視点R 少女
真白は遊戯室にて最大限警戒していた。
遊戯室では園児たちが思う存分遊んでいる。
こういった場面では園児全員が視界に入るように極力部屋の隅にいて様子を見なければならない。担当の斎藤先生が席を外している今、一瞬たりとも気が抜けない。
そんな中真白は1人の少女に目を向けた。多くの園児が複数人にまとまって遊ぶ中、彼女だけポツンと独りぼっちになっている。これは良くない。真白は最大限の警戒をしつつもゆっくりと少女に近づく。そして声をかける。
「えっと・・・」
手元の名簿にある園児の顔写真と名前を素早く一致させる。
「百合川咲ちゃん。咲ちゃんは他の子と遊ばないの?」
近づいてみてわかったのだが、少女は白黒の何かを腕に抱えている。えーっとあれだ。あの、よく映画の監督とかが手に持ってて「よーい、アクション!」とか言いながら音を鳴らすヤツ。名前が浮かばない。
「・・・・・」
咲ちゃんはだんまりとしたままだ。
すると咲ちゃんは天井の方を指差した。彼女の小さな手に導かれて上を向くが特に何もない。次の瞬間、咲ちゃんは猛ダッシュで逃げていった。
「あっ、しまっ・」
「ましろ先生あそぼーーー!」
追いかけようとするも他の園児に捕まってしまった。こういう時に限って子供たちの力って強いんだよなぁ。
昼休憩になった。子供たちが給食を食べている間、職員室の机で出来るだけの範囲でレポートをまとめる。
「おっ、真面目だねー」
斎藤先生が職員室に入ってくる。
「レポートなんて大変だねー。まぁ先生になったらもっと大変だけどねー。ハハハ。」
茶目っ気たっぷりに冗談っぽく話すけど、とても冗談に聞こえない。やはりブラックな所があるのか。
「あの、斎藤先生。百合川さんのことなんですが。」
先程あった出来事を斎藤先生に細かく話してみた。
「あー百合川さんはね、特殊な家庭の事情があってね。家でも1人でいることが多いそうね。なんでもお母さんは看護師で夜勤が多いし。お父さんは有名な映画監督らしいよ。」
彼女が持っていた「アレ」はそういう意味か。
「映画監督、ってそんなに有名なんですか?」
「あの紫吹千治だって。」
「え!あの恋愛映画の巨匠と呼ばれた?」
昨日もどこかでその名前を聞いた気がする。超有名人じゃないか。ちなみにその監督の映画は1つも見たことがない。
「どうやら今も撮影やら仕事やらでろくに家に帰ってないらしくってね。親と過ごす時間が極端に少ないのは可哀想よね。」
親との時間が少ない、か。でも無いよりかはーーー。
そのとき、悲鳴が聞こえた。園児の声ではない。大人の声だ。
「何かあったのかしら?」
「僕、様子を見てきます。」
真白はすぐさま職員室を飛び出した。




