた「嘘をつくのは良くない」って。だから嘘をつくお父さんなんか嫌い!お母さんも嫌い!そんなお父さんもお母さんもいらない!」
収集がつかなくなってきた。どうしよう。考えろ。
1つだけ、思いついた。あの事を話そう。理解してくれるか、確証はないが今の自分にはこれしか思いつかない。
「あのね咲ちゃん、、、実はね、先生にはね・・」
「いらないんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
咲ちゃんはこちらの言葉を無視して外に飛び出してしまった。
「あ、咲ちゃん!今日はお外では遊ばないでって・・・・」
言葉が出なくなった。咲ちゃんが逃げた先のグラウンド、地面が不自然にひび割れた。
ーーー危ないーーー
考えるよりも先に足が動いた。次の瞬間ありえない光景が目に映る。ひび割れた地面から現れたのは、昨日嫌になるほど見た蠍だった。




